2020年10月01日(木) |
日本のマスコミは死んだ |
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日本学術会議が推薦した会員候補者105名のうち6名を、菅義偉首相は任命せずに拒絶して残り99名だけを任命した。外された6名はいずれも政権に対して批判的な発言をした過去があった。拒絶されたのは東京慈恵医大の小沢隆一教授、早稲田大学の岡田正則教授、立命館大学の松宮孝明教授、東京大学の加藤陽子教授などである。
この学術会議のメンバーは210人で、105人ずつ候補者を選考して推薦されたものを内閣総理大臣が任命するということになっている。推薦者の中から選ぶのではなくて、もともと人数きっちり選んでいるのだから任命は形式的なものである。それぞれの学者を推薦する理由は明確に示されているのだが、菅総理はその6人を拒絶した明確な理由を示さなかったのである。
政治が学問の世界に横やりを入れたこのニュース、実は一面で取り上げたのは「赤旗」だけである。赤旗の記者だけがスクープに成功したわけではない。他の記者たちが全員ボンクラで気づかなかったわけでもない。他の大手新聞社はすべてこの事実を知りながらあえて記事にしなかったのである。政権に逆らって広告を止められることを恐れたのか、官邸ににらまれたくなかったから記事を自粛したのかわからない。ただ言えることは一つ、もう「赤旗」以外に国民に真実を伝える報道機関はなくなってしまったということなのである。朝日も毎日も読売も産経も、すべて政権擁護の翼賛新聞になってしまったのである。もうこいつらみんな新聞屋を止めろよとオレは言いたくなった。
今の新聞は紙面の半分近くが広告で埋め尽くされ、その中には詐欺ビジネスやマルチ商法などの犯罪系の広告もノーチェックで掲載されている。その広告に騙されてお年寄りが騙されても新聞社は何の責任も取らない。しかし受け取った広告料は返さないのである。
オレは衣料用洗剤のための皮膚疾患で苦しんでるが、同じように苦しむ人は日本中にたくさんいる。しかし、衣料用洗剤が健康被害を起こすという事実は報道されない。それはなぜかというと電通からの圧力があるからである。洗剤業界の広告料という巨大な力には誰も逆らえないのである。オレは洗剤の被害を自分の肌でパッチテストして確かめたのである。
もしも「赤旗」が報道しなかったら、この官邸による学問への圧力はこれほど話題にされることはなかっただろう。マスコミ各社はあわてて後追い取材しているわけだが、おそらく上から圧力で昨日は記事にできなかったのである。個々の記者の中にはまっとうな感覚の人もいるかも知れない。しかし会社としてはお上に逆らえないのでそういう記事は握りつぶされるのである。オレは電通を定年退職された方から「本当に腐ったダメな会社ですよ」と吐き捨てるように語られたことがある。数冊の自伝的小説を残して亡くなったその方からその理由を生前に聞けなかったことが大きな後悔なのである。
学問の世界にこうして圧力がかけられるようになればいずれそれは大学への圧力となるだろう。橋下徹は京都精華大学講師の白井聡さんを攻撃する時に「こういう人が教員をしている大学」と勤務先の大学を批難した。官邸からの圧力で大学の人事が左右されたり、研究費の助成が認められなくなるということもこれから当然起きるわけだ。すでに加計学園の獣医学部新設が官邸の意向(と下村文部科学相への巨額献金)で認められたという前例があったじゃないか。
学問を軽視するものは図書館を無料貸本屋くらいにしか思っていない。橋下徹は経費節減のために大阪府立高校の実習助手による司書を廃止して司書教諭に兼任させた。その結果多くの高校では図書館が閉鎖されたり、開館時間短縮に追い込まれた。図書館司書という業務の専門性や価値が軽視され、単なる経費節減のためにその仕事が切られたのである。それで被害を受けたのは多くの高校生たちである。本を焼くものはいずれ人を焼くようになる。書籍の価格表示の外税が認められず。カバーに表示されることが義務付けられれば価格表示変更の手間を省くために絶版になる大量の書籍が出る。それは消費税導入時に実際に起きたことである。今、出版界ではそうした動きが起きようとしているのだ。
日本学術会議の委員を菅義偉が任命拒絶したことは大きな問題である。ついに自民党の連中は学問の中味にさえ介入を始めたのである。著名な歴史学者である加藤陽子教授を排除したということは、歴史を自分たちの都合よい形に書き換えたいということを宣言したに等しい行為である。しかしさらに大きな問題は、これを「赤旗」以外が記事にしなかったことである。問題の本質はマスコミが政権の御用機関か翼賛機関になってしまったことである。太平洋戦争の開戦時に戦争を批判した新聞は一つもなかった。国会で日中戦争の拡大方針を批判する反軍演説を行った斎藤議員は除名処分とされた。そうした歴史を我々は忘れてはならない。
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