2020年04月03日(金) |
毎日ずっと働くこと |
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オレの両親は露天商だった。雨の日は仕事ができないので休みになって母が家にいた。母が家にいるのは日曜日だけで、ふだんは夜遅くにしか帰ってこなかったので、雨の日は嬉しかったのだが、商売ができないオレの両親にとってはゼニが入ってこない恨めしい日だったと思うのである。幼いころのそんな記憶をオレは今でも覚えている。
貯蓄する余裕のない貧しい人々にとって、毎日働いて生活していくというのはとても大事なことだ。オレが教員という堅実な職業に就いた理由の一つは、そんな両親を見て育ったからである。商売というのはうまくいくときもあればそうでないときもある。そしてすべてのリスクは自分で背負わないといけない。もっとも学校という世界にもリスクはあるわけで、安定した公務員という地位を捨てて私学教員になった時点でオレもリスクを背負うことになったことは否定できないのだが。
今、日本中の労働者の中で安心して仕事を休める人はどれだけいるのだろうか。仕事を休んでいてもきちっと生活の安定が守られている人など全体の数パーセントもいないのではないだろうか。そうした不安定な状態の人々がどんどん解雇されている。
ハウステンボスは来客の激減に対応して従業員を大量に解雇した。外食産業、居酒屋チェーン、イベント関係者など最近の「自粛要請」によって仕事を失った人々は大勢いる。世の中で通常の経済活動が続いているということを前提に多くの職業が成り立っていたわけである。給食がなくなれば、食材を納入していた会社が倒産する。観光客がいなくなれば、土産物屋やレストランがやっていけなくなる。昨日までの普通が今は普通ではないのだ。そういう人たちをどうやって救済すればいいのだろうか。
東京がロックアウトされ、経済活動がストップすれば多くの人々が職を失う。「職」を失うということは同時に「食」を失うことでもある。あてにしていたバイト収入を失って3月末に家賃を払えなかった人が日本中にどれだけいるだろうか。
ハウステンボスを突然解雇された人は、同時に従業員用の宿舎からの退去を命じられたという。そうして何のサポートもなく放り出されえてしまった人たちを救済する仕組みが今の日本にあるのだろうか。緊急で生活保護を受けることができるような仕組みが今の地方自治体にあるのか。
今手元にお金がないからと家賃の支払いを待ってもらえたとしても、今度は家主が銀行からローンの返済を求められる。銀行はその時に待ってくれるのだろうか。このような連鎖をどうやって食い止められるのか。有効な方法は一つしかない。現金支給を大量に行うことである。生活に困った社会的な弱者を救うことは社会秩序を維持するために必要なのである。今日食べるお米もない人々が街にあふれた時、どんな事態が発生するかはオレがいちいち書くまでもないことである。アメリカで真っ先に銃や銃弾が売れたのは、人々が治安の悪化を予測したからである。
ついこの間まで人手不足だったはずなのに、今や日本中の多くの企業が突然の内定取り消しを一方的に学生に送付しているという。たまたまその年に就職を迎えたというだけで、人生の大事なことが理不尽に左右される悲劇を我々は傍観しているわけにはいかない。
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