2015年08月12日(水) |
中国が元を切り下げるとどうなるのか? |
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8月11日、中国政府が突如、自国通貨である元の切り下げをおこなった。ドルとの為替交換レートをいきなり2%下げたのである。日本円がドルに対して大幅に下がった結果として日本は不況を脱出して景気を回復した。中国もそれを傍観していたわけではないだろう。中国元に対してはアメリカからの切り上げ圧力が強かっただけに、この予想外の突然に利下げはアメリカの通貨政策に対する宣戦布告でもある。世界通貨戦争はこれで新たな局面に突入したのである。
さて、元の対ドルレートが下がったことでドルがこれからも上昇するということは、アジアの多くの国の通貨がドルに対してさらに値下がりするということを意味する。通貨安によって得をするのは日本や中国やドイツのような輸出大国だけであり、大多数の国は自国通貨の値下がりで輸入品の価格が上昇して損をする。事実マレーシアやインドネシアなどは自国通貨がドルに対して値下がりしたことでかなり経済的に打撃を受けていた。それがさらに激しくなるということで、インドネシアはドル売り介入を行っている。
中国は自国の輸出産業をサポートするためにさらに元安方向に誘導するだろう。そうなるとそれにつられて中国と関係の深い国の通貨も下がると予想されている。どうだろうか?中国がやってるのはなりふり構わぬ景気刺激策である。株価対策の時にも感じたがこの国の経済政策はなんでもありなのだ。元の価値を下げることでインフレを起こすことに成功するならば、それは中国政府の意図した結果通りの動きではないか。中国で激しいインフレが起きれば、むしろそれはみかけの経済成長の数字をよくするのではないか。
オレは中国の発表する統計的な数字はみんな嘘だと思ってるが、少なくとも日本円にして1000兆円以上のゼニが上海市場に存在するわけで、そのゼニの持つパワーは計り知れないと思うのである。しかも国家の巧妙なイカサマによってその鉄火場市場の株価が倍になるならば、たちまちそれだけのマネーがギャンブラーたちの手に渡るのだ。あのバブルの時代に日本は地価を際限なく上昇させることで担保価格を上げ、巨額のマネーを作り出したように、中国は株価を操作することで巨大なゼニを作りだしてそれを国家の膨張・拡大政策の道具に使ってくるような気がしてならないのである。その壮大な戦略の一つが、一見それに逆行するように見える元切り下げではないだろうか。通貨の発行・流通量を増加させるという本来の目的のために、今回の切り下げを行ってるような気がするのだ。
中国の成長のエンジンは開発のための投資である。そのために無人の工業団地や高層マンション群があちこちに作られた。しかし、これらは適切なインフラ投資を伴うモノではなかった。そのためにゴーストタウンになってしまったのであり、便利な大都市ではやはり地価はさほど下がっていない。上海のタワーマンションはすぐに売れる。ここで投資の方向をインフラ整備に一気に振り向けて、バランスがとれた開発が行われれば状況は大きく変わるだろう。またいつのまにか中国政府は一人っ子政策を緩和している。人口抑制策をやめたということは、将来の人口増加につながる可能性が出てきたということである。人口増=GDPの拡大である。
日本ではゼニを持ってるのは大企業だった。中国では賄賂でため込んだ共産党幹部と株式投資をしているギャンブラー投資家たちが驚くべきほどのマネーを手にしている。その巨額のゼニは元の切り下げによって世界の他の投資商品などに流れるだろう。これまで多くの投資家たちが「長期的には元高」と予想してきたものが、一気に「元はどんどんまだ下がる」というふうに頭を切り換えるのだ。そうなると何が起きるのか。
中国人の爆買いはさらに激しくなるかも知れない。「まだ元の価値が高いうちに使わないと損だ」ということになるからだ。だってこれからドルや円に対して元安になるのは確実だから。1元=20円くらいだったものが、この2日で 1元=19円くらいまで5%も下がった。銀聯カードのような中国系のクレジットカードで買い物したら支払いの時の為替レートではさらに損をすることになるかも知れない。
今のうちに日本で爆買いしてゼニをどんどん日本の商品に交換すれば、今後の元安によってさらにその商品の価値は上がることになる。おそらく今起きている爆買いは今後さらに激しくなるだろう。つい先日品川のドラッグストアでは日本の市販薬などを籠いっぱいに買いまくる多くの中国人を目撃したが、これはさらに加速するはずだ。また日本の不動産を買おうとする人も増えるだろうし、元を高金利の他の通貨に今のうちに換えておこうとする人も増えるはずだ。元を売ってニュージーランドドルやオーストラリアドル、カナダドルなどに換えようとするのである。
中国政府は人為的にバブル景気を起こそうとしている。株価上昇策もそうだし、今回の元切り下げもそうだ。そして公定歩合も今年になってから何度か下げてるが、まだまだ下げる余地が残っている。日本のような自由経済ではなくて、統制経済化で人為的に官製バブルを作り出そうとして市場をコントロールしているのである。そのイカサマ作戦に人民が協力したらどんなことが起きるのか。そうした壮大な実験が今行われているのだ。
通貨安に誘導して輸出産業を有利にしたいという中国政府の意図はある程度うまくいくだろう。しかしそれ以上に中国からゼニは国外流出するだろう。もちろん紙切れの元を大量に印刷してそれを国外にばらまくならばそれは中国政府の狙い通りかも知れない。
アメリカは9月利上げの方針だという。NYダウはドル高による景気悪化をすでにある程度織り込んでいるのか、あるいはこれから大きな下げがあるのかはまだわからない。しかし今の市場を動かしてるのはFRBではなくて中国の経済政策であるとオレは思っている。日本はどう対処すればいいのか。
ここで黒田日銀総裁が果敢に攻めの経済政策を打ち出してくれればオレも安心なんだが、どうも不安なのである。せっかく1ドル=125円というラインまで円安に誘導してきたことで立ち直った日本経済を再び混乱に陥れるかも知れない。円安はこれで十分ということをうっかり言えば、世界の投資家にとってそこが円の売りポジションを手じまうきっかけになって、壮大な巻き戻しが起きてしまうことをどうかわかっていて欲しいのである。
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