2011年09月26日(月) |
書評『ハルカの陶』〜西崎泰正/ディスク・フライ |
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オレは毎週、週刊漫画Timesという雑誌を読んでいるのだが、その中に1本気になっていた作品があった。それは最近連載が始まった「ハルカの陶」という作品で、東京でOLをしていた若い女の子が備前焼の美しさに一目惚れして、その大皿を作った陶工に弟子入りするというストーリーである。
大阪・中之島に東洋陶磁美術館という施設がある。そこでオレは国宝の曜変天目茶碗を見た記憶がある。もうかなり昔のことなんだが、そんな小さな茶碗が「国宝」ということに度肝を抜かれたのである。ただ心の中では「あの茶碗で永谷園のお茶漬けを食うのはどれほど贅沢だろうか」などと罰当たりなことを考えていたのである。当時のオレの焼き物に関する知識はほとんど皆無であり、タヌキが信楽焼であることくらいしかわかっていなかったのである。
その後、高橋治の小説、「紺青の鈴 (角川文庫)」で、九谷焼の名匠の娘として生まれた主人公の成長の物語を読んで少し詳しくなった。古九谷がどんなものか知りたくて美術館で見たりして少しずつ知識を身につけたのである。ただ、本格的に勉強するというほどでもなかった。
今回読んだ「ハルカの陶」だが、歴史オタクの私にはなんだかこのタイトルが、あの戦国大名の「陶晴賢」(すえはるかた)を連想させたのである。いや、そんなことはどうでもいい。女の子を主人公にしている漫画の第一条件は、そのヒロインの顔が自分の好みの可愛い感じになってるかどうかだ。まずそれは合格だ。
ヒロインの小山はるかは不器用ながらもまっすぐに目標に向かっていこうとする、そのひたむきさが周囲の人の心を動かしていく・・・そうして物語は進んでいく。こういうパターンって、そうだ、NHKの朝ドラじゃないか。いつのまにかオレは、毎週この作品を読むのが楽しみになっていったのである。週刊漫画Timesの中の、特にお気に入りのマンガになっていったのだ。
マンガの中には備前焼に関する知識がさりげなく紹介されている。そう、学習マンガとしての価値も備えつつ、ちゃんと娯楽性もある。面白いと思ってオレはどんどん読んだのだからそれは間違いない。そしてオレは雑誌で読んだ好きなマンガは必ず単行本でも買うことにしている。それはそのマンガに対するオレなりの敬意の表れである。きちっとゼニを払うことで作者へのお礼の気持ちを伝えたいという意味もある。この「ハルカの陶」の単行本が出ると知って、オレは迷わずアマゾンから注文したのである。
単行本はまだ第一巻が出たばかりである。ここからどのように物語が展開するのはオレにはまだ予想もつかない。作品中には備前焼の湯飲みを地面に投げるシーンがある。普通なら割れてしまう所だが、高温でしっかりと焼き締められた備前焼は割れないのである。戦争中に物資が不足した時は、その堅牢さ故に手榴弾に使われたという。人間国宝と言われたような人たちが、兵器としての備前焼を焼いたという悲劇をオレは悲しく受け止める。どんな器も用いられてこそはじめて意味がある。ただ、その用いられ方が問題だ。陶工たちはどんな思いでその手榴弾を作ったのだろうか。
マンガの中でオレが一番気に入ったのは、イケメンの陶芸家の兄ちゃんがつぶやくこのセリフである。
備前焼は“用”の器だ 使わなきゃ何の意味もねえ
家にある100均で売ってるような安物の茶碗じゃなくて、お茶漬けや卵かけごはんを食べるための自分専用の備前焼の器を一つ欲しいなあとオレは痛切に思ったのである。やっぱりオレは罰当たりなのである。今度備前焼の本場に買いに行かなくちゃ。
ハルカの陶 1 (芳文社コミックス)
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