2011年09月15日(木) |
ダムの放流が被害を拡大しました! |
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治水用のダムと発電用のダムは全く運用方法が違う。治水用のダムは洪水に備えてふだんはカラッポにしているわけだが、発電用のダムは発電のために水を貯めておく必要があるのだ。台風による大雨が予想されたのに、熊野川水系にある発電用のダムはどこも水をたっぷりと貯めたままだった。カラッポにしたら発電できないからである。ダムの側にも言い分はある。ここは治水用に運用するのが目的ではない。自治体の要請でカラッポにしたら、それによって発電できない分は補償してくれるのか?ということである。そういうわけで、台風が接近しても発電用のダムはどこも水を放流しなかったのだ。
そこに台風がやってきた。発電用のダムはどんどん水位が上がってくる。発電のためにがっつり貯めようと思っていたが、こんなにはいらない。それどころかこのままじゃダムが壊れてしまう。おお、もう水これ以上入らないぞ。ええい、流せ!
かくしてもっとも水量の多いタイミングに重なってダムからの放水が行われたのである。発電用ダムは「流水量調節」機能ではなくて「流水量瞬間最大化」機能を今回はからずも発揮してしまったことになる。もっとも下流域にとって危険なタイミングで放水してしまったのだ。下流の住民の生命の安全など全く考えず、ただダムのためだけに。
毎日新聞の記事を引用しよう。
台風12号豪雨:ダム事前放流せず 洪水対策規定なく 2011年9月14日 2時30分 更新:9月14日 8時31分
事前放流による調整機能 台風12号で氾濫した熊野川上流域にある11ダム中6ダムを持つJパワー(電源開発、東京都中央区)が、水系で最大の「池原ダム」(奈良県下北山村)などで洪水発生に備えて空き容量を確保する操作「事前放流」をしていなかったことが分かった。さらに、最下流部にある別のダムでは大雨・洪水警報が出た後で本格的放流を始めており、増水と放流が重なった。地元自治体からは「ダム放流は人災」などとする声もあがっている。
紀伊半島南部は多雨量地域で、ダム建設の適地としてJパワーや関西電力などが1958〜66年、次々と発電用ダムを建設した。一方、治水ダムは建設されず、洪水対策は課題とされたままだった。
国が設置した有識者会議「熊野川懇談会」などの資料によると、洪水の危険が高まった際、Jパワーは池原ダム(有効貯水量約2億2000万トン)と、2番目に大きい奈良県十津川村の風屋ダム(同約8900万トン)の大型2ダムの水を放流し空き容量を確保、上流から来た水をためることが可能、としているが、事前の取り決めなどはない。懇談会は当初、発電用ダムによる治水効果を盛り込んだ報告書を作成する予定だった。しかし、09年にまとまった最終的な報告書では見送られた。
Jパワーなどによると、今回の豪雨の際、両ダムは洪水に備えた事前放流をせず、水位を維持するため放流量を徐々に増やした。最下流にある小森(三重県熊野市)、二津野(ふたつの)(十津川村)の2ダムも事前放流はほとんどせず、毎秒1500トン以上の本格的な放流を開始したのは、それぞれ1日午後4時半と2日午前11時50分だった。二津野ダムではその後、順次放流量が増え、4日午前4時には毎秒約8900トンに達した。
この間、紀伊半島南部では8月30日午後から台風12号に伴う雨が降り始め、和歌山県新宮市と那智勝浦町で9月1日午後1時50分に大雨注意報が出され、2日午前4時15分に大雨・洪水警報が出されている。2日午後9時には二津野ダムから約18キロ下流にある新宮市熊野川町日足(ひたり)地区で熊野川があふれた。
一方、古座川水系にある和歌山県所有の多目的ダム「七川ダム」(古座川町)では、1日午前10時から事前放流を始め、結果的に古座川では洪水が起きなかった。今回の氾濫に関し和歌山県新宮市議会は「ダム放流は人災」などとして同社に説明を求めている。
Jパワー広報室は「運用上、洪水調整をする規定はなく、洪水調整を目的とした放流はしていない」としたうえで「ダムの水位を維持するための放流はしたが、(水の流入が多く)結果的に水位は上がっている」と説明している。
熊野川懇談会発足当時の委員長だった江頭進治・政策研究大学院大客員教授(河川工学)は「川で利益を上げている以上、事業者も社会的責任を果たすべきではないか」と指摘している。【藤顕一郎、日野行介】
もちろん長雨で降った雨の量を思えば、仮にカラッポにして備えたところですぐに満水になっただろう。だから今回の水害は不可避だったのかも知れない。しかし、もっとも水量の多いタイミングでダムが放水してしまったというのは事実なのだ。できる限りの流水量の調節をしようと工夫していれば、下流域の被害も少し軽減されて少なくとも死ななくて済んだ大勢の人がいたはずである。
オレは今回のダムの放流タイミングの悪さが被害を拡大したと思っている。ただ、そのことが洪水の直接の原因だと立証するのはなかなか困難である。それこそ「業務上過失致死」という罪状で裁いてもらいたいところだが、そんためには膨大な時間と労力を必要とするだろう。残念なのはやはりダム側が「ダム」のことしか考えていない技術屋の集団だったということかも知れない。その放水が下流にどんな被害をもたらすかなんて、一度も考えたことがなかったのだろう。吐き出した水がそのまま狭い谷を埋め尽くして奔流のように流れていったときに「しまった・・・」という人間的な感情は持たなかったのだろうか。
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