2010年11月23日(火) |
なぜ高齢者は虐待されるのか? |
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高齢者の虐待が増加している。特に認知症のお年寄りに対する虐待がひどい。しかし報告されている数字は全体のほんの一部だろう。介護サービスが入っているからその実態がわかる場合も多いわけだがそうしたサービスを利用していない場合は虐待の事実そのものが隠蔽されてしまう。また家族が財産を横領するなんてこともあるだろうし、年金受給のために死亡の事実を隠すのも虐待に含まれるだろう。毎日新聞の記事を引用しよう。
高齢者虐待:1万5000件超…死者32人 昨年度最多
09年度に確認された65歳以上の高齢者の虐待件数は、1万5691件に上り、08年度より732件、4.9%増えて06年度の統計開始以来最多となったことが22日、厚生労働省のまとめで分かった。ほとんどを占める「家族や親族による虐待」の被害者の45.7%が介護の必要な認知症のお年寄りで、虐待による死亡者も06年度と並び過去最多の32人に達した。件数は毎年増加を続け、06年度の1万2623件と比べ、4年間で約1.24倍となった。
06年施行の高齢者虐待防止法は、お年寄りへの虐待の発見者に市区町村などへの通報を義務付けており、全市区町村と都道府県の確認事案を同省が取りまとめた。
まとめによると、家族ら以外では、介護施設職員らによる虐待が76件(前年比8.6%増)あり、これも過去最多だった。家族らによる虐待の被害者は、77.3%が女性で、年齢別では80代が42.2%を占め、要介護認定を受けたお年寄りが68.6%に上った。加害者は、息子41%▽夫17.7%▽娘15.2%−−の順。同省は「介護している子供自身が就労できていなかったり、介護のため失業するなどの問題と重なっているのでは」と分析する。
被害類型別では、身体的虐待63.5%▽「死んでしまえばいい」といった暴言などの心理的虐待38.2%▽財産横領などの経済的虐待26.1%▽介護の放棄25.5%−−など。
死亡者32人は、殺人17人▽介護放棄による致死6人▽暴行などによる致死5人−−など。同省によると32人のうち「半数程度」は、市区町村が通報や相談を受けていたという。
施設などの職員による虐待では、入所者に対する介護放棄で08年度に自治体の改善勧告を受けながら、09年度にも入所者への身体拘束のあったグループホームに改善命令が出たケースがあった。【野倉恵】
男性(息子)による虐待が多いのは、おそらくその世代の男性は子育てなどに参加していない場合が多く、老人の世話を「うっとおしい」と感じることが多いからではないだろうか。あと、介護のために離職を余儀なくされた男性の場合、その自分自身の鬱憤を直接介護の対象となる親にぶつけてしまうことも考えられる。いわゆる「八つ当たり」である。しかし、親のせいでそういう状況になってしまったことはある意味事実であるわけで、必ずしも「八つ当たり」とも言えない。「誰のせいでこんなことになったと思ってるんだ!」などと罵倒しながら世話をすることになるわけだ。
では自分が高齢で認知症になってしまった場合どうすればいいのか。施設に入れなかったらそのまま家族に多大な迷惑をかけることになってしまうわけで、もっともそんなこともわからないような精神状態になってるだろうが、そのときにたとえば「安楽死」みたいな形で安らかに死を迎えられないかとも思うのである。少なくともオレは家族に罵倒されながら介護されるような生き方を望んではいない。
オレの伯母は一人暮らししているうちに認知症になってしまった。オレの職場である学園の近くに伯母が住んでいたこともあって、伯母が元気なときは何度か帰りに寄ったこともあったが、そのときに「続き物のドラマを見ていても全然意味がわからへんようになったわ」と伯母が言ったことがあった。今から思えばそのときにすでに認知症の初期症状は出ていたわけだ。
いつも誰かがそばにいて会話のある生活と、一日のほとんどを一人で過ごす生活とは全く違う。平均寿命が延びた結果、夫婦のいずれかが死亡した後に残された配偶者が長期間一人暮らしになることも多いわけで、その孤独さを選ぶのか、同居する子から虐待される(かも知れない)生活を選ぶのか、いずれにしても不幸である。
幸いオレの父親は耳が遠くなったくらいで82歳の今でも元気である。よく本を読んでいるし、会話していてもまだ頭はちゃんと機能している。新聞も欠かさず読むし、話題の映画は一人で見に行く。「おくりびと」を見て感動して泣くようなこともある。もしもこの父に介護が必要になったとき、その世話のために自分が仕事を犠牲にしてそばについていないといけなくなれば、自分は今のような穏やかな気持ちで父に接することができるだろうか。足手まといに感じるのではないだろうか。そんなことをオレは心配するのである。高齢者虐待のニュースは決して他人事ではない。いつ自分がそうした状況に置かれて加害者になるかも知れないのだ。今虐待をしている人たちにもやむにやまれぬ事情があったのだろう。だからいちがいに「加害者」として責められないのである。自分がその状況におかれたときにどうするか、さまざまな虐待事件の報道に接するたびにオレはやりきれない気持ちを深くするのだった。
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