2007年11月10日(土) |
新井貴浩、きみはカープの4番だ! |
携帯用URL
| |
|
広島カープの新井貴浩がFA宣言し、阪神が獲得に乗り出すと伝えられている。オレはこのニュースを大変複雑な気持ちで受け止めている。阪神に新井が来てくれれば大きな戦力アップとなることは確実だ。しかし、それでいいのかという疑問も残るのである。それは彼が今の広島で果たす役割を考えた場合である。4番打者はチームの顔である。エースと4番というのはチームにとっての聖域であり、決して侵してはならないものだとオレは思うのだ。他チームのそれを獲得するということは、選手を奪われる球団のファンにとってどれほど悔しいことだろうか。ファンにとって、絶対に失いたくない選手がいるのだ。そのことをわかっているからこそオレはこのニュースに対して複雑な気持ちになったのである。以下、アサヒコムから記事を引用する。
広島の新井FA、阪神入り濃厚2007年11月09日07時04分
広島の新井貴浩内野手(30)が8日、フリーエージェント(FA)の申請をしたことをうけ、阪神の球団幹部は同日、新井獲得に向けて契約条件の提示などの準備を始めることを明らかにした。新井は優勝争いのできる球団への移籍を希望しており、広島時代から慕っている金本も在籍することなどから、阪神移籍が濃厚となった。 新井は記者会見の冒頭から涙を流し、「カープが大好きです。つらいです」と広島への思いを語った。しかし、宣言を決断したことについて「自分を厳しい環境に置き、その中でどう変わっていくか挑戦する気持ちが出てきた」と説明した。
阪神は右の長距離打者の獲得を目指しており、新井との交渉には、岡田監督が直接出馬する可能性もある。交渉は14日に解禁される。
オレが物心ついて野球を観るようになった頃、巨人の4番といえば長嶋茂雄だった。阪神の4番は遠井吾郎、大洋の4番は松原誠だっただろうか。4番と言えばチームの顔であり、エースと並んでファンの精神的支柱だった。阪神に江夏豊が入団して三振を取りまくり、延長戦でノーヒットノーランを達成して自らホームランを打って勝った試合があった。そんな超人的なヒーローをオレはこよなく愛し、まさか江夏が阪神をトレードで出されるなんて夢にも思わなかった。オレが生涯一度阪神ファンをやめようかと思ったのは、江夏がトレードされたときだ。江夏のいない阪神など考えられなかったし、江夏がライバル球団で活躍することもまた想像できなかったのだ。その後いつまでたっても優勝できないタイガースをあざ笑うかのように江夏は優勝請負人として活躍し、最後は大リーグにも挑戦して野球人として最後まで燃え尽きた。江夏が阪神タイガース球団史上最高の投手であることを信じて疑わない私は、他球団に行った江夏を応援し続けた。広島と阪神の試合で江夏が登板したときは実に困った。阪神は勝ってほしいが、江夏を打ってほしくないというなんとも複雑な心境だったのだ。
近鉄がケガで不振に陥った石井浩郎を4番で使い続けたのはなぜか。それは単に成績以外の何かを彼が持っていたからである。1985年の優勝時、阪神が史上最強の打者であったバースではなく掛布雅之を4番に据えていたのはなぜか。掛布がファンからみてミスタータイガースと呼ばれる存在だったからである。4番というのはチーム生え抜きでなければならず、そうでなければチームの精神的支柱たり得ないというのがオレの持論である。星野監督が金本を4番にせずに3番で使い、4番に浜中を使おうとしたのもオレには頷ける。生え抜きの4番を育てたかったのだ。実際は浜中はそこまで育たなかったわけだが。
阪神が低迷していた時期、4番には桧山進次郎や新庄剛志が座った。二人ともよく三振したし、他チームの4番と比べてはるかに見劣りする成績だった。もっともチームの成績そのものが見劣りしていたのでそれでお似合いだったのかも知れないが。オレは全く頼りにならない4番など認めたくなかった。ただこの二人はまぎれもなく阪神の生え抜きの選手であり、4番打者となる事を期待された選手でもあった。ソフトバンクとの日本シリーズ第二戦、和田毅の立ち上がりを攻めた無死一二塁で桧山が見事な併殺打を打ったとき、オレは「やっぱりいつもの桧山だったよな」と思ったのである。そのときにオレは、彼が新庄同様に「ミスタータイガース」足りえなかったことを納得した。
中村紀洋が渋谷高校という全く無名だった公立高校を甲子園に出場させた頃、野球の名門だった大阪桐蔭には弱いチームとの練習試合でホームランを打ちまくって騒がれた萩原誠という選手がいて、阪神のボンクラ首脳陣は萩原を1位指名させ、中村紀洋は近鉄が確か4位で獲得した。萩原はほとんど活躍せずにトレードに出され、中村紀洋は近鉄の4番打者となった。オレはなぜ阪神が中村を獲得しなかったのかとそのドラフトの時に不思議に思ったのである。無名の高校のチームリーダーとして激戦区の大阪を勝ち抜いて甲子園まで連れて行ったその執念こそ野球選手として必要なものではなかったか。オレはテレビで渋谷高校の試合を観ながら「こいつは絶対プロで活躍する」と思ったのである。
オリックスという企業がいつまで球団を所有するのかわからない。オリックスがイチローを放出した時点でオレはもう球団としてその役割は終わったと感じた。さっさと球団を売却して野球から手を引くべきだろう。イチローの活躍以外にどんな魅力があの球団にあったのか。数少ないオリックスファンの唯一の楽しみがイチローの活躍ではなかったのか。その宝石を手放した時点で、潔くチームも手放すべきだったのだ。
真の4番打者であったりチームの至宝とも言えるべき選手がいない球団もある。ただ、地道にそうした選手を育てていく事がファンを増やし、チームを強くする方法である。広島はそうして江藤を育て、金本を育て、新井を育ててきたのだ。その3人がことごとく他球団に流出してしまうことが広島ファンにとってどれほど悔しいことかを考えて欲しい。 オレは正直言って阪神を強くしたい。そのためにはFAで手っ取り早く選手を獲得するのが一番なのかも知れない。しかし、新井がサードを守るのなら今岡はどこを守るのか。控えに回るのか。今岡のように給料の高い選手なんか他球団は欲しがらないだろう。それともDH要員としてパリーグに放出するのか。首位打者を取り、打点王を取った今岡の実力をオレは今も高く評価している。今季の不振を見てそれだけでもうダメだとは思いたくない。来季もこの成績不振に付き合わないといけないかなと思いつつも、それがファンの定めだと受け止めていたのである。「今岡がダメだから広島の4番をもらおう」なんてあまりに勝手な発想じゃないか。オレの心の中では、今岡は金本の次の4番候補だったのである。
田淵が阪神を去ったとき、江夏ほどではなかったがかなり悲しかった。(その後で交換でやってきた真弓が活躍してラッキーと思ったが・・・)久慈と関川が中日にトレードされたときもオレはとても悲しかったし、種田が中日から横浜にトレードされたときに泣いたというのもよくわかる。そう、ファンにとって愛する選手が他球団に移籍することはとても悲しいし、それをわかってる生え抜きの選手は出て行きたくなどないのである。ただ、弱点を補強してチームを強くするためにやむなくということであきらめるのだ。その中で「絶対に出して欲しくない選手」をファンの誰もが胸に秘めているはずである。それが広島の場合は前田であり、新井であり、黒田であると。自分がそうしてファンに愛されていることを知っても、それでも去ろうというのだろうか。これまでずっと自分を見守ってくれて、球団に足を運び入場料を払って観戦してくれたファンを裏切るのか。
新井よ、どうかきみは広島に残って広島の4番としてセリーグを盛り上げてくれ。今季の阪神はかなりきみに打たれて負けたが、来季はしっかりと抑えてくれると信じている。今岡にはきみに負けない活躍をして欲しいとオレは期待している。阪神は広島から既に金本をもらってそのおかげで2度も優勝させてもらった。これ以上広島のスター選手を奪うわけにはいかない。広島は阪神のファームではない。阪神は阪神でちゃんと素質のある選手を発掘して、自前で育てるべきだろう。オレはゼニで何でもやろうとする阪神球団の体質にあきれている。福留は中日にいるべきだし、和田はやはり西武の和田だ。それがオレの率直な気持ちである。そんな卑怯な選手獲得をするくらいなら、来季の阪神は最下位でもいい。どうか日本のプロ野球を根底からダメにし、いい選手がみんな大リーグや金満球団に行ってしまうこのFA制度は見直して欲しい。それが私の率直な願いである。
参考日記
「それでも、お前なんかにカープをバカにされる筋合いは無い」(琥珀色の戯言)
「阪神は黒田をとらなくてもいい」
←応援ありがとうございます。 m(_ _)m