2007年11月01日(木) |
オレは任天堂を称賛したい! |
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本日記の作成後に青空文庫のトップページにあるDS文学全集のバナーに気がつきました。その後でメールでいただいた情報として、いくつかの作品に於いて工作員活動(文章入力)をおこなったとのことでした。情報ありがとうございました。ただ、それらの活動は任天堂の莫大な利益からみればやはり鼻くそ程度のものであると認識しております。それに関連して日記内容を後で一部書き直しましたことを追記しておきます。
任天堂から発売されているDS用のソフトウェア、DS文学全集に使われている著作権の切れた文学作品のデータは青空文庫のものである。青空文庫自体は誰もが無料で閲覧でき、引用できるものであり、任天堂もまた同様の理由からそのデータを使用しているものと思われる。青空文庫のWEBサイトではこのように説明されている。
青空文庫は、利用に対価を求めない、インターネット電子図書館です。著作権の消滅した作品と、「自由に読んでもらってかまわない」とされたものを、テキストと XHTML(一部は HTML)形式でそろえています。
利用に対価を求めないから無料でそれを使い、多くの売り上げを上げた場合、「タダなんだから」とそのまま放置するのが、今や日本を代表する企業となった任天堂のやることだろうか。オレはそのケツの穴の小ささが許せないのである。このDS文学全集は定価2800円(アマゾンでは2496円)で販売されている。これを一枚売るごとに任天堂にどれほどの利益がもたらされるのはわからない。しかし、少なくとも元データは無料で青空文庫のものを使用しているのだ。少なくともその販売によって得た利益から経費を差し引いたすべてを青空文庫に寄付するのが日本を代表する企業であり、知的財産というものの価値を理解する企業にふさわしい行為ではないだろうか。オレはそれを強く感じるのである。それともあの設置されたバナーをクリックすれば莫大な広告収入が青空文庫側にもたらされるのだろうか。それならまだ少しは許せるのである。
青空文庫の台所事情は決して豊かではない。青空文庫平成18年度財務諸表によれば平成18年度の収入3189715円はそのほとんどが広告収入であり、寄付金はわずかに25000円である。こんなささやかな財源であの膨大な量のテキストを管理し、その運営はほとんどボランティアによって行われているのである。テキストの入力も膨大な数のボランティアによって支えられているのだ。その台所事情を理解するならば、青空文庫のデータを使用してソフトウェアを作成し、それを販売して利益を得ている任天堂はその利益から寄付を行うのが当然だとオレは思うのである。極端な話、そのソフトによって得た利益をすべて青空文庫に寄付して、この良質なサイトの運営のために全面協力するべきである。それが文化を大切にし、大企業の持つ社会的責務を果たすということなのだ。
オレはこのDS文学全集というソフトウェアが登場したとき、上記の事を考えて当初は任天堂を罵倒してしまった。しかし、任天堂がテキストの入力作業にも協力していたというこを知って、罵倒していたことが恥ずかしくなった。そうした事実を知らず、勝手な放言をしてしまったことをどうか任天堂の関係者のみなさま、お許しください。このDS文学全集、梅田のソフマップのDSゲームの売り上げランキング3位に入っている。任天堂様がこうして出してくださったことで、すぐれた日本文学が多くの方の目に触れる機会を得るわけで、このソフトウェアを通じて日本文学の価値に気付く方も大勢いるだろう。それを思うとこのようなまじめなソフトウェアを出してくださった任天堂をオレはかえって称賛しないといけない。これ1本で文庫本100冊分ということは、一冊あたり29円で読めてしまうという事なのだ。これはブックオフの1冊100円コーナーよりも安いのである。安価ですぐれたものを供給するということで日本文学のすばらしさを多くの方に伝えた任天堂の功績はまことに大きい。
今、著作権が50年から70年に延長されようとしている。もしもそんなことになれば、今青空文庫で読めている文学作品のかなりの部分が公開できなくなってしまう。オレはその動きに対して断固として反対したい。他にも青空文庫はさまざまな課題を抱えている。運営資金も決して潤沢であるとは言えない。任天堂の経常利益から見れば青空文庫の予算なんかはハナクソみたいなものである。任天堂がハナクソ程度の寄付をすればそれによって青空文庫はどれほど助かるだろうか。しかも寄付金は税金から控除されるので、寄付したからといって任天堂の腹はちっとも痛まないのである。任天堂様、どうか青空文庫を応援するために力を貸してください。
このDS文学全集に収録されている本の中にはオレがまだ読んでいないものもかなり含まれる。それがこんなに手軽に読めるのである。オレもまたこのDS文学全集を手に入れたくなった一人である。こんな便利なものがあれば、遠距離の電車通勤している方とかも退屈することがないだろう。いくらでもこうして本が読めるのだから。こんないいものがオレの学生時代にあったらどんなに嬉しかったことだろうかとオレは思うのである。
「本はDSで読む」
もしかしたら将来はこれが当たり前になって、紙の書籍はどんどん消滅していくのかも知れない。そうなるのは少し寂しい気もする。しかし、本にとって大切なのはどんな形であるかよりも、どれほど読まれるかということなのだ。その意味ではこのDS文学全集のおかげで過去のすぐれた文学作品が多くの方に読まれるようになることをオレは素直に喜びたい。そしてその機会を与えてくれた任天堂に讃辞を捧げたい。
当該日記の作成にあたり、任天堂が青空文庫に寄付すべきだという貴重なアイデアは江草が考えついた事ではなく、10月28日付け・JIROの独断的日記さんからいただきました。おかげさまでこの日記を完成させる事が出来ました。JIROさんにはこの場をお借りして深く御礼申し上げます。ありがとうございました。
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