2007年10月27日(土) |
NOVAをいったい誰が救うのか? |
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英会話学校最大手のNOVAが会社更正法を申請した。会社にはゼニがなく給料の遅配が続き、10月分の給与ももちろん払われていないという。上場会社なら業績が悪くなっても新株をじゃんじゃん発行してそれを株式市場で売りまくって乗り切るトッキ(ジャスダック9813)やモック(東証マザーズ2363)のようなやり方で乗り切る奥の手もある。株主のゼニを分捕ってそれで建て直すわけだ。一株価値が希薄化して株価は下がるが、その分会社にゼニが入ってくる。NOVAも新株を発行してそれを株式市場で売りまくって最後の資金調達をしようと狙ったわけだが、時すでに遅くもはや株価もこれ以上下がりようもないところまで下げており、間に合わなかったのである。10月24日に新株予約権を発行して7000万円を調達したが、もう手遅れだった。
オレはその「新株予約権発行」のニュースを見ながら「NOVA、おまえはもう死んでいる!」と言いたくなった。いまさらたった7000万で何が出来るというのか。トッキなどは年間の売上高の6割近い23億を新株を発行して調達してるのである。(ちなみに本業は47億円の赤字である。)トッキは有機EL製造装置の会社だが、もはや収入の柱は新株を売り捌くことなのである。NOVAもトッキを見習ってもっと早く株券をじゃんじゃん発行していたら危機を乗り切れたかも知れないのである。
さて、なぜNOVAは破綻に至ったのだろうか。拡大に次ぐ拡大路線が授業の質の低下を招き、バブルがはじけるように自壊したと言われるがその最大の原因は、NOVAが猿橋社長ひとりに権限が集中する体制でチェック機能が働かなかったからだという。以下、アサヒコムの記事を引用する。
NOVA、更生法を申請 社長降格 全教室を一時停止2007年10月26日12時49分
英会話学校大手のNOVA(大阪市、ジャスダック上場)は26日午前、大阪地裁に会社更生法の適用を申請し、保全命令を受けた。負債総額は439億円。経済産業省による行政処分の影響などで受講生の減少が続き資金繰りが悪化、経営破綻(はたん)した。猿橋(さはし)望社長は代表権を解かれ、取締役に降格された。800前後ある全教室の運営は一時停止され、今後は約30万人とみられる受講生への受講料返還が課題となる。
ジャスダック証券取引所は26日、NOVA株を11月27日付で上場廃止にすると発表した。
負債のうち、約200億円は受講生が前もって支払った受講料。管財人が確保したNOVAの資産は、講師や従業員の未払い賃金(労働債権)などに優先的に回されるため、受講料が返還されるかどうかは不透明だ。
NOVA経営陣は、危機的な経営が続くなか、役員7人のうち4人が辞任届を提出するなど混乱。25日深夜に取締役会を開いて猿橋社長を解職、吉里仁見、アンダース・ルンドクビスト、渡辺勝一の取締役3氏が代表権を握った。猿橋氏の解職理由について「不透明な資金調達方法や業務提携の条件交渉で、十分な説明が得られなかった」としている。
NOVAは、教室の賃貸料不払いや、外国人講師への給料支払い遅延で「自主休校」が拡大していた。猿橋氏の方針に危機感を抱いた一部経営陣が、民事再生法よりも裁判所の関与が強い会社更生法下での再建を目指したとみられる。
今後は会社更生法適用下で経産省や金融機関などと連携しながらスポンサーを募り、事業継続の道を探る。だが、全国に展開するNOVAの教室数や受講生の数は膨大で、地域分割などの検討も必要とみられる。
「駅前留学」の広告などで知られるNOVAは、教室数の急拡大やテレビ電話システムによる講座などを進めたが、採算性が低下して07年3月期決算は2期連続の当期赤字を計上した。
さらに、解約時の受講料返還を巡るトラブルも相次いだ。6月には経産省が不実告知などの特定商取引法違反で1年を超える長期契約を半年間停止する命令を出した。受講生減少に拍車がかかり、07年4〜6月期の連結決算は、売上高が前年同期比31・9%減の92億円、営業損益が45億円、当期損益24億円のいずれも赤字だった。
受講料の返還や人件費、教室の賃貸料に充てるため、赤字教室の閉鎖や不動産売却で現金を確保してきたが、資金繰りは改善しなかった。自主再建を目指した猿橋氏は支援企業探しに奔走。旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)の沢田秀雄会長や英字紙など複数の候補と接触したが、具体的な支援は得られなかった。
アイデアマンだった猿橋社長は積極的に拡大することでNOVAを急成長させた。講師はたった3日の研修で即戦力として教壇に立ったという。拡大路線に人材の確保が間に合わなかったという部分はもちろんあるだろう。ただ、もっとも大きな打撃は授業料返還訴訟での敗北だった。
この件に関して、オレはまだ腑に落ちないのである。受講回数が多くなるほど割引になるチケットを購入し。実際の使用回数が少なかった場合、つまり残りを返金する場合に基準となる使用済みの分の価格が割引価格ではなくて正規価格であるというNOVAの主張が認められなかったわけだが、これに関してだけはオレはNOVAを支持する。100回分のチケットを買って、実際は10回しか使わなかったということで残り90回分を返すとき、9割を返せと言った裁判官はただの世間知らずである。その世間知らずの馬鹿裁判官はNOVAを崩壊させた直接の責任者であるとオレは思っている。なんのために割引制度があるのか、どういうビジネスモデルなのか全く裁判官は理解していなかったのだ。
もっとも前払いしてるのに予約が埋まっていて受講できないという理由での返金請求も多かったという。それに関してはNOVAに弁護の余地はない。前払いチケットという商品を売っておきながら、授業を提供しないという行為は詐欺そのものであるからだ。
200億円の受講料が前払いになってるのにNOVAにはもうゼニがないという。膨大な未払い賃金があって、企業が破綻した場合はそうした労働債権が優先される以上この前払い受講料は戻ってこない可能性が高いのである。支援する企業もその200億円に関しては補償する義務はないわけで、どちらかというと支援企業もそんなゼニは踏み倒して新しくゼニを集めて再建したいはずだ。30万人の受講生の中にはかなり高額の受講料を前払いしているいて、そのローンを組んでいる者も大勢いる。ところがNOVAがなくなれば講座は受講できないのにローンは払わないといけないというとてつもない悲劇が待っているのである。
大きな組織を効率的に運営するためにはさまざまな役割の人材が必要だ。そして学校というのはやはり授業の質がその生命線である。そこにほころびが生じているのに、それが受講料返金請求の最大の原因だったのに、猿橋社長は気付くのが遅れて事態を最悪の状況まで引っ張ってしまったのだ。
支援企業にはイオン、丸井、ヤフーなどの名が上がっている。たとえNOVAが存続できたとしても、一度失った信頼を取り戻すのはなかなか大変なことだろう。今後どのような形で再建の道筋をつけるのか、オレは注目している。猿橋社長の目指したもの自体は間違っていなかったはずだ。ただ彼に欠けていたのは一つの組織を維持するための気配りと諫言できる補佐役だったのではないか。
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