江草 乗の言いたい放題
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2007年10月15日(月) これは果たして誘拐事件なのか?        ブログランキング投票ボタンです。いつも投票ありがとうございます。m(_ _)m 携帯用URL by Google Fan

 家出をした少女をかくまった20歳の男性が「未成年者誘拐容疑」で逮捕された。まだ12歳の小学生をだまして誘い出して・・・という事件だと報道されてきたが、どうも違うようである。そして、これを果たして事件と呼ぶべきなのかとオレは思うようになったのである。
 
「お兄ちゃんは悪くない」誘拐の女児 聴取に口閉ざす 2007.10.14 18:31
長崎県諫早市の小学六年生の女児(12)が大阪市のマンションに8日間連れ込まれた事件で、女児はインターネットのブログで知り合った大阪市福島区玉川2丁目、会社員、坂本優介容疑者(20)=未成年者誘拐容疑で逮捕=に悩みを相談していたことが14日、長崎県警の調べで分かった。
 県警は同日、大阪で逮捕した坂本容疑者を諫早署に移送。女児から相談を受ける中で、家出を促した可能性もあるとみて、詳しい経緯を調べる。
 調べでは、女児は自身が開設したブログ上で今年7月から8月にかけて坂本容疑者と知り合い、漫画の感想などについてやりとり。その中で「寂しい」「周りが自分を分かってくれない」と悩みをつづっていた。
 女児は6日、貯金箱から約1万6000円を持ち出し「家出する。捜さないでください」と記した手紙を残して自宅を出た後、JR諫早駅で北九州市の小倉駅まで在来線の特急と新幹線を乗り継いで行く切符を買い、小倉駅で坂本容疑者と落ち合った。一緒にいる2人が駅構内のビデオに写っており、その後再び新幹線に乗り、坂本容疑者の自宅マンションに向かったとみられる。
 マンションにいる間、坂本容疑者は普段通り出勤し、女児は自由に部屋を出入りできる状態だった。13日に捜査員に保護された際、女児は「帰りたくない。お兄ちゃんは悪くない」と話し、長崎県警の調べにも口を閉ざしているという。


 この小学生の女の子はブログを開設し、そこで20歳の大人の男性と漫画の感想などをやりとりしていたとある。そこでどんなレベルのやりとりがあったのかはわからない。しかし、少なくともその男性が「自分の話をちゃんときいてくれる」「共通の話題で議論できる」相手だと感じたからこそ心を開き、助けを求めたのではないか。

 誰もがこう言うときに考えることは、いわゆる「ゲスの勘ぐり」というヤツで,20歳男性がロリコンだったから小学6年生の女の子を誘拐して自分の部屋に住ませたという類の想像である逮捕に至った理由も当然そうだろう。しかし、この女の子にはいつでも家に帰ることの出来る自由があった。それでもこの男性のマンションの部屋に居ることを望んだのである。そこが自分の居場所だと思ったのである。

 日常生活の中で疎外感を感じ、自分の居場所を求めていた少女にとって、その男性の部屋というのはやっと自分が見つけた安息の地ではなかったか。もちろんこういう見方はかなりその男性を好意的に捉えたモノであり、事実は異なってるのかも知れない。しかしオレがその少女の父親の立場なら、「娘をかどわかしやがってこの馬鹿野郎!」と怒鳴ることは出来ないと思うのである。そうやって家出したくなるほどの気持ちでいたことに気付いてやれなかったと自分の、親としてのふがいなさを責めると思うのだ。

 この事件にどんな決着が用意されてるのかオレにはわからない。しかし、そ
の少女が8歳年上の男性に対して抱いた感情が、今は相手を「お兄ちゃん」と呼ぶような気持ちであったとしても、もしかしたら将来は恋愛感情に代わっていくのかも知れず、あるいは今既にそうであるのかも知れず、だったらこれが事件にされたことで引き裂かれてしまうのがかわいそうでならないのである。
 この子はどんなブログを書いていたのだろう。小6にして自分専用に使えるノートパソコンを持ちブログを書いていたということから、家で虐待を受けていたとは考えられない。彼女の感じた疎外感の原因は何だったのか。

 犯罪被害者が加害者に対して好意を抱いてしまう状況を、精神医学の世界ではストックホルム症候群と呼ぶ。以下にその項目に関してウィキペディアからの引用を貼り付ける。

ストックホルム症候群ストックホルム症候群(すとっくほるむしょうこうぐん)は、精神医学用語の一つで、犯罪被害者が、犯人と一時的に時間や場所を共有することによって、過度の同情さらには好意等の特別な依存感情を抱くことをいう。
 犯人と人質が閉鎖空間で長時間非日常的体験を共有したことにより高いレベルで共感し、犯人達の心情や事件を起こさざるを得ない理由を聞くとそれに同情するなどし、人質が犯人に信頼や愛情を持つようになる。また「警察が突入すれば人質は全員殺害する」となれば、人質は警察が突入すると身の危険が生じるので突入を望まない。ゆえに人質を保護する側にある警察を敵対視する心理に陥る。このような恐怖で支配された状況において、犯人に対して反抗や嫌悪で対応するより、協力・信頼・好意で対応するほうが生存確率が高くなるため起こる心理的反応が原因と説明される。


 ただ、今回の事件は男性はずっと少女の敵ではなくて味方である。だからこの症例もちょっとあてはまらないかと思う。

幸い、今回逮捕された男性は多少はロリコン的な趣味と興味があったのかも知れないが、少なくともこの少女にとっては終始よきお兄さんであった。それが唯一オレにとっては救いなのだ。それは他の多くの誘拐・監禁事件を知るからである。新潟で起きた小学生の女の子が19歳まで監禁され続けた事件を多くの人がまだ覚えてるはずだ。相手の男性が危険な人間であるか、そうでないかは実際に誘拐されてみないとわからない。

 今回の事件でもしかしたら逮捕された男性は職を失うかも知れないし、名前が大々的に報道されたことでこれからの人生が大きく変わってしまうかも知れない。ただ、このオレはこの男性に対して深く同情するのである。もしもオレが一人暮らしの大学生の時に、同様に家庭で疎外感を感じている中学生や高校生の少女と文通していたとしたら同じことをしていたかも知れないと思うからである。(さすがに小学生なら家出は勧めないと思うが)

 誰も傷ついていない今回の事件、オレは男性に対して寛大な処置を望むものである。そして少女が家に帰ってからもしもその男性のことを、自分と心が通い合う唯一無二の存在と思うならば、高校までがんばって長崎で暮らして、それから関西の学校に進学すればいい。そのときに男性と再会して、同じ気持ちでいるのならまたお兄ちゃんと親しくすればいいじゃないかと思うのである。オレの視点はあまりにもこの男性寄りだろうか?


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