2007年09月02日(日) |
ゼニで宿題を買う人たち |
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夏休みも後一日である。明日は始業式という学校が多いわけでおそらく今日は一日中宿題に追われてる子どもが多いはずだ。宿題というのはもちろん自分でやらないと意味がないわけだが、最近はその宿題をゼニで片づけてくれる業者が登場し、親たちの中にはゼニを払ってわが子の宿題をやってもらう人たちも多いらしい。わざわざゼニをかけてわが子を塾に通わせたり家庭教師を付けたりするならまだ話はわかるのだが、わざわざゼニをかけてわが子をダメにする親には驚く。そうやって大人の世界のズルさを教えていったいどうするんだとオレは呆れてしまうのである。
ただ、この宿題代行業という仕事自体はなかなかおいしい仕事かも知れない。もしもオレが大学生だったとすれば、そしてこのゼニになるバイトが目の前に転がっていれば、迷わずオレはやりまくっただろう。そんなことにゼニを払うのはどうせろくな連中ではないのである。そいつらが持ってるゼニもどうせろくでもないことに浪費されるゼニなのである。「罪と罰」のラスコーリニコフが老婆のゼニを奪って、そのゼニを善行に使おうとしたようなものである。自分のような真面目に勉学に励む学生が、そういうクソたちのゼニをもらった方がよほど世のため人のためになるというまことに勝手な論理からそのバイトに励んだだろう。
産経新聞にはこのような記事があった。そこから引用したい。
金で解決…親も子供も宿題丸投げ 代行業者が繁盛
「読書感想文」から「自由研究」まで、夏休みの宿題を片づける「宿題代行業者」が登場し、賛否を呼んでいる。メールなどで届いた依頼に、アルバイトの学生らが有料で応える。多くの小中学校で夏休み最後となる今週末は“駆け込み客”が殺到しているというが、「家庭学習の習慣を身につけるという本来の趣旨に反している」と、教育関係者は批判的だ。
有名大学生らが登録
インターネット上で宿題代行サイトを主宰するのは大阪市内の20代の男性。このサイトには東大や京大、阪大、関関同立など全国の有名大学生らが多数、登録している。
算数の文章問題は1問500円、読書感想文は2万円で引き受けるほか、大学生のリポート(2万円〜)や卒業論文(30万円程度)まで幅広く手がけている。
そのほか、夏休みの宿題の定番である工作(5万円)や自由研究(2万円)なども請け負っており、これまで実際に「アリの研究」や「河川敷の水質調査」などを提供したという。
依頼は主に親からで、「子供の宿題が期限に間に合わないから」という理由がほとんど。中には小学生本人から注文が来たこともあるという。メールやFAXで受けた依頼を、業者を介して登録学生に発注。高額バイトとして一部の学生に人気があり、中には月20万円以上稼ぐ学生もいるという。
夏休みは稼ぎ時
夏休みには問い合わせが通常の約3倍になるといい、今年はこれまでに、小学生の夏休みの宿題だけで約40件の注文があったという。代行業者は「夏休みが終わる今週末は全国からの駆け込み客が増えている」と話す。
こうした状況に文部科学省は「家庭学習の習慣を身につけるのが宿題の本来のねらい。その趣旨からも、宿題を丸投げするのはおかしい」。大阪府教育委員会も「宿題をお金で解決するという保護者の考えが気になる。それをビジネスにしてしまう業者もどうか。子供の成長を一番に考えればゆゆしき事態だ」と異議を唱える。
韓国でも問題化
一方、代行業者は「読書感想文などは、あくまで参考用に渡しており、そのまま提出することは禁止している」というが、実際は目が届かないのが現状だ。
インターネット上では、ほかにも大学生の卒業論文を代行する業者が増えており、韓国では500サイト以上が乱立。すでに出来上がっている論文などを提供するサイトもあり、日本よりも一足早く問題になっているという。
三重大学の奥村晴彦教授(情報教育)は「宿題や課題は結果より努力した跡が大切。お金で買ったものでは意味がない。保護者や業者も『何でも金で解決できる』という考え方を子供の心に植え付けるのは良くない」と話している。(2007/09/01 16:33)
多くの批判はあるが、オレはこのような業者が存在すること自体は否定しない。そういう業者にわが子の宿題を丸投げする親がクソなのであり、世の中にクソがいる以上その相手をする人間も必要なわけで、覚せい剤を買う馬鹿が居るから売人が存在するわけだし、女子中学生に10万円払って援助交際するオッサンがいるから女子中学生が援助交際するわけだ。わが子の宿題に何万も払う馬鹿親がいるから、それを引き受ける業者が出てくるわけである。需要があるから供給がある。それは資本主義社会のルールである。ゼニを払う人が居るからこそ、そのゼニを受け取る人が居るのだ。ただそれだけのことであり、特に非難されるようなことだとは思わない。クソみたいな親が、わざわざゼニを払ってわが子をクソにして、そうして育ったクソガキはろくな人間にならずにクソ野郎になるというダメ人間の再生産システムができあがってるというだけのことである。
もしもオレのところに読書感想文の作成依頼が届いたらどうするか。それが「原稿の依頼」という形ならどうするだろうか。
「夏目漱石の『こころ』の感想文を書いてください。原稿料は10万円、枚数は10枚です・・・」
という依頼メールが来て、すぐにオレの口座にゼニが振り込まれたら物書きのオレとしては引き受けざるを得ないだろう。しかし、オレが書いた感想文を例えば中学や高校の教師が読んだとして彼らはいったいどう感じるだろうか。そこでちゃんと「こんな名文を高校生が書けるわけがない」と気付かないといけないのである。
オレは教師として大量の宿題に目を通す。読書感想文という宿題を課すことももちろんある。その中で当然のことだが、誰かの感想文を引き写して出すという卑怯なことをしてごまかす輩もいないわけではない。そんなことをしても無駄である。感想文を点検するとき、オレは数百人の書いた内容を覚えてるから同じモノがあればすぐに発見できる。そんなときは両者ともにペナルティを受けることになる。どっちも提出が認められないのである。こういう場合、写した方にだけ罪があるのかも知れないが、オレは断じてそうした行為を許さない。少なくともオレに対してそんなせこい方法は通用しないということだ。
しかもオレは日頃テストの答案を見ていて生徒の力量はちゃんと把握しているから、明らかに本人がやったのではない宿題など一目瞭然である。ちゃんと自分が教えてる生徒のことを理解してる教師なら、その宿題が自分でやったものか、それとも代行業者に依頼したものかはすぐに見破れる。そんなイカサマにあっさりとだまされる教師の方にこそ落ち度があるとオレは思ってしまう。
ネットで検索すればいろんなものが落ちている。「走れメロス」(太宰治)の読書感想文などいくらでも転がっている。それを丸ごと引き写して提出する輩もきっといるだろう。少なくとも国語教師ならそういう想定内の卑怯な行為に対して、ある程度の対策はたてておくべきであり、ネット上で簡単に入手できる感想文テキストは一通り目を通しておくべきだ。このオレも漱石の「夢十夜」に関する感想文を書いている。日本のどこかにそれを丸写ししているヤツが居るかも知れない。ちなみにこの感想文はその昔、感想文を書いたらトヨタの300万円くらいのクルマが当たるという企画に応募するために書いたものである。残念ながらクルマは当たらず、オレがもらったのは図書券5000円だったが。
ただこの宿題代行サイト、どの程度の力量の学生バイトを集めてるのだろうかということが気になる。せっかくゼニを出してやってもらった宿題が間違いまくりだったりひどいデキだったら意味がないからなあ。いや、もしかしたら馬鹿ガキのために「適度に間違えてください」という高度な内容の依頼だったりして。最近の大学生の学力に関してオレはかなり心配してるのである。
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