2007年03月02日(金) |
この世で最も崇高な行為 |
携帯用URL
| |
|
この世で最も崇高な行為とは、誰かのために死ねることだと思う。オレは太平洋戦争で亡くなった多くの若者の死を徒に美化する意図はない。しかし特攻に赴いた若者たちや硫黄島で絶望的な戦いに挑んだ兵士たちが、自分たちの犠牲によって祖国が守られ、自分の愛する家族を守ることが出来ると信じてその一命を捧げたのだと思わずにはいられない。彼らの多くは自分たちの犠牲の上に戦争のない平和な未来が来ることを信じて死んでいったのではないだろうか。
自殺しようとして踏切内に入った女性を助けようとして必死で飛び込み、心ならずも命を落とすこととなった宮本邦彦警部が緊急叙勲されることとなった。以下産経新聞のWEBサイトの記事を引用する。
宮本警部に叙勲 妻「夫の行為誇り」
殉職した宮本邦彦さんへの緊急叙勲の伝達式が1日、東京・板橋署で行われ、妻の礼子さん(53)と長男の篤史さん(20)に、警察庁の小野正博審議官から正七位と旭日双光章が伝達された。
緊急叙勲は業務に殉じた公務員などが対象で、旭日章は国家や公共に対し顕著な功績を挙げた人に授与される。小野審議官は「警察官の本分は住民の安全を守ることで、宮本警部は身命を賭(と)してそれを実践された。警察職員すべての胸に改めて一つの火を灯していただいた。遺族の皆様には一層強く生きていただきたいと願うばかりです。宮本警部もそう願っておられることでしょう」と、追悼のあいさつを述べた。
伝達式後、礼子さんは警視庁を通じ「叙位・叙勲をいただき、ありがとうございました。改めて夫の行為を誇りに思いますとともに、全国から寄せられたお見舞い、激励、弔意など温かいご芳情に感謝しております」とのコメントを出した。(2007/03/01 22:00)
あの浅間山荘事件の時、殉職した警察官の家を弔問した佐々淳行氏は、泣き崩れるその若妻の前で言葉を失ったという。そこでは亡くなった警察官の老母が「お国のために死んだのです。泣いてはいけません」と気丈に叱咤したという。誰よりも一番泣きたかったのは息子を凶弾によって奪われたあなたではないのか。オレはこの話を聞いた時に涙をこらえられなかったのである。それがどんなに名誉な行為であろうと、そんな名誉よりも生きて帰ってくることを本当は誰もが望んでいるはずだ。
国民の生命や財産を守るために多くの警察官が日夜職務を果たしている。それによって我々の社会は秩序を保っている。我々が当たり前だと思ってる安全が当たり前ではない国が世界にどれほど多いことだろうか。スーダンのダルフール地方では民兵による住民虐殺がまだ続いていて大量の難民が出ている。暴力と死が日常の国は世界にはいくらでもある。多くのならず者どもが密かに存在するこの社会を、平和で過ごしやすい状態に保ってくれているのは高いモラルを持った警察官たちのおかげである。賄賂を支払わないと市民の訴えなんか取り上げてくれない国だってあるのだ。
自殺しようとしたこの女性に対して「あなたのせいで宮本警部は・・・」と責めようとする人がこれから出るかも知れない。オレがもしも宮本警部の息子だったら、やはりこの女性を恨んでしまうことは間違いない。しかし、もしもこの女性がもう一度自殺しようとするとしたら、いったい宮本警部の行為はなんだったのかということなる。その崇高な死がただの徒労になってしまう。どうか、助かった自分の命の重さを理解してくれとオレは願うのだ。あなたが生きていてくれないと、本当に宮本警部の死が無駄になってしまうのだ。
傷が癒えて元気になったら、どうか宮本警部の墓前で手を合わせて欲しい。そして、自分を救うために命を落としたその崇高な魂と向き合って、お詫びの言葉を伝えて欲しい。「もう私は自殺なんかしません。あなたの分までしっかりと生きます」と誓って欲しい。
←4位までやってきました。1位はもうすぐです。