2007年02月04日(日) |
きみは鉄鋼スラグを知ってるか? |
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鉄鋼スラグというのは製鉄業の工程の中で発生する産業廃棄物である。発生時の状況から高炉スラグと製鋼スラグの二つに分けられる。高炉で銑鉄を製造する際、溶融された鉄鉱石の鉄以外の成分は、副原料として高炉に投入される石灰石やコークス中の灰分と一緒に高炉スラグとなって分離回収される。こうして生成する高炉スラグは銑鉄1t当たり約290kg生成する。製鋼スラグは転炉で大量の酸素を溶鉄に吹き付けて炭素を除去(酸化精錬)した際に生じた酸化物と精錬材(石灰石など)が溶融して生成したものである。主成分は石灰(CaO)とシリカ(SiO2)であり、当然のことながら水溶時にはPH12程度の強いアルカリ性を示す。
2006年度の日本の鉄鋼生産高は1億トンを超えていたそうだが、それに比例してこの鉄鋼スラグという廃棄物もまた約3600万トン生成していた。ところがこの廃棄物は、廃棄物扱いではなくて有価物とされている。いちおうグリーン調達品目に指定されており、環境保全に資する材料として認知された「環境にやさしい材料」とされているのである。有価物だからそれが大量に屋外に放置されていても「貯蔵」という扱いになっていて、産業廃棄物処理法の適用を受けないのである。しかし、粉塵となって飛び散れば当然のことながら周辺住民には健康被害をもたらすわけで、オレに言わせれば立派な産業廃棄物なのである。
以前に石原産業が廃棄物のフェロシルトを土壌改良材などとごまかして大量に不法投棄していた事件があったが、この鉄鋼スラグに関しても同様のことが行われてる可能性が高いのである。しかし製鉄業界というのはかつての日本の基幹産業であり、今でも当然のことながら政治家への影響力が強い。そういうわけで事件として報道された石原産業と違って、こちらは情報が隠蔽されたままであり、そもそも鉄鋼スラグなんてみんな何のことなのかわかっていない。やる気のない腰抜け揃いのマスコミの連中にはまかせておけないのでとりあえずオレが日記に書くのである。
神鋼スラグ製品株式会社という企業がある。名称から分かるように神戸製鋼の関連会社であり、おそらくは神戸製鋼所で発生した鉄鋼スラグの処理が事業内容なのだろう。そのサイトのTOPにはこのようなことが書かれている。
鉄鋼スラグは鉄鋼の生産に伴って副生されます。鉄鋼スラグはセメントの代替、海砂等の代替、土木・港湾工事資材として幅広く使用されております。鉄鋼スラグの有する特性を生かし、製品として活用することにより、天然資源、地球環境の保護・保全に寄与しております。是非ご活用ください。神鋼スラグ製品(株)がお力添えいたします。
大量の石灰を含む鉄鋼スラグがセメントの代替に使われるというのはわかるし、採取が困難になっている海砂の代替として土木・港湾工事資材に用いるというのもわからないこともない。しかし、そんな強アルカリのものを大量に埋め立てに使えば地下水はどうなるんだ。オレはまずそれが気になったのである。このあたりもフェロシルトの時と非常によく似ている。フェロシルトは大量の重金属が含まれてるということで問題になったが、鉄鋼スラグもまた同様に石灰(CaO)とシリカ(SiO2)以外の金属成分を多量に含んでいる。
もちろん大量の廃棄物をなんとか安全に処理しないといけないことはよくわかる。しかし、それがまるで資源であるかのようなこの説明はかなりの誤解を招く。有効な資源ならちゃんと買い手がつくはずだ。神鋼スラグ製品(株)の損益計算書を見れば2005年度は赤字となっている。どうやらこの廃棄物のリサイクル製品化はなかなかの難事業であることが推測できる。道路用・コンクリート用粗骨材に使用するのなら土中に溶け出して地下水を汚染する心配はなさそうだが、その用途の需要はどの程度あるのだろうか。もしもこれが大変有効な資源であり需要が多いのならなんの問題もなくリサイクルされてるということである。しかし、引き取り手がなくて大量に放置されているという実態があるなら話は別だ。やはりこれは厄介なゴミということになるのだから。
石原産業がフェロシルトを不法投棄する際、それをゴミとして処理費用を払うのではなくて、有価物として売った(価格はただ同然)形式をとっていながら実際には逆にゼニを払っていた。廃棄物だから処理費用を払っていたのである。オレはそのカラクリに近い何かの存在を、神鋼スラグ製品(株)の売り上げ高の少なさから勝手に憶測する。
2005年11月26日、東武開発は今治市吉海町本庄津倉地区に埋め立て目的で5万5000トンもの大量の鉄鋼スラグを運び込んだ。鉄鋼スラグは有価物とされているので産業廃棄物処理法の適用外である。愛媛県もこれを了承した。かつて瀬戸内海の豊島に大量の産業廃棄物が投棄され、そのゴミを捨てまくった企業としっかりつるんでいた香川県がその実態を知りながらも放置していたことから戦後最大のあの不法投棄事件は起きたのである。あのときもゴミはなぜか「有価物」とごまかされていたのではなかったか。
住宅地と隣接した土地に不法投棄されたこの5万5000トンの鉄鋼スラグの出荷元は神戸製鋼と日新製鋼である。さて、そのゴミを東武開発はいったいいくらで買ってくれたのか。神鋼スラグ製品は「2万トンを売ったが、価格は公表できない」日新製鋼呉製鉄所も「3万5千トンを出荷した。価格は企業秘密なので言えない」と答えたそうである。答えられなかったのはその商取引が実は売ったのではなく、ゼニを払って引き取ってもらったからではないのか。買い手(?)である東武開発もその親会社の東方金属も「金額は公表できない」と答えたそうである。ただ、問題が表面化してから数ヶ月後に東武開発は撤去を表明した。さて、そのゴミはいったいどこに行くのだろうか。
ゴミはどこかに捨てないとなくならない。鉄鋼業の売上高は空前の勢いで伸びている。当然のことながら廃棄物である鉄鋼スラグの量も増えているだろう。そして同じことは中国や韓国といった近隣諸国でも同様に起きているはずだ。それらの国がきちっと処理しないことで地球環境の汚染が進むことだけでも困ったことであるのに、どうやら日本はこの鉄鋼スラグを中国へ輸出しているらしい。あの環境に対する配慮の全くない国にそんなゴミを送ればどうなるのか。おそらくそれは輸出という形ではなく、ゴミに処理費用名目のゼニを付けて送るような形式になってるのではないだろうか。そのゴミは中国でいったいどうなっているのか。
石原産業にしても、神戸製鋼にしても東証一部上場の大企業サマであり、そんなところが胡散臭い取引に手を染めていればそれは株主に対する重大な裏切りである。石原産業の場合は社会的制裁を受けることになったが、神戸製鋼を含めた他の鉄鋼業各社はこの問題に関して突っ込まれても大丈夫なのだろうか、中国に輸出してしまえば後は向こうの国の責任だと思ってはいないだろうか。相手に処理能力がないことを知りながら廃棄物を押しつけるのは、水洗便所が壊れていて水が流れないことを知りながら大便をしてるのと同じである。中国や東南アジアへの工場移転がただの公害の引っ越しであるなら、それを放置した日本政府は重大な責任を負う。
せめて我が国の産業界にもう少しまともな人材がいて、公平無私な立場から企業の利益よりも人類の利益を考えてくれるようになればとオレは願う。しかし、あの労働者から搾取することしか考えていないCANONの便所野郎、御手洗が経団連会長であることを思えばそんなことは全く期待できないのである。
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