2006年03月04日(土) |
遺産50億を隠した男 |
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タクシー会社はもうかるのである。タクシーの台数をじゃんじゃん増やせば一人あたりのドライバーの取り分は減る一方だが、そこから搾取しているタクシー会社はもうかってもうかって仕方がないのである。余ったゼニで大仏を建てるタクシー会社社長もあるくらいだからその儲かり方の半端じゃないことが分かるだろう。
大阪地検特捜部は3月3日、大阪府守口市のタクシー会社「トモエタクシー」を創業した父親の遺産のうちの約50億円分を隠して、その相続税24億円を免れたとして長男の同社元社長、西井良夫容疑者(61歳)を相続税法違反の疑いで逮捕、自宅や同社など8カ所を家宅捜索した。相続税の脱税額としては過去最大となるらしい。
そのゼニの隠し方だが、西井容疑者は2001〜2002年の間にシンガポールの金融機関を経由して、二十数回にわたってスイスの複数の金融機関に父親名義の預貯金を送金したり社債を移管するなどして、2002年4月に父親が死亡した時点での遺産総額が実際には約82億円あったのに、そのうちの約50億円分を隠し、相続税約24億8000万円を脱税した疑いである。残り32億円のうち課税対象の遺産総額28億7000万円分に関しては相続税を払っているわけだから約14億は払ったわけだ。ということは、本来39億払うべきところを14億でごまかしたというわけで、西井にしてみれば「14億も払ってるじゃないか!」と言いたいのだろう。「全部オレのゼニだ。それをなんで国に取られるのだ!」というのが正直な気持ちだったような気がする。
さて、この莫大な遺産を残した西井容疑者の父だが、1934年に運送業を始め、1950年にトモエタクシーの前身会社を設立。2002年4月に死亡するまでにタクシー事業以外に不動産賃貸業やLPガス販売業、ボウリング場運営など幅広く事業を展開し、一代で20社以上のトモエグループを築いた大物創業者だったのである。
西井容疑者は父親の死亡後、トモエタクシー副社長から社長に就任したが、半年後には社長職を長男に譲って持ち株会社「トモエ興産」の会長に就任、実質的にグループを支配している。それだけならただの二世経営者なんだが、オレが笑ってしまったのはこの西井良夫が、門真納税協会の役員を務めていたことである。納税協会の役員が脱税に精を出していたのである。ひどい話である。この納税協会というは「適正な申告納税の推進」を目的に掲げているのだが、実際は「不適切なごまかし納税の実行」を推進していたわけだ。交通安全協会の役員が飲酒運転してるようなものである。
オレのような庶民には遺産が82億あるような生活というのは想像も付かないのだが、おそらく日々の生活にも事欠くような貧乏人の存在は想像も付かないのだろう。その繁栄は多くのタクシードライバーを犠牲にして、彼らに厳しい労働をさせ低賃金で搾取して成り立ったものであることを忘れてはならない。そんなふうにスイスの銀行に貯め込まずに、ドライバーたちに特別賞与としてじゃんじゃん振る舞ってやれば神のごとくにあがめ奉られただろう。あの世にまで持って行けない以上、ゼニはきれいに使わないとダメである。そうやって隠そうとした結果、死んだ後も醜い守銭奴のジジイとして人々の記憶に残ることほど情けないことはないんだぜ。
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