2005年11月26日(土) |
ホンモノの正露丸はどっちだ? |
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正露丸と言えばラッパのマークの大幸薬品が発売している整腸剤だと思ってる人が多いが、実はそれは大きな勘違いである。正露丸が登場したのは日露戦争の時、ロシアを征服するの意味で「征露」丸と名付けられた、兵士たちに飲ませる整腸剤だったのである。戦地で下痢や腹痛で悩む兵士が多かった中、この苦い薬を飲ませるために「征露」というネーミングを必要としたのである。薬を飲むのは明治天皇のご命令なのである。逆らうわけにはいかないのである。そういうわけで兵士たちは正露丸を服用させられたのであった。
ところが戦地での征露丸の効果は帰還兵により過大に喧伝され、戦勝ムードで「征露丸」という名称が好評を得たこともあり、一般販売権が民間に開放されると多数のメーカーで競うように製造販売されるようになった。その中にはCMで有名なラッパのマークの大幸薬品も含まれていたのである。そういうわけで、征露丸という名称は一つのメーカーだけが使ってる「固有名詞」ではなく、クレオソートを主原料とする整腸剤を意味する「普通名詞」だったのである。(戦後は「征」の字が「正」に改められた。)
大幸薬品は1958年に突如この正露丸を商標登録し、他社に対してこの名称の使用を差し止める裁判を起こした。なんて卑怯なんだ。もちろん他社も応戦する。そして1974年3月に最高裁は「正露丸は一般名で固有の商標ではない」という判決を下して争いは終わった。その結果、正露丸の商標はいちおう大幸薬品が持っているが、他社が正露丸の名で販売してもよいということになったのだ。
さて、ドラッグストアに行くと、ラッパのマークの大幸薬品の正露丸は、他社の正露丸と並べて置いてある。箱も同じ黄色で紛らわしい。正露丸は一目で正露丸と分かるのである。実際の処十数種類の正露丸が存在するのだが、どれもみなよく似ているのだ。これはどうやら間違えて買うことを狙ったとしか思えない。
しかし、値段はかなり違う。大幸薬品の正露丸に比べて、例えば和泉薬品が販売してるものは半値程度なのだ。オレのようなセコい客はおそらく安い方の正露丸を買うだろう。さて、この状況に関して大幸薬品は2005年11月24日、再び裁判を起こしたのである。似たようなデザインで売ることは商標権を侵害してるということで販売差し止めを求めたのである。なんて卑怯な企業なんだ。オレはこの話を聞いて金輪際、大幸薬品の製品だけは買わないと心に決めた。
みんなが仲良く使っていた名称にいきなり「商標」なんて概念を持ち込んで和を乱したのはおまえだろう。極端な話、「ごはん」や「ライス」なんてものを商標登録されたら困るじゃないか。普通名詞化したものが商標登録されれば、それをふだん使ってる人はかなり迷惑なのだ。類似品の販売で売れ行きが落ちたことが提訴の原因だというが全く情けない話である。売り上げが落ちたのは、類似品の存在のせいではなくて、類似品の方が安いからである。
中にはオレのように成分を見て、両者の違いを検討した上で和泉薬品の正露丸を買ってる人もいるが、普通は「安い方の正露丸」ということで和泉薬品の方を選ぶのだ。そんなこともわからないのか。もしも大幸薬品の正露丸の方が安いのならそっちを選ぶ人が増えるだろう。ただそれだけのことである。和泉薬品の倍近い売値と言うことは、小売店への卸値も倍近いのかも知れない。
花八層倍、薬九層倍、坊主丸儲け(花は原価の8倍、薬は9倍で売れ、僧は元手なしで儲かるということ)と言って、こんなものの原材料費は安いもんだろう。だったらなぜよその倍で売るんだ。ぼったくりはお前の方じゃないか。しかも成分も和泉薬品の方が優れている。大幸薬品の正露丸はオレの胃痛には全く効かなかったが、和泉薬品の正露丸は胃酸を中和する成分が若干含まれてるのでオレには効くのである。この大幸薬品による言いがかり訴訟、果たして裁判官はどんな決着をつけるのだろうか。
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