2005年07月16日(土) |
ハメこまれた人たち・3 |
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極東貿易という会社がある。東証一部上場銘柄だが、株価は330円前後で、一日の出来高はせいぜい3万株という不人気株の代表みたいな忘れられた銘柄だった。7月4日の終値は355円。ところがそこから三日間この銘柄は急騰するのである。7月5日には378円(+23)、7月6日には458円(+80でストップ高)、7月7日には瞬間的に532円を付けて終値は502円(+44円)だった。
3日間続けて上昇した理由は、7月5日財務省受け付けの大量保有報告書であの100億円サラリーマンの清原氏のいるタワー投資顧問が同社株を5%以上保有したことを材料視したものだった。翌7月8日にはいったん上昇して515円を付けてからは反落、安値445円、終値452円と大きく下げて終わった。出来高も一時は6000万株と膨らんだが、その後は大きな値動きもないまま徐々に沈静化していったのである。
さて、こうして値下がりしてしまった銘柄を損切りせず、清原氏がその株をそのまま手元に残しておくとは考えにくい。おそらく彼は500円以上を付けた時を見計らって上手に売り抜けていたはずである。そして、このような結果になることもすべて清原氏にとっては計算ずくだったのじゃないかと思えるのだ。
100億円の給与もそれを広告費と考えれば高くはない。そして、清原銘柄が一つのブランドになった今、地道に値上がりしそうな株を探すなどという苦労はもう不要である。自分が目を付けた株を安値のうちに仕込んでおいて、適当なところで自分の名前を出せば、あとはそこに個人投資家の提灯が群がってくるから、適当に上がったところで売り抜ければいいだけのことである。自分の売り抜けたところが必ずチャートの頂点になるわけだ。そのからくりに気づかない個人投資家は、結局はタワー投資顧問からババ抜きの最後のカードを渡されることになる。
もとは安かった株がいつのまにか「なんでやねん!」というくらいの高値になって、そんな局面で個人投資家は「まだまだ上がる」「清原氏が買ってるのならもっと上がる」と信じ込み、そこを狙って清原氏は自分の持ち株をうまくハメ込んでしまうのかも知れない。このような現象はこれからも起きるだろう。清原銘柄が何であるのかを個人投資家が知った頃にはもう十分に値上がりした後で、そこからあわてて買いに行ってももう手遅れ、清原氏が去った後には、もはや含み損が大きくなって損切りも出来ず、塩漬けにするしかない株を抱えた個人投資家たちがゴロゴロしてるのだろう。投資の世界はしょせん弱肉強食である。自分が喰われないように必死で研究するしかない。
この日記を書いた一ヶ月後、清原氏は極東貿易の全株をおそらく8月12日あたりに売却していたことがわかった。一番高いときに売り抜けたわけではなかったのである。書いた当時は情報が不足していて憶測でこのコラムを書いてしまい、清原氏の名誉を傷つけたことを深くお詫びするとともに、慌てて飛びついた個人投資家がやっぱり損をしたんだという事実を述べておきたい。それにしても「自分が持ってる」と公開するだけで値上がりするなんてうらやましい。もしもオレが「持ってる」と言えば「うわっ疫病神だ売れ!」と売りが殺到して暴落したりして。
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