2004年03月27日(土) |
回転ドアに挟まれて失われた命 |
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春休み中である3月26日、六本木ヒルズの森タワー2階正面出入り口で6歳の子どもが電動式自動回転ドアに頭部を挟まれるという事故が起きた。一緒にいた母親や周囲の通行人らに助け出され近くの病院に運ばれたが、すでに子どもの意識はなく、約2時間後に死亡した。あと数日で小学校の入学式だった子どもの命が、突如失われてしまったのである。
事故が起きたのは、森タワー正面に3基並ぶ回転ドアのうちもっとも大きい中央の回転ドア。4枚のガラスドアが、反時計回りに回転し続ける仕組みである。そのうち1枚が閉まりかけた際に頭がガラスドアと外壁部の間に挟まれたという。母親は子どもと手をつないで回転ドアに入ろうとしたが、子どもが走り出し、閉まりかけたドアに駆け込んだという。警視庁捜査1課は業務上過失致死事件とみて麻布署に捜査本部を設置、メーカーやビル関係者から詳しく事情を聞いている。
回転ドアには人がドアと外壁に挟まれそうになった場合、センサーが感知してドアが緊急停止する「挟まれ防止機能」がついていた。しっかり手をつないでいた母親は、まさか子どもが急に走り出すとは思いもよらなかっただろう。もしもオレがこのときの親の立場だったとしたら、不可抗力ではあってもどうしようもなく悔悟の念にさいなまれるだろう。なぜ手を離してしまったのかと自分を責めてしまうに違いない。しかしこれは不幸な事故であって、回転扉の欠陥でも親の過失でもない。子どもは時に思いもよらない行動を取るものである。おそらく母親よりも先にドアに駆け込んで見せたかったのだろう。
しまりかけた電車の扉に子どもが頭を突きだせば、挟まれて同様の事故が起きる。エスカレーターの降り口を赤ちゃんが指で触れたらたちまち指は吸い込まれてちぎれる。しまりかけた自動ドアに頭からダイビングすれば頭部を挟まれるかも知れない。街には危険な場所がいくらでもあるのだ。家の中でもドアに指を挟んだり階段から転落したりするのだから。
六本木ヒルズの回転扉では子どもが挟まれる事故が過去に32件起きていたという。子どもだけではなく大人が胴体を挟まれるアクシデントも起きていた。それらの事故の原因は基本的には利用者の不注意である。しかし、もしもこれがアメリカで起きていた事故なら、巨額の賠償をぼったくるために全米のハイエナ弁護士どもが遺族のもとに殺到していただろう。今回の事故でただ一つ救いだったのは、記者会見に応じた森ビルの関係者が沈鬱な表情で誠意をもって対応すると答えていたことだった。事故が再び起きないことを、そして犠牲となった子どもの冥福を祈りたい。
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