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| 2005年11月19日(土) ■ |
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| 旅の思い出 北海道・函館 |
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昨年秋の初め、北海道をまわった。昨日の日記で、「旅番組みたいにきれいなものじゃない」などと書いた私だけど、旅の序盤の函館で、“旅番組みたいな”経験をした。
旅4日目。それまでは移動が多く、心をグッと動かす出来事に出会っていなかった。こんな感じでなんとなく10数日間が過ぎて行くのかなー。そんな思いが漠然と脳裏によぎっていた。
この日は函館大有斗高校を見に行こうと、路面電車に乗った。車両に女性のガイドさんらしき人がいたので、道を聞いて、最寄り駅と言われた場所で降りた。ところが、行けども行けども、学校は見えない。どうやら間違えて教えられたようだ。ついてない。もう一度電車に乗り直すのも癪だし、ヤケになって歩き始めた。
すると、軒先に洗濯干しにイカが干してある魚屋さんを見つけた。丸形で洗濯ばさみが付いていて、そこに開いたイカが挟んであった。まるで子供の靴下を干してあるようなその様に、町の日常を見た気がして思わず、シャッターを押した。すると、ひょっこりと店主らしきおじさんが顔を見せた。「イカってこうやって干すんですか?」と聞いた。おじさんは、「今朝摂れたばかりのヤツだよ」と言った。そして、何がどうなったか知らないけど、店の中に案内された。
近所に住む人を対象にしたこじんまりとした小さい店内で、床はアスファルト。濡れていて、ほんのり生魚のにおいが残っていた。壁には古いポスター、有線からは演歌。店内にはテーブルがおいてあり、隣の果物屋のおじさんや野村サッチー似のおばさんがくつろいでいた。こういう光景が常で、ちょっとしたたまり場になっているという。店は私を中に入れてくれたおじさん夫婦が切り盛りしている。二人とも人なつこい取っつきやすい顔つきをしていた。落ち着いたとき、おじさんは私に「姉ちゃん、産地はどこや?」と聞いてきた。すると、おばさんが「産地って、アンタ。魚じゃないんだからー!」と陽気に笑っておじさんの肩をパーンと叩いた。おじさんはちょっと天然入っていて、2人の会話はまるで掛け合い漫才のようだった。近所の人が集まるのも分かる気がした。
ここで、今朝獲れたばかりというイカを刺身でよばれることになった。1杯(イカを数える単位はこれでOK?)300円で、ご飯・お茶・しょうゆ・イカみそ(刺身しょうゆに入れると大人の味。私はミソ系が好かなくて食わず嫌いだったけど、コレはいけた)付き。テーブルクロスも古く、昭和の家庭の台所を思い起こした。お昼前の買い物には早い時間。店内に買い物客はおらず、みなで世間話。私は北海道を一人で回っていることを知ると、おじさんは「そりゃ、気楽でいいや。ハハハ」と笑った。野村サッチー似は、「函館に来たら、夜景見なきゃ嘘よ」と言った。イカはとにかくおいしかった。新鮮なイカは色がなかった。忘れられない味になった。それは、店の雰囲気や私に接してくれた店の人や近所の人たちの心地よい空気を含めて味わったからだと思う。
お昼前にお礼を言っておいとました。北海道の旅はこの出来事をきっかけに好転した。続きはまた後日に。
実はこの日、台風の話をしていた。「遠い昔に大きい台風があったけど、今はそんなに…」と言っていたおじさん。この数日後、北海道を大きな台風が襲った。おじさんも、おばさんも、お店も無事でいてくれたらいいのだけど。
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