|
|
2001年03月01日(木) ■ |
|
大きなところで |
|
「バントで右に転がせと言われて、左に転がしてしまったら、即ビンタ」。 石垣島から来たという新入部員のお父さんに、「息子さんがいたチームはどんなチームだったんですか?」と質問をしたとき、そんな答えが返ってきた。
それは、沖縄の高校のグラウンドへ行ったときのこと。その日は、入部式。学ラン姿に、まだ刈られていない頭の新入部員たちは、保護者からもらったサーターアンダーキーとスポーツ飲料を手に、グラウンドで汗を流す先輩たちを見ていた。
「そこに座っているのがせがれです」。お父さんは私のすぐ隣のベンチに腰掛けている学ランの少年を指さした。神妙な顔をして先輩の練習を見ていた彼の顔はまだあどけなく、そんな厳しい環境をくぐり抜けて来たとは思えなかった。「だから、寮生活も心配してません」、彼の父親はそう言った。強豪校であるその高校の寮生活の厳しさは有名だ。
野暮だとは思ったが、何故この高校を選んだのか聞いてきた。「先輩がいるっていうのもあるけどね。大きなところでやりたかったんじゃない?」
大きなところで、か。 “強いところで”でも、“甲子園に出れそうなところで”でもなく。 離島で暮らしているからこそ出てくる言葉だなと思った。私たちではとても無理だ。
|
|