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2001年02月10日(土) ■ |
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東山高校硬式野球部関連コラム「若管くんの打球」 |
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打球は一直線にレフトスタンドへ向かった。一応固唾を飲んで見守ってはみたが、フェンスを越えることはわかりきっていた。
案の定、審判の手がぐるぐる回った。4−5。これで1点差だ。 バッターの名前は、若管裕樹という。背番号「5」をつけてはいたが、実質的には代打の切り札。小柄ながら、下半身がどっしりした、一目で「わ、当たったら、飛びそう」という印象を抱かしてしまう選手だ。ずっとレギュラーだったが、春を過ぎたあたりから出番が減っていた。その悔しさを晴らすかのような思い切ったバッティングだった。
もちろん、まぐれなんかじゃない。練習試合でもチャンスには必ず1本打っていた。私もその勝負強さにはいつも惚れ惚れしていたし、それより何より、あの打球の力強さが好きだった。ボールがあたかも自分の意志で飛んでいるかのようにまっすぐな軌道を描く。ああ、打球って一種の芸術なんだなとしみじみ思ったりした。
結局、試合は負けた。「みんながつないでくれる」(翌日の京都新聞に載った本人のコメントより)と信じていた彼は、最後の瞬間をどういう思いで迎えたのだろう。ここで姿を消すには、あまりにももったいない選手だと思った。
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