永久という名の瞬間
2004年06月12日(土) マタイ受難曲

 授業にて、バッハのマタイ受難曲の講義を聴く。
 久しぶりに聞いて。久しぶりに鳥肌が立つ。
 最高の一曲。


    来たれ、汝ら娘たち、着たりてともに嘆かん。
    見よ

     誰を?
    花婿キリストを

    見よ

     いかに?
    子羊のごときを。

    見よ

     何を?
    かの屈辱を。

    見よ

     いずこを?
      いずこを?
       いずこを?

    我らの罪を。


 「いずこを?」と3回繰り返し、(ドイツ語で"Wohin"ヴォヒンと発音し、軽やかに周りを見回す人の頭を想像させる)目を外へと向ける。
 そしてその直後、「われらの罪を」と、その視点を己へと導く。
 このような第一合唱と第二合唱の掛け合いの上から、天からの声のように、コラールが降り注ぐ。
 低音では止まることなく、キリストが脚を引きずりながら、ゴルゴダを登る足音が響いている。
 この描写は胸を打つ。


 受難曲全体のうちのほんの一瞬、ほんの数分の曲の間でさえ。
 人間が、詰まってる。

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photo by 東雲