Desert Beyond
ひさ



 雪解けの頃

思うがままに眠る。
いつまでも眠り続けてしまおうかとも思ったが
そうはいかない事情もあり渋々起きたわけだ。

洗濯をする。
昨日の雷雨のせいか空は際限なく澄み切って
その青が眩しいほどだ。
雲は夏がくるのだぞと主張しているような白。
空気は夏の高原のように涼しい。

アルバイト。
またわざと道後公園を抜けて行った。
今日はウルトラマンのコスチュームに包まれた男はいなかった。
しかし先週と変わらず賑やかな午後の公園。
ご老人はベンチに座り眩しそうに広場を眺める。
繋がれた犬にちょっかいを出す子供ら。
青い空。

帰り、まっすぐ行くと道後温泉本館というところ。
手前で左に折れて路地に入る。
前にも言ったが僕は路地マニアだ。
路地に入るとうきうきしてしまう。
この短い路地はかなりおすすめの路地だ。
向こうは西。
傾いた太陽がアスファルトに反射して眩しい。
温泉商店街を横切る人々はシルエット。

スーパーで豆腐と伊予地鶏のたたき(198円)を買った。
大学で冷蔵庫のトマトをくし形に切って
水をきった豆腐も切って
伊予地鶏を盛り付けて刻みねぎを散らして
ポン酢を少量かけてから昨日買ってみた
豆腐用の黒ゴマだれをかけてみた。
黒ゴマのたれをかけた瞬間一気に見映えが悪くなった。
なんともまずそうだw
しかし味はまあまあだった。。。

夕暮れ。寂寥。

 先日のことである。蛍光X線分析室の引越しがあり手伝っている途中、校舎から出たところを歩いて総合棟に向かっていると、同じ研究室の友達がペンチを片手に歩いていた。怪しいお友達もいたものだなと思い、一体何をしているのかと訊ねると自転車のカギをなくしたのでこれで壊すのだとペンチを掲げて笑った。やれやれ自転車のカギをなくしちゃう大人にはなりたくないものだなぁなどと思っていたものである。そして今日、自転車のカギを失くした僕はペンチで自分の自転車のロックを壊した・・・。大人になっても自転車のカギを失くすときは失くすのだ。

珈琲を飲んだ。

ハナレグミのhana-utaてアルバムがある。
「そして僕は途方に暮れる 〜Live at 東京キネマクラブ 2003.2.23〜」
晩秋なんかに聴いたら哀しすぎるけど好きだ。
同じアルバム、半野善弘の「夢の匂い feat. ハナレグミ」
不意にサビを唄っていることがある。

僕は大学の4回生部屋にいる。
もう夜中の零時を回った。
この部屋は理学部本館の4階にある。
眺めは良い。
左前にあるレンガ色のアパートの4階には男が住んでいる。
よく友達が来る家でよく飲み会をしているようだ。
テラスはゴミ袋だらけになっているので
僕ら4回生はゴミの家と読んでいる。
たまにトランクスだけでテラスに出てくることがあるので
パンツのやつ、とも呼ばれている。
たまに僕らと目が合う。
正面の遠い向こうには横長のマンションがある。
昼間、光の眩しい午後などは
白い布団が揺れているのが見える。
その向こうには縦長の高層マンションがある。
それぞれの部屋の明かりのつき方で
そのマンションの夜のデザインは決まる。
右手のアパートの4階はまた変なやつが住んでいる。
僕らからは、Tシャツの家、と呼ばれたりする。
長細く広いテラスにその人はTシャツを並べて干す。
色とりどりのTシャツだ。
晴れている日などはとても綺麗だ。
カラフルというのはあの家のテラスの事だと思う。
変なのはその住人は何度もTシャツを触ったり
位置をずらしてみたり、
と異常なまでに干し位置を気にする事だ。
しわを伸ばすとか日当たりがどうとか
そういう問題ではなく明らかに過剰に気にしているふうだ。
そしてTシャツの家と真正面の高層マンションの
ちょうど間あたりにあるアパートの3階の人は
たまにビリーズブートキャンプをしている。
きっと向こうもこちらを見てなにか言っているんだろうな。
この部屋にはカーテンがない。網戸もない。
窓は開けっ放しなので夜は外から見放題なのだ。
それでも誰も気にしない。
僕も気にしない。


明日から13日まで北海道に行って参ります。

2007年06月09日(土)
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