Desert Beyond
ひさ



 温室の蜂

今学期は何度も何度も松山の南方へ足を伸ばし
ハンマーをもって完全防備で山を登って谷を抜けた。
データのまとめと発表準備もがんばって行ったので
僕らは最優秀賞の栄誉に輝いた。
がんばった甲斐があったというもの。

ラスト・ワルツという小説を一気に読んだ。
少しだけ村上春樹と似ているけれど
読んでいて不安になって非常にもどかしかった。
読み終わった後もそのもどかしさは僕の心を捉えて
複雑で中途半端な気分にさせられた。
良いところもあったけど
個人的には読まない方が良かったのかもしれない。

今日は以前手伝っていたシダ植物の温室内に
直射日光を防ぐ黒い網を張る作業を手伝った。
張るにあたってそこまで広くない温室内に
あしなが蜂の巣がそこここに5つもあることがわかって
蜂用殺虫剤で殺してしまうことになった。

子供の頃、蜂の巣を水と棒でなんとかしようと
孤軍奮闘で退治していて
蜂の巣が壊滅状態になったとき
ふと見るとコンクリートの上に息絶え絶えの蜂がいた。
僕はなぜか、土の上で死ねない蜂に同情して
その蜂をすぐそばの土の上に置いてやろうと思った。
羽を持って動かすそのときに蜂のお尻から針がでて
小さい僕は蜂に刺された。

一生懸命温室に巣を作っていた蜂たちは
みんな死んでしまった。
ずいぶんとむごい話だな、と思った。
あのまま作業したら確実に刺されていただろうけど。

図書館は独特のにおいがする。
古い紙のにおい。
ずいぶんと落ち着く。
パソコンのキーボードを打つぱたぱたぱたという音と
本の頁をめくる音だけが聴こえる。

2006年07月11日(火)
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