Desert Beyond
ひさ



 傘がない

今日は朝からお昼過ぎまでしとしと雨。
授業が終わって先生に質問しに行って
次の授業までの50分間何をしようかと思ってふと見ると
傘立てに僕の透明傘はなかった。
外はまだ雨がしとしと降っていて
歩いたら5分くらいの距離にある次の授業の建物まで
傘なしで歩いて行くのかと思うと気が滅入った。
自分の所有しているものが盗まれたという事実よりも
こんな雨の日に、傘を持ってきた人が雨に濡れるのを承知で
自分のためだけに人の傘を平気でとってしまうような人の
なんというか、毒気みたいなのにさらされて
薄暗い理学部の建物のベンチで一人途方に暮れた。

しばらくベンチでぼおっとしていると
先ほど同じクラスだった男の子3人が
弁当と傘を持って階段を上がってくる。
一人が透明傘を持っていたのを見て
反射的に疑ってしまった自分をひどく恥じた。

昼過ぎの授業が終わると雨はやんでいた。
傘をとった人はめんどうくさくなって
傘をどこかに捨ててしまうのかな、と思った。

学校から家までだいたい20分弱
自転車をゆるめにこいで帰る。
行きと違って帰りは海側に向かう格好なので
気づかないくらいのくだり傾斜になっているから
がんばってこがなくてもいいんだ。
行き帰り、意識しなくても何かの曲が浮かんできて
20分弱ずっとその曲を軽くうたったり
口笛吹いたりハンドルを握る指でリズムを取ったりしている。
今日の帰りに浮かんできた曲は
キリンジの「雨をみくびるな」。



2005年06月02日(木)
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