Desert Beyond
ひさ



 何とない日

今日は何とない日。
風がとても強くて砂っぽい。
そのうち曇ってしまって、
夕焼けもなしになーんとなく日が落ちて
このまま何となく日が過ぎるのだろう。
ユックリとして、本でも読んで
夜が少し更けはじめたら勉強でもしようと思う。

小さな頃、ファミリー牧場チックな所に家族で行った。
僕はひとりで牛の乳絞りの実演を見ていたのだけど、
実演が終わるとお兄さんは、
「じゃあ今度はみんなに手伝ってもらおう!やりたい人ー?」
とよく響く声で言った。
その場にいた多くの子供は勢いよく手を挙げたのだけど
僕はどうしてよいのかわからなくて手を挙げられないでいた。
お兄さんは「じゃあきみ!」と手を挙げている子供じゃなく
手を挙げられないでいる僕を指差したのだ。
自分が初めに選ばれた事によって
僕は何だか申し訳ないような気分になってしまった。
でも嫌だった訳じゃなく、初めての牛の乳搾りを
みんなの見ている前で照れながらした事を憶えている。

じゃんけんで勝った人が何かもらえたりする時だって
実際僕は心の中で「負けてしまいたい」と思ったりする。
もし勝ってしまった時、何だか申し訳ない気がするのだ。
そういうのが今の僕の中にもある。
僕の一面。

今日は月が出るのか。
いつも快晴なこの街で星空が見えない事は滅多にない。
今まで特に気にする事がなかった月影を今日見たい。






2001年11月04日(日)
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