::金糸と翡翠色(FF6) 2002年07月15日(月)

「追え!逃がすな!!」
「応援を呼んでこい!あの茂みに入ったぞ!!」




「捕まって、たまるかってんだ・・・!!」


息を切らしながら、巧みに追っ手を振りきっていく。
ここ、ベクタの城内に潜り込んで
皇帝か、進駐しにきた将軍をこの手で殺してやろうと。
いささか考えの甘いことだったと、今になっては分かり切っていることだが
あの時は、そんなこと考える余裕もなく
もう全てが憎く
止まらなかった。


この恨みを晴らすまでは

自分の手で晴らすまでは

死ねなかった


「ちっくしょー!!」


まわりの兵士の数が増えている。
交わすことさえ困難になってきた。


「今殺されて・・・たまるか・・・!!」


茂みに飛び込んで、追っ手の目から一時的に逃れることに成功したことを確認する。
気配を殺して追っ手がここの裏を通り過ぎるのを待ち、肩で息をしながらのろのろと立ち上がった。
どこから逃げればいいだろう。
ここからどうやって出よう。
どこから出よう。
どこか、出れるところはあるのか?
ここから、無事に出れるところはあるのか?


生きて、外に出られるのか?


「・・・クソッ!!」


もうすぐ日が沈む。


「レイチェル・・・。」






「誰だ?」

幼い、少女の声がした。

「そこにいるのは何者だ?」

凛としていて、高貴な雰囲気を醸し出している。
顔を上げると、そこにはまだ12、13くらいの少女が立っていた。
美しい金糸の髪を持ち、翡翠色の大きな瞳。


似ている


誰に?


「・・・トレジャーハンター。」
「宝を盗みにきたのか?」
「違う。」
「じゃあ何故ここに来た?」


「コーリンゲンを進駐した将軍と皇帝を殺しに。」


もうどうでもよくなっていた。
日が暮れ、ここから無事に出れたとしても
迎えてくれる者はどこにもいない。
「おかえり」と言ってくれる人は、だれもいない。


「そうか。」


だが少女はそれだけ言って、眉一つ動かさなかった。


「殺さないのか?」


殺さないでくれと言うつもりはないが。
この少女は何者なのか。


「殺してどうする?」


表情一つ変えず、少女は答える。


「殺して欲しいのか?」


何も言うことができなかった。
生きながらえたいとも、思わなかったから。




「・・・お相手願おう。」
「は?」
「その腰にある短剣は、飾りではなかろう?」
「・・・ああ。」
「勝負だ。殺すとか殺さないとかは考えずに、純粋な勝負だ。」

少女の腰にあるものは二つ。
片手剣と短剣。
そのうちの前者を外して、地面に放り投げた。

「これで同じだ。」
「お前・・・剣を使えるのか?」
「使えずにここにいることはない。」

とまどい気味に短剣を鞘から抜き取った。

「お前は何者だよ。」
「私は・・・」


ふう、と息を吐き、


「帝国の将軍。コーリンゲンを進駐したのは私。」


それを聞いたとたん、思考は止まった。



「うぉぉぉぉおおお!!!」

何も考えずに飛び込んだ。
憎悪だけをむき出しにして。


この少女が村を、彼女を殺した。


それだけ


「・・・甘い。」

いとも軽くあしらった。
刃が音を立ててぶつかる。

「もっと冷静にならねば、私にうち勝てない。
 今のお前では私に勝てない。」
「・・・うるせぇえ!!」

自分よりも背の低いその少女に短剣を振りかざす。

「馬鹿・・・」

さらに大きな音をたてて刃はぶつかり、

「うぁあ!!」

投げ飛ばされた。


地面に背をしたにして落とされた。

「・・ってえ・・・」
「わかったか。その程度では、皇帝を殺すどころか私すら殺すことはできないぞ。」
「うるせぇよ・・・人を・・・人を虫けらみたいにしか思っていないお前らに・・・んなこと言われたかねぇ!
 お前らは人形じゃねぇか!
 皇帝の命令しか聞かない、人形じゃねぇかよ!!!」



「・・・そうかもな。」



「!!」

怒って、自分を殺すだろうと思ったのに。
こんなにあっさりと認めてしまうなんて。

そして・・・

「んな顔、しないでくれよ・・・。」


似ているのは


「そんな顔われたら・・・」


「・・・隠れろ。」
「え?」
「カッパー!!」
「!!?」






「そこにいたな!!覚悟し・・・!!?」
「何用だ?」
「し、将軍!!
 失礼しました!!
 先ほど妙な男が侵入したんで、何用だと聞いたところ皇帝はどこだと聞いてきたため、
 これは怪しいとケフカ様の元へ連れていこうとしましたところ逃げられまして・・・
 将軍はごらんになられませんでしたか?」
「青いバンダナをまいた男・・・か?」
「はい、そうです。」
「その男なら・・・あちらへ駆けていったぞ。」
「真ですか!ありがとうございます!!
 みんな、あっちだ!
 では御前失礼します。」


・・・・・


「いいかげん元にもどしてくれ・・・。」
「ああ、すまなかったな。カッパー。」

腕に抱いていた緑色の生物を降ろし、呪文をかけた。
するとするとそれは煙とともに、一人の男の姿へと変わった。

「何故助けた?」
「・・・・・。」

片手剣を腰に納め、何も答えずに人差し指を西の方へ向けた。

「は?」
「こちらへまっすぐ行ったところに西門がある。
 そこは普段使われておらず、警備も手薄だ。
 そこから出るといい。」
「あ、ああ・・・。」
「それから、今度またここへ来る時は一人で来るな。
 強い仲間をたくさん連れてくるがいい。
 志をともにした仲間を。
 ここは、そういうのには弱いからな・・・。
 そうすれば、お前の意は叶うかもしれないぞ。」

「おい・・・。」
「早く行け。あの兵士達が戻って来るぞ。」
「お前、本当に村を進駐した将軍なのか?」
「・・・・・。」

一陣の風が吹いた。
少女の金糸を揺らす。
その奥には、優しく寂しく光る翡翠。

「また会う日を楽しみにしていよう。
 じゃあな。」
「おい!」

振り返ることなく彼女は去っていった。






「コーリンゲンを進駐したのは、ケフカだったんだってな。」
「?そうだが、いきなりどうした?」

サウスフィガロの地下道で、呟く。

「覚えてないんなら・・・いいさ。」
「??」

俺は、覚えてたんだけどな。
なめらかな金糸と翡翠色。
一目ですぐわかったのに。
君には、もしかしてああいうことは日常茶飯事だったのかもしれない。


「おかしな奴だ。」


君はあの時から、帝国のやることに疑問を持っていたのだろう。
そして、いつも罪にさいなまれながら、生きてきたのか?


俺が守ってあげる。
俺が守ってあげるから。
今の俺があるのは、なにもかも君のおかげなのだから。


君が心の底から幸せに笑う顔を、見てみたいから。




光の道へ







::BACK     ::INDEX     ::NEXT


My追加


     
::HOME ::MAIL