::ストロベリー(フルーツバスケット) 2002年07月03日(水)

「うわぁ・・・!」


大きな瞳を輝かせて、次々と置かれていくその皿の上にのるモノをみつめた。


「喜んでいただけてうれしいです!」
「杞紗は、苺が好きなんだね。」
「うん・・・!」


今日は土曜日。
杞紗が泊まりに来るのだと、本田さんが嬉しそうに話していたから。
ついてきてしまった。
もちろん日帰りだけど。


最近会うことも話す機会もなかったから、
どうしてるかな?とか思ってたけど。
けど、それほど心配なさげだし。


「大きいな・・・」


思わず笑みがこみあげてきて、


「春?」
「イヤ、何でも。」


だって、本当に嬉しそうだったから・・・


「あ!お湯が沸いたみたいですね!
 紅茶を入れてきます!」
「本田さん、俺も手伝うよ。」
「あ・・・はい、お願いします!
 撥春さん、杞紗さん、ちょっと待っててくださいね!」


うん、とだけ答えて、相変わらず目をそれからそらさない。
いつになったら放すのかな、とか
由希はいつになったら名前で呼べるようになるのかな、とか思いつつ、
しばらく見つめていた。
彼女を。


「学校、うまくいってるか?」


本田さんみたく、気付いてやれるほど頭良くないから。


「うん・・・」


そのままの目線で、ただ少しだけ顔を傾けて
まだ開花したばかりのたどたどしい口調で、言葉で


「がんばってる・・・。
 いきなり、変われるわけじゃないけど・・・
 少しずつ、少しずつ・・・
 わかってくれたらなって・・・。
 いつか、お兄ちゃんやお姉ちゃんみたいに、優しい人が・・・
 それで、私もなれたらって・・・


 優しくって、暖かくって、おっきくて・・・
 そんな人になりたいから、
 だから、諦めないでがんばれるの・・・!」


まだまだ小さい芽だけれど、
いろいろな障害に悩まされ、また誰かに助けられながら
大きくなっていく。
そして、自分の力で熟すんだ。
赤く赤く
甘く優しいイチゴのように。


思っていたほど弱くない。
成長しているんだ、確実に。


これも、彼女のおかげ・・・か。


心配ばかりしていたら、失礼だし。



フォークでそれをプスッとさして、彼女に向ける。
驚いてこちらを見た。


「あーん。」
「え・・・?」
「ご褒美。」


一度大きな瞳を瞬かせ、そして嬉しそうに笑った。










「お待たせしまし・・・撥春さん!?
 イチゴがなくなってしまっています!!
 よもや、また私の不注意で・・・!!?」
「食べたの、春?」
「んー・・・?」


例によって例のごとく、慌てふためく本田さんと、
ティーカップの並んだおぼんをテーブルに置き、冷静に尋ねる由希。


「あ、あの・・・」



「妖精に食べられちゃったみたい・・・ミステリー・・・。」





「・・・あ、そう・・・。」
「妖精さん・・・ですか?」


いつものノリを発揮する二人と俺を交互に見、彼女は笑った。




いつだって見ていたい、君の笑顔。
願わくば、ずっとこの先失くなってしまわぬよう。
決して。



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