-------------会いに来ちゃった! だって、みんな私のこと忘れてるんだもん!-------------------
携帯の目覚まし時計に意識を呼び起こされた。 原曲よりも半オクターブほど高めに演奏される着メロに、日々頭を悩まされる。 かといっても、これが私にとっての一番の目覚ましなんだから。 人よりも多少は音感があるであろう私の耳にとって、何よりも不快なものであろう。
その日見た夢なんて、その起きた瞬間に大抵は忘れてしまうものだ。 だいたい覚えていたとしても、そのあり得ない構成を笑うぐらいなのだ。 いつもいつも。 その繰り返しだった。
------------だって、みんな私を忘れてるんだもん!---------------
ドキリとした。 思わず肩が震えた。 はっきり覚えている、このフレーズ。 そして、
------------なんだ、それでここにいるのかー!---------------
そう笑顔で答えていた自分のことも、まるでこの目で見たかのように覚えていて。 現実では、到底口には出来ない言葉を。 笑顔で。 周りにいた友達も、みんな笑顔で。
-------------また一緒に遊べるんだね!---------------
違う。 違うんだよ。 それは夢。 夢なんだ。
だけど
夢でもない。
彼女なんだ。 あれは、確かに彼女なんだ。 確かに彼女だったんだ。
-------------ダッテ、ミンナワタシノコトワスレテルンダモン-------------
本当に。 本当だね。 私達 あまりにも毎日が忙しくて それはたいして充実してたりもしてなくて ただ、がむしゃらにやっているだけで
忘れてしまっていた、感情、ゆとり、優しさ。
今、私達は岐路に立っていて でも、それは決して自分一人の力でそこまで来たわけでもなく だけど、あたかもそうであるかのように振る舞って
傷つけてしまう。
それじゃダメなのに。 忘れちゃいけないのに、いつだって。
今の私を支えてくれているのはダレ?
忘れないで。 覚えていなきゃ。 私達は。 独りじゃない!
忘れたくないよ。 忘れない。 キミも、一緒に成長していくんだ。 優しい花を咲かせて 可愛らしい実を結んで ずっと、ずっと。
だってキミは、私達の友達だもの! 今はどんなに遠く離れていても、また会える。
その時キミは、変わらない笑顔で笑いかけてくれる?
目を開けて、布団から出て、掛けてある制服をもぎ取って。
寝起きの手で上手くボタンを付けれなかったりもするけれど。
ネクタイをピシッと締めて。
カバンをとって。
「・・・おはよう!」
部屋を出た。
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