女房様とお呼びっ!
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2002年03月25日(月) 春は幻 〜98.04.11記す〜

旧い記録から、桜についての走り書きを発見。
やっぱり、今年は異常だわ・・・嘆くような心持ちになりつつ、以下に晒します。

***

花の命は短くて。
お花見が出来るのも、東京では、今日明日位までとなりました。
今年は、どこかへお出掛けになりましたか?
どうも、お花見というのは、花を愛でると言うよりも、花は言い訳で、
つまりは、飲めや歌えの大騒ぎをしたいだけなのかもしれませんが、
それはそれで良いことにしときましょう。


そうは言っても、
年に一度きり、たった十日程の桜の季節は心が騒ぎます。

もう、無理矢理に
時の流れを見せつけられているようで、
蕾が綻び始めた途端に、急かされるような気になってしまいます。

まるで、早回しの映像を見てるみたいに、
あっという間に樹全体を覆い尽くす桜色が、
脅しをかけるように迫って来て、いよいよ気持ちが焦ります。
電車の窓から眺める景色に、桜の木々を認めては、
その木のふもとに立つ自分に憧れて、
「まだ大丈夫だよね」なんて独り言に確かめたりして。


それでも、
桜の刻む春の時間は、残酷な程早く過ぎていくのです。


人は、普段と変わりない時間の中に身を置きながら、
花の身の上が気掛かりでしようがない。

花冷えの日には、
これで暫く保つかしら?と希望を繋いだり、
風が吹くたび、雨が降るたび、
これで散ってしまうのではないかと気もそぞろになって、
空模様を恨みます。

日毎に暖かさを増す日差しにさえも、
もう、これで一気に咲いてしまうのねと、
嫁入り支度を整える娘を見ている親のような、
淋しい気持ちに苛まれたりします。

その頃になると、
空に映る桜の色も次第に白く霞むようになってきて、
ゆっくりと、囁くように、地面に向かって一片ずつ、その身を舞わせて、
季節の終わりを告げ始めます。
やがて、
来たるべき風の中、
まさに吹雪のように激しく散っていくのです。


「さようなら」
と声を限りに叫ぶような、

「忘れないでね」
と千切れるほどに手を振るような、


僅かな逢瀬を惜しみながら、そうして終わってしまいます。
足許にびっしりと散り積もった名残の花弁に、
切なくやるせない想いが胸にこみ上げてきます。


春は幻。
そんなメランコリックなこの頃です。


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