女房様とお呼びっ!
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2001年05月29日(火) 無知なオンナ

ずっと以前、SMに出会う前、大好きな男がいた。会えばセックスをした。
体の相性も良く、互いの魂が調和して号泣してしまうセックスは、彼と果たした。
毎日電話をし、三日に空けず会った。忙しくても体調が悪くても会いたかった。

仕事でストレスを抱えがちだった私は、よく便秘をした。その日もそうだった。
私の体を気遣ってくれた男は、その日ホテルに入る前に独りで薬局へ立ち寄った。
何を買ったの?と訊くと、イチジク浣腸だよと言った。「ウンコ出さなくちゃ」
私は少し驚いたけれど、彼の優しさが嬉しかった。そうね、出した方がいいよね。
服を脱ぎ、言われるままに四つん這いになった。既に恥ずかしくもない姿勢だ。
「浣腸なんて子供の時以来だぁ」童心に帰ったようなあどけない気持ちになった。
浣腸を施されて、大騒ぎしながら腹痛を堪え、排泄した。気持ちよかった。

後日また便秘になった。男にそう告げると、彼は洗面器に石鹸水を作り始めた。
「こっちの方が体にいいんだ」そう説明しながら、ポンプ式の浣腸器を取り出す。
湯船の端に手を掛けて、尻を突き出せと言われた。肩越しに男の手元が見える。
暖かい湯が腹の中に送り込まれる。浴室が石鹸の香りに満ち、とてもいい気分だ。
数分の後便意を訴える私に、男は暫くの我慢を命じ、お喋りをして気を紛らわした。
「もう出すぅ」男に告げ、便器にしゃがむ。「もうちょい我慢、我慢」男が笑う。
「だめだよぅ」甘えるようにだだをこね、遂に男の目の前で、私は排泄を始める。
「いっぱい出るねぇ」これは私の言葉。気持ち良くて、ニコニコ笑ってしまった。

男が折々に持ち込むセックスギアを、私は驚きながらも、心地よく受け入れた。
小型ローター、バイブレーター、アナルビーズ、先のエネマシリンジもそうだ。
自分があんまり気持ち良いものだから、男にもその快感を味わって欲しくって
ローターやビーズを手に迫ったりもした。嫌がりながら受け入れる男だった。

男と別れ、それらの道具をすっかりと捨て、再びしたいとも思わなかったのだが、
やがて私は「犬」と出会い、「犬」の所蔵するマニアックなSM本を読むうちに、
かつての懐かしい道具に再会した。男との行為が急に意味を帯び、戸惑ってしまう。

一体、彼は何をしたかったのだろう?どこを目指していたのだろう?
アナルマニアだったのかしら?スカトロに興味があったのかな?それともSMか?
もちろん、ただのスケベな好奇心だけが動機だったのかもしれない。わからない。
だけど、無知な私は起きていることが全てで、単純に行為を楽しんでいた。

やがてこれまで性的に関わった男達が私に望んだ行為の数々の謎が解けていく。
「顔の上に座ってみて」「顔を踏んでみて」「オナニーするとこ見て」・・・
「おしっこ飲ませて」「キミの下着穿かせて」「キミの唾、飲ませて」・・・
色々な男がいた。その度にわくわくしながら要求に応え、男達の反応を楽しんだ。
誰もSMの「エ」の字も告げなかった。言われてたら構えてた筈だ。ヨカッタ。

無知は偉大だ。


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