2023年09月17日(日) |
奈良県U‐16選手権決勝 奈良クラブ−奈良育英 |
県協会主催の2種の大会は一般に高体連の大会で総体・選手権に加え、多くの場合は冬場に新人戦、といったところである。大阪府などは私学大会や公立大会もあるが、これはいわゆるフェスに近く、協会は直接管轄していない。で、奈良県の場合は夏場にU16大会、要するに1年生大会を開催しているのだが、この大会にはクラブチームが参加できる。1年生だけでチームを組まなければならないため、3学年で50人など、部員数が多いチームしかエントリーできないが、とにかく今後の県内の趨勢をうかがう上で重要な大会の決勝に県内随一の強豪校の奈良育英と新興のクラブチームとはいえ、Jリーグのアカデミーの奈良クラブが勝ち上がり、これは観なければ、と思った。フットオールセンター18時キックオフ。ナイトマッチ開催可能な会場である。
少し離れた土手の上からなので体格は分からないし、声もあまり聞こえない環境で、しかも奈良育英の番号は三桁だったりするので、判別を断念した。
奈良県U‐16選手権決勝 奈良クラブユース−奈良育英高校 9月17日 奈良県フットボールセンターBピッチ 18時 晴 人工芝
奈良クラブ 三二二九三六 二八三三 二四 二二二一四番三五
キーパーのメモ忘れました。奈良クラブはトップと同じ4−3−3。明確に1ボランチの3トップである。
さて開始早々右ウイング36番(タケル)が快速ということが分かる。彼を活かすため右インテリオール33番は離れてスペースを空け、36番がDFと1対1になるようにしている。奈良育英は立ち上がり激しくプレッシャーをかけ、繋ごうとする奈良クラブのミスを誘う。さらに奈良クラブDF陣は身体の入れ方が甘く、競り負けたり、身体をねじ入れられて入れ替わられる。しかしきっちりシュートコースに入りブロックして、そして36番が右突破からクロスにセンターフォワード29番(トモヤ)がヘッドで奈良クラブが1−0と先制した。さらにパスに左ウイング32番が裏を取るが、スピードでそのままガーと行くスピードはなく、止まってパスを出す。この32番は止まった状態からタイミングでタテに抜けるのが得意なプレーで、また28番は32番と連動してカットインが得意で、左ウイング32番と左インテリオール28番は近い距離間でプレーする。32番の左クロスにニアに飛び込んだ29番が決めて奈良クラブ2点目。この時間帯には奈良クラブのバックパスの強さや正確さが際立つ。バックパスはパススピードがあるからリビルドできるのであって、ただスローに戻すだけでは攻撃は加速しない。特にサイドバックから中やキーパーに戻し、逆サイドに振るのが速かった。サイドバックはあまり攻撃参加というかオーバーラップはなく、中に絞ってビルドアップに加わり、サイド攻撃の主役はあくまで両ウイングである。センターバックの体格は分からないが、奈良育英に身体をこじ入れられるのを見るとパワーはないのかな?ボランチ24番は正確に捌き続け、奈良クラブの肝が24番・33番・28番なのは確かだ。30分ハーフの前半は2−0。
後半開始と同時に再び奈良育英が激しくプレッシャーを仕掛ける。まさしく強豪校のやり方だが、いきなり鋭いカウンターを食らい、立ち上がりのプレッシャーは2分も持たずに沈静化する。そして再び奈良クラブのポゼッションが始まり、36番(タケル)の右カットインシュートが決まり3点目。そして後半20分過ぎにペナ内右寄りで29番のヒールでの落としを誰かが決めて4点目。さらに29番が決めてハットトリックの5点目で奈良クラブが5−0で完勝した。今大会初優勝。
まずはっきり言っておかねばならないのは、1年生チームにしては、という注釈が不要なほど奈良クラブのクオリティが高かったということだ。Jリーグのユースというには一般に黎明期は県内で技術のある選手に戦術教育するものだ。関西ではガンバユース一期生もそうだった。ガンバは選手を選べたので最初からパワーがあったが、例えばヴァンラーレ八戸ユースなどでは線の細く身体能力の低いテクニシャンという感じだった。奈良クラブの選手はそこまでパワー不足という感じでもなかったが、やはり身体を入れられていた。が、試合中に適応し、完全に身体を入れて、奈良育英のファウルを誘っていた。で、奈良クラブはトップチームにエコノメソッドというスペインの育成法を取り入れているが、アカデミーこそこのメソッドが重要だ。で、奈良クラブユースはポジショニングにこだわり、バランスを保って戦術眼が高かった。ただしインテリオールがゴール前の飛び出しがほとんどなく、例えば28番は何本かミドルを放ったが、ペナ内への侵入は少なかった。サイドバックは後半オーバーラップを見せたが、基本的にはバランスを保ち続け、つまり「質」は高かったが「量」は足りなかった。クオリティだけではなく、クオンティティも追及してほしい。高体連の強豪校はクオリティはほとんどなくてもクオンティティは抜群だ。ただし1年生チームでこのクオリティなら3年生チームは今の奈良県2部リーグどころかプリンスリーグレベルではないだろうか?
ガンバやセレッソユースが出てきただけでは大阪府高体連は変わらなかった。質の高いチームの台頭はだいぶ遅れた。奈良クラブユースが勝っただけでは奈良県高体連は変わらないだろうが、奈良クラブのトップチームという地元のJクラブの存在を観ることでフットボールへの理解が高まれば、時間がかかっても高体連のレベルが上がるのではないか?今でも生駒高校や一条高校は質の追求もしているが、いくら奈良県の中学生の質が高くても、「観る」ことなしには限界がある。今後どうなるか?
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