サッカー観戦日記

2008年08月24日(日) SBSカップ第2日

SBSカップは基本的にアジアユースの年にはたいてい観ている。U−16代表の豊田国際と合わせてアジアユース直前の状態を確認できるからだ。

清水駅に着いてみると土砂降り。開催が不安になるほどだ。目当てのアルゼンチンは第2試合。雨がピッチに浮いてテクニックが封じられるようなら面白くない。しかし日本平の水はけは良く、杞憂だった。


静岡ユースはかつては国体に向けた強化の一環で、国体がU−16化したあともこの大会のためにチームを編成し臨んでいる。

オーストラリアはアジアユース予選を韓国に次ぐ2位で突破し本大会出場を決めている。ただし韓国には0−4の大敗だった。

08年SBSカップ 
静岡ユース−U−19オーストラリア代表
13時 日本平スタジアム 雨 ピッチ良

静岡           U19オーストラリア
−−−−−鈴木−−−−− −−−八番−−十六−−−
−−−−−竹内−−−−− −−−−−−−−−−−−
佐野−藤田−−小林−植田 十四−十二−−十番−十一
加藤−栗本−−栗山−岡崎 三番−十三−−四番−五番
−−−−−井川−−−−− −−−−−一番−−−−−

静岡
GK 井川貴光(浜松開誠館)DF 岡崎太一(藤枝東)栗山直樹(清水東)栗本広輝(清水商)加藤充(磐田Y)MF 植田雅之(常葉橘)小林勇輝(藤枝東)藤田息吹(藤枝東)佐野傑(清水Y)FW 竹内涼(浜松開誠館)鈴木翔悟(磐田Y)

オーストラリア
GK 1 レッドメイン(Central Coast Mariners) DF 5 ライアル(Melbourne Victory) 4 ヴェレ(Queensland Roar) 13 ジュァーマン(Sydney Olympic FC) 3 ツァッタリオス(Sydney FC) MF 11 ミニーコン(Queensland Roar)10 ニコラス(Queensland Roar) 12 ムンロ(Australian Institute of Sport) 14 オーア(Queensland POAR)(原文ママ) FW 8 ルジッチ(Oakleigh) 16 エラシ(Melbourne Victory) 

立ち上がりは双方様子見。オーストラリアは守備時はエラシが下がって4−2−3−1、攻撃時は2トップになる。10分、ミニーコンがレイトタックルで警告。15分ジュァーマンが植田を倒し警告。この日の主審は怪しかった。16分、静岡、佐野がドリブルで持ち込み鈴木へ、シュートは弱く正面。20分、オーストラリア、スルーパスがルジッチへ、1対1もセーブされる。なおこの時間帯で観戦仲間の間でルジッチに、「クラウチ」なる愛称がつけられていた。23分、静岡・小林に警告。突破を潰した。さらに栗山にも警告。FKの距離不足。静岡は最終ラインを岡崎−加藤−栗本−栗山に変更。オーストラリアの右サイド、アポリジニー系のミニーコンの突破が素晴らしいので、それに対する変更か?しかし効果なし。32分、静岡、藤田→廣瀬勇人(東海大翔洋2年)。トップ下に入り、竹内がボランチに下がる。33分、ミニーコンが飛び出し、右を崩してニコラスへ、シュートはGK好セーブ。決定機。ミニーコンはスピードに加えボディ・バランスも素晴らしい。A代表を狙える器。左のオーアは左利きの技巧派かと思ったが、スピードもある。静岡はこの両サイドに手を焼いていた。39分、加藤に警告。突破をファウルで止めた。40分ハーフで終了。

前半はシュート数4(2)対3(2)クロス数4対8。オーストラリアのサイド攻撃が目立った。右のミニーコンからは成功クロスも3本出ている。しかしイマイチ合わず、決定機は少なかった。


後半は静岡・栗山→竹内一貴(浜松開誠館)。そのままRB。2分、佐野が左を突破、竹内涼のヘッドはGK正面。11分、オーストラリア・ニコラス→ヴベシッチ(Reading FC ENGLAND)。日本、植田→長崎健人(静学)、トップ下に入り、廣瀬が右サイドに。16分、オーストラリア、ルジッチ→ナイドフスキ(Newcastle Jets)この時間帯、オーストラリアは右のミニーコンと左のオーアがポジションを入れ替えている。20分、ライアルに警告。アフター。21分、オーストラリアのロングフィードにナイドフスキが抜け出し、GKと1対1、しかし井川好セーブ。決定機。25分、オーストラリア・エラシ→ミラノビッチ(Australian Institute of Sports)。イタリア系(大嘘)。シャドーの位置。27分、静岡・加藤に2枚目の警告。突破を引っ張って止めた。不用意な判断だった。退場。30分、静岡・鈴木→大芝(常葉橘)。32分、ミニーコンの右クロスをナイドフスキがヘッドも上に外れる。33分、オーストラリア・ナイドフスキに警告。GKに足で滑り込んだ。ナイドフスキは常に裏、常にギリギリを狙い、オフサイドも多いが、危険な動きをする。37分、ナイドフスキがドリブルからシュート、左に外れる。。38分、ミラニビッチに警告。39分、静岡、右ショートコーナーから長崎クロス、ファーで大芝が折り返し竹内涼シュートも左に外れる。決定機。ロスタイム、静岡・井川→大畑(磐田Y)、廣瀬→真野(加藤学園暁秀)。PK対策か?しかしオーストラリアはカウンターからミニーコンがスルーパス、ナイドフスキがオフサイドギリギリで受けて1対1を決める。0−1。結局そのまま終了。

後半はシュート数4対7。オフサイド数2対9が面白い。1歳年下の静岡も健闘したが、U19オーストラリア代表のほうが一枚も二枚も上だった。ジュァーマンは181cm73kgのストッパーで前に出る判断が素晴らしかった。荒っぽさもあるが楽しみな選手。攻撃陣は好タレントぞろい。右のミニーコンはすでに書いたが、左のオーアも技術とスピードを兼ね備えた選手だし、ルジッチは184cm73kgの体格でスピードも豊か。アジアユースレベルのDFでは止めるのは難しいのではないか。

静岡はタレント的にはイマイチだが、サッカーどころで揉まれているだけあって、個々の技術・判断力には光るものがあった。間違いなくJに行く、と断言できる選手はいないが、オーストラリア相手に0−1は素晴らしい結果だ。



第2試合はお目当てのアルゼンチン。ヨーロッパ組は呼べなかったらしいが、初戦は静岡を4−0で一蹴している。しかしメンバーをほとんど入れ替えたらしい。監督はペラッソ氏。聞いたことはないが、差し替え前のスタッフ表にはコーチとして元アルゼンチン代表のオラルティコエチェアの名前があった。

08年SBSカップ 
U−19日本代表−U−19アルゼンチン代表
15時 日本平スタジアム 雨 ピッチ良

日本           アルゼンチン
−−−白谷−−大迫−−− −−−七番−−十四−−−
鈴木−−−−−−−−菊地 −−−−−−−−−−−−
−−−下田−−山本−−− 十一−五番−−十五−十八
酒井−金井−−村松−青木 十七−十三−−十六−四番
−−−−−権田−−−−− −−−−−一番−−−−−

日本
GK 1 権田修一(FC東京) DF 10 青木拓矢(大宮)4 村松大輔(Honda FC)
5 金井貢史(横浜FM)6 酒井高徳(新潟ユース)MF 13 菊地大介(湘南ユース)11 山本康裕(磐田)7 下田光平(東京)8 鈴木淳(福岡) FW 17大迫勇也(鹿児島城西高)15 白谷建人(C大阪)

アルゼンチン
GK 1 ディエゴ・マティーアス・ロドリーゲス(C.A.independiente)DF 4 マルティーネス(SAN LORENZO DE ALMAGRO)16 ムサッチオ(C.A.RIVER PLATE)13 マチューカ(C.A.NEWELLS OLS BOYS)17 ビットロ(C.A.VELEZ SARSFIELD)MF 18 ガイタン(CLUB ESTUDIANTES DE LA PLATA)15 ビジェーガス(C.A.Belgrano de Cordoba)5 ベナビデス(C.A.BOCA JUNIORS)11 ドロッコ(C.A.BOCA JUNIORS) FW 14 チュリン(C.A.independiente)7 パトリシオ・フリアン・ロドリーゲス(C.A.independiente) 


日本のCBは村松176cm、金井174cmと高さに難がある。アルゼンチンはチュリンが186cmあるので不安だ。

3分、アルゼンチン、ガイタンが右を突破、シュートはセーブ。13分、日本、菊地に警告。ドリブルをラフに倒した。18分、アルゼンチンのクロスをGKはじくも、こぼれをシュート、DFクリア。24分、アルゼンチン、ビットロの左クロスをチュリン、ワントラップ左足シュート、左ポストをかすめる。直後、日本、菊地が後ろ向きトラップ、これに身体を寄せていたアルゼンチン選手がファウルになってしまいFK。山本が狙うもわずかに左に外れる。34分、アルゼンチン、ベナブデスに警告。距離不足。36分、ガイタンの右クロスをチュリンがボレー、当たり損ねて権田が抑える。前半終了。

シュート数4対3、ファウル数4対5、アルゼンチンがずっと攻めていたが、緩急がなく、と言うか急ばかりだった。突破力もイマイチ。高さも使わず、ひたすら地上戦を挑み、ドリブルからの細かい仕掛けばかりだった。これがアルゼンチン育成のポリシー?盛り上がりには多少欠けた感じ。ベナビデスは素晴らしい潰し屋ボランチ。五輪代表でいえばガーゴに似ている。キャプテンシーも十分。日本では高校総体で圧倒的な身体能力を見せた大迫がいとも簡単に潰され、白谷のスピードも通用しないなど、アルゼンチンDF陣の圧倒的なレベルには驚かされた。

ハーフタイムで日本・菊地→9廣瀬(山形)。そのままのポジション。アルゼンチン・11ドロッコ→19リシオ(C.A.RIVER PLATE)、ビジェーガス→9ネイラ(C.G.Y.E.LA PLATA)。リシオはメンバー表には10番とあったが、アルゼンチン側が親善試合での「10番」の登録を嫌がったらしい。

こういう布陣。
−−−十四−−九番−−− 
−−−−−−−−−−−−
七番−五番−−十八−十九 
十七−十三−−十六−四番 
−−−−−一番−−−−− 

3分、大迫に警告。GKに足から突っ込んだ。5分、村松→12益山(千葉)。ケガによる交代。下田がCBに下がり、廣瀬が左、鈴木淳がボランチ、益山がRH。ボランチにはいるか、下田がボランチのままでCBかと思ったが、意外な起用法。テストだろうか。8分、リシオ、敵陣でカット、右シュート、GK権田セーブ。さらに右CK、ネイラのヘッドは上に外れる。10分、ネイラ、ドリブルシュート、権田スーパーセーブ。13分、ペナ右FK、ゴール前に上げてくるという日本の予想の裏をかき、ペナスポット後方のネイラにグラウンダーのパス、これをダイレクトであわせてアルゼンチン先制。14分、鈴木淳に警告。繰り返し。15分、大迫→14大山(福岡)、チュリン→8ベニーテス(C.A.LANUS)。ボランチに入り、9番と19番の2トップ、18が右ハーフ。17分、P.J.ロドリーゲスに警告。17分、大山がポストで落とし、山本がミドル、右に外れる。大山はポストプレーヤーとして入ったのだろうが、色々出来る選手。アルゼンチンのリシオは圧倒的な突破力があり、第1試合のミニーコン以上。鋭く多彩なフェイントを持っている。得点力もありそうで、アルゼンチンが育成してきた小柄なFWの系譜を継ぎ選手。165cm62kg。23分アルゼンチン、P.J.ロドリーゲス→オリーバ(C.A.TIGRE)が左ハーフに入る。27分、マルティーネスのオーバーラップからネイラがファーでヘッドを決めて0−2。あまりにアルゼンチンが空中戦を仕掛けてこないので、意表を突かれた感じ。いいヘッドだった。ここで日本は気落ちしたのか、1分もたたないうちに、オリーバが攻め上がり、シュートをDFハンド、金井に警告。PKをリシオが決めて0−3。しかし28分、日本は鈴木淳の27mFK、シュートはカベに阻まれるもこぼれが山本の足元に入り鋭く反転左足シュート、これが左隅に突き刺さり、1−3。ビューティフル・ゴール。アルゼンチン、マルティーネス→2メサ(SAN LORENZO DE ALMAGRO)、チームメイト同士の交代。ベナビデス→6フィデレフ(C.A.NEWELLS OLS BOYS)。CBに入り、ムサッチオがボランチに上がる。そのムサッチオが白谷にバックチャージで警告。いつの間にか益山RBで青木RH。35分、鈴木淳の右FKでファーの酒井がヘッド右隅に決まる。日本は超決定力で2−3と迫る。終了間際、白谷→16川又(新潟)。ロスタイムは4分、ビットロ、ネイラがそれぞれ遅延で警告。しかし得点は生まれず2−3で終了。

まあ力の差は歴然としていた。アルゼンチンの圧倒的な局面打開力に対し、日本は1対1が弱い。高さもなく、カバーリングとビルドアップに秀でた選手を選んでいるのだろうが、不安ばかり出てくる。攻撃陣も国内では身体能力の高さが際立つFW陣も苦戦したし。中盤も攻守ともに遅れをとった。ずっとこのチームを観ている人はだいぶよくなったと言っていたが、どうもアジアユースのサウジ・イランには勝てないのではないか、と不安が募る。豊田国際でのU−16代表に引き続き、アジアユース前に状態のよくない代表チームを観てしまった。これほどの不安は02年須藤ジャパン以来だ。そのときはアジアユース(U−16)のグループリーグ敗退で終わっているのだが。ただ最後まで諦めない闘志は評価したい。

アルゼンチンは全員が仕掛ける意識を持ち、圧倒的な技術と身体能力を見せた。ベナビデス、リシオ、ネイラといったタレントもいたし、次回のワールドユースでも優勝に絡んでくる、と思った。スコアこそ2−3だが最初からベストメンバーなら5点差くらいの力の差はあった。素晴らしいチームだ。


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T.K. [MAIL]