サッカー観戦日記

2004年08月13日(金) 国体近畿ブロック大会

この大会は国体予選に当たる。各府県の選抜または単独チームが参加し、本大会へは成年男子・成年女子が各1チーム、少年男子は4チームが参加する。太陽が丘で成年女子と少年男子、西京極補助で成年男子が開催された。少年女子が存在しない関係から成年女子は5人まで高校生も出場可能。成年男子・女子はトーナメント方式、少年男子はリーグ戦方式を採用している。本大会は埼玉県で9月10日に開幕。観に行けるとすれば11日(土)くらいだが体力的にきつそう。

幸いこの日から夏休みなので太陽が丘へ向かう。13日の金曜日の呪いなのか暑い。バスを待つだけでも汗が流れる。すぐにコンビニへ退避する。乗るバスも太陽が丘の入り口までしか行ってくれない。そこから汗をかきかき丘の上に登っていく。第1試合は陸上競技場で少年男子の京都−和歌山、球技場B(芝のほう)で成年女子の和歌山−大阪。


国体近畿ブロック大会 少年男子 京都−和歌山
8月13日(金)太陽が丘陸 12時 ピッチ並 晴 微風


京都                和歌山
−−−松田−−足立−−− −−−−−吉田−−−−−
−−−−−−−−−−−− −−−−−杉原−−−−−
武岡−神田−−渡辺−櫛田 山田−船津−−大島−西田
伊澤−山口−−飯田−坪内 桂木−谷口−−中野−山道
−−−−−灰谷−−−−− −−−−−辰巳−−−−−

京都選抜20人の内訳はサンガ4人、洛北4人、桂3人、大谷3人、向陽2人、久御山2人、伏見工2人と多彩だ。監督は桂の平井先生。おそらく負傷により直前で洛北の大江、桂の今崎が外れ、向陽の水流と大谷の角田が加わった。狙いとするサッカーはバランスを保った守備からシンプルなサイド攻撃。神田哲也(サンガ)が上がり目でリズムに変化をつけようとする。

和歌山選抜の20人は近大和歌山(以下近附)8人、初芝橋本(以下初橋)4人、和北4人、橋本、田辺商、和工、那賀が各1人。監督は和工の坂本先生。こちらも直前で海南の西山、近附の宮本が外れて和北の下岡と那賀の重松が加わった。1トップ吉田のキープ力を活かし、杉原の飛び出しを狙うスタイルか。

序盤は互角だった。和歌山は意外と力強い吉田(近附)のキープ力が光り、杉原(初橋)の飛び出しの速さ、船津(初橋)や大島(和北)からの正確なパスが攻撃の起点になっていた。守備でも激しく高くフィードもいい谷口、やはり高さがありスピードもある中野の近附コンビが堅く、SBも桂木(近附)、山道(初橋)ともに粘り強い。京都招待の頃からは意外なまでのまとまりである。対する京都は守備に重点を置きバランスを保ちつつカウンターを狙う印象である。松田(サンガ)には力強さもあるが、このチームでは足立(大谷)の周囲を良く動いて味方からのボールを引き出し、隙あらば自ら切り崩す役割を担う。足立はポストワーカー。櫛田(桂)は判断というか決断が早く、すぐに仕掛けていく。武岡(大谷)は大柄でキープ力もある。渡辺(桂)は激しい守備で中盤を制圧にかかる。伊澤(向陽)は正確な左足キックでセットプレーを担当。なおほとんどクロスを上げる機会はなかった。前半半ばに京都・武岡から足立に好スルーパスが通ったところを和歌山・大島が倒し一発退場。さらに京都にはPKが与えられた。しかし足立のPKは灰谷(洛北)にセーブされてスコア動かず。和歌山は中盤を船津を中心に右に杉原、左に山田(近附)とし西田(橋本)をFWとする4−3−2に変更、引いて守らず前線からプレッシャーをかけ続ける。この苦しい局面で船津のミスの少なさや吉田が足元でのキープだけでなく、スペースでボールを受けたり、ウラを取れる選手でもあることが活きてきた。右に回った杉原は攻守に渡ってセンスのよさと、執念深さを発揮し、大きく貢献。私的MVP。京都はパススピードも距離もなく、和歌山の忠実な守備を振り切れずSBがクロスを上げるシーンもなかった。数的優位を活かせない。神田がポジションを高くとり押し込もうとするが、船津の確実な守備にも阻まれほとんどチャンスなし。渡辺はパスのブレが多く、攻撃面は不得手なようだ。典型的なスコアレスドローの流れだったが、前半ロスタイムに京都右CKで伊澤のボールが中にこぼれたところを渡辺が決めて京都先制。



ハーフタイムを挟んで今度は成年女子を観戦する。和歌山−大阪は大阪が順当に4−0と大量リード。大阪の次の相手は兵庫で事実上の決勝戦なので無駄な消耗を避けるべくメンバーを落としている。Lリーグ中心のメンバー。規約上選考できないGKウォルシュのところには大体大の大野が入る。


国体近畿ブロック大会 成年女子 和歌山−大阪
8月13日(金)太陽が丘球B 12時 ピッチ並 晴 微風


後半開始メンバー
和歌山               大阪
−−−−−森−−−−−− −−−−−小中山−−−−
−−−−−田村−−−−− −−−島村−−奥田−−−
北條−深山−−瀧谷−小川 上辻−阪口−−松田−庭田
誰々−中朋−−大野−中佳 −−山本−中鍋−河上−−
−−−−−誰々−−−−− −−−−−大野−−−−−

ハーフタイムで曲田(海南FC)→深山(田辺商)、谷口(田商FC)→中西佳子(海南FC)。
和歌山の「中朋」は中西朋子、「中佳」は中西佳子。所属は同じ海南FCなので姉妹なのかもしれない。LBとGKはメモにも背番号の記載なし。所属は海南FC7人、田商FC4人、田辺商業高校5人、和歌山大・大体大・中京女子大・徳島文理大各1人。直前に田商FCと無所属の選手が外れ、中京女子大と徳島文理大の選手が加わっている。和歌山出身の大学生なら加入も可能だ。ただインカレ常連の中京女子大はともかく、徳島文理大の場合女子サッカー部自体が無かったはず。クラブでプレーを続けているのだろう。少し前に全国に出たこともある田辺商の選手を5人枠にフル活用。OGクラブの田商FCと合わせて9人。

大阪はハーフタイムで高倉→小中山、相澤→山本(大体大)。
大阪の所属はスペランツァFC高槻13人、ラガッツァFC高槻2人(ただしトップのレギュラークラス)、ラガッツァ‘99USEDが1人、大体大3人、大阪市レディース1人。アテネ五輪のため下小鶴はエントリーされていない。後半開始時点で大体大と大阪市レディースの選手は全てピッチにいる一方、代表経験者はほとんどいないことからも大阪が残り時間を流し、翌日の兵庫戦に備える意図は明らかである。

ゲーム自体は技術・戦術・フィジカル・メンタル・経験と全てで格段に優る大阪がボールを回しながら圧倒的に攻める。対する和歌山はキックもトラップも怪しく、サッカー経験自体の乏しさが露わになってしまう。県内に関西女子リーグもチャレンジリーグ(事実上の2部、3部)もなく、和歌山大は関西学生女子リーグで連戦連敗(春は8試合で勝ち点1)、田辺商も全国レベルの高校ではなく、関西女子リーグチームがゴロゴロ転がっている大阪とは基礎戦力の差が大きすぎる。それでも田村(大体大)、北條(中京女子大)は引いてボールを受け何とか打開を図る。大野はこのチームには珍しくキック力のあるスイーパー。大阪右CKで庭田からニアで小中山のヘッドが決まり0−5。上辻の左クロスを島村が決めて0−6。結局0−8で大阪が圧勝しアテネ五輪代表5人を欠く兵庫に挑戦する。(結果は大敗)


再び少年男子に戻る。スコア動かず1−0。メンバーは以下の通り。

京都                和歌山
−−−松田−−竹部−−− −−−阪口−−吉田−−−
中村−−−−−−−−櫛田 −杉原−−−−−−重松−
−−−神田−−渡辺−−− −−−−−船津−−−−−
伊澤−山口−−飯田−坪内 桂木−谷口−−中野−山道
−−−−−灰谷−−−−− −−−−−辰巳−−−−−

和歌山は3ボランチの運動量が落ちず、FWもさぼらず京都に形を作らせない。むしろカウンターからいい形を作り、谷口のロングボールをFWが上手く受けて起点を作るなど、和歌山のほうがいいサッカーをしている。阪口(近附)はキープ力が高く、吉田が前を向いてプレーできるようになった。一方ポゼッション・サッカーを志向していない京都にとってはどうしたらいいのか分からない状態。SBが上がれないためサイド攻撃も機能せず、坪内の豪快な上がりも、伊澤の正確なクロスも活きない。それでもこのまま逃げ切るかと思われたロスタイム、和歌山のロングボールに対し飯田が視野を切ってしまい後頭部に当ててしまう。これが絶妙の落としとなり、杉原?が決めて同点。延長Vゴールへ。

延長前半に京都・櫛田が右でタメて中の神田へ、さらに左の中村(洛北)へ自然なパス2本のサイドチェンジ、中村がサイドを突破してクロス、これを櫛田が決めて京都が何とかVゴール勝ちの勝ち点2を獲得した。


少年男子の延長によって成年女子のゲームと時間差が出来たのですぐに球技場Bへ移動する。

国体近畿ブロック大会 成年女子 奈良−京都
8月13日(金)太陽が丘球B 14時 ピッチ並 晴 微風


奈良                京都
−−−高田−−伊藤−−− −−−−−日置−−−−−
−−−−−−−−−−−− −−−−−生本−−−−−
中田−笠井−−赤川−空− 神谷−平岡−−瀧川−松村
長谷川−中村−芳本−中山 古志−木村−−池内−木原
−−−−−保井−−−−− −−−−−石村−−−−−

奈良は登録17人で、あえて3枠を余らせている。直前に2人入れ替え。無所属の2選手に代わって入ったのは立命館大と大阪北YMCAの選手。兵庫のINACレオネッサから5人、白鳳レディース5人、大体大、履正社FC、武庫川女子大、郡山FC卑弥呼、ハイドレンジャーズ神戸から各1人。関西女子リーグ最強のINAC勢がやはり中心で、2トップとCBコンビを組む。高田はINACではGKのはず。

京都は紫光クラブ中心。紫光7人、大体大2人、立命大2人、城陽SC2人、京都外国語大、群馬FCホリコシ、ROSSO京都、京都橘高校、聖母学院高校、履正社FC、京都暁FC各1人。エース格の日置(大体大・04年西日本学生選抜)も紫光出身だった気がする。直前で聖母学院の選手が外れて京都外国語大の選手が加入。スタメン中5人が紫光。

序盤から京都がやや押し気味。1トップ日置がなかなかの好CFで足元で受けてのポストプレーがチーム戦術の要となっている。大体大でもレギュラーの選手。松村(紫光ク)は快速を武器にサイドを破る。高校生ながら10番を任された平岡(京都橘高)は緩急織り交ぜたドリブルで中から崩しにかかる。持ち方が良くボールを失わない選手。奈良は中盤を支配されFW陣もキープで精一杯。6分、京都・松村の右クロスがファーに流れフリーで走りこむ神谷(紫光ク)を奈良の選手が倒しPK。これを日置が決めて京都が先制。少年男子がキックオフになる時間なので陸上競技場へ移動。



国体近畿ブロック大会 成年女子 奈良−大阪
8月13日(金)太陽が丘陸 14時10分 ピッチ並 晴 微風


奈良                大阪
−−田井中−−小池−−− −−−渡部−出口司−−−
−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−
−柳−岡林−−中原−畑中 出口義−田所−松岡−安田
金田−杉本−−奥野−奥田 山口−伊藤−−金−−佐藤
−−−−−青木−−−−− −−−−−三橋−−−−−

奈良の所属は育英7人、一条7人、五條3人、富雄2人、高取1人。直前で高取の選手が外れ、一条の選手が加入している。監督は一条の松田先生。狙いとするサッカーは一条と同じく3列がフラットに並んだラインを極端なまでに高く保ち組織的なプレスでボールを奪ってからの早い攻撃といったところ。SBが前に出てプレスを掛けるときは逆サイドハーフが下がり最終ラインの人数を保つやり方で、SHには運動量、CHにはポジション感覚などの知性が求められる。そこでSHには柳(育英)と畑中(富雄)、CHには岡林・中原の一条コンビとなった。DFリーダーにはクレバーな奥野(育英)と身体能力の高い杉本(一条)、守備重視のSBには粘り強い金田(五條)と奥田(高取)が攻撃的な西本・鬼岩の育英勢を抑えてレギュラーをとった。カウンターサッカーゆえ点取り屋の小池の相棒には佐藤(育英・U−16代表)あたりが欲しいのだろうが、代表でいない。

対する大阪の内訳はG大阪12人、C大阪、関大一、近大附各2人、仰星1人。直前で家長(G大阪)が登録抹消、また植田(G大阪・U−16代表)も代表で外れて18人体制である。今年はバックアップ要因を教育的配慮もあり、あえて用意していない。監督は藤井寺工の三宅先生。ボールを自陣からつなぐポゼッション・サッカー。スタメン中8人をG大阪勢が占める。さかんにオーバーラップを試みるSBは右に佐藤(G大阪)、左に山口(近大附)、同サイドのMFは右がボールをしっかりキープしてパスを出せる安田(松岡)なのに対し、左は自分で突破したい出口義隆(仰星)なので山口はスペースを消され特長が出ない。出口義隆は左足FKも担当。田所がカバー主体のボランチ。右サイド得意の松岡がインサイドでスタート。2トップは技巧的なポスト役の出口司と飛び出しに秀でた渡部のG大阪コンビ。

開始からショートパスを繋ぐ大阪に対し、奈良はラインを押し上げたコンパクトな守備でFWへのタテパスをオフサイド網に掛ける。インサイドの中原・岡林は的確なポジショニングと当たりの強さで中央でのキープも高い位置でのサイドチェンジも許さず、大阪は後方で回す時間が増えていく。それでも時折LH出口義隆と奈良RB奥田のスピード差を突いた突破から形を作る。最初の決定機も出口義隆の突破からのクロスに安田が飛び込んでのシュート、これはGK青木(富雄)がセーブ。さらに右CKでファーに立つ出口司のマーカー奥野も高さでは勝てず、セットプレーで大阪は出口司の頭を徹底して狙う。両チームに体格差があるわけではないが、セットプレーでの空中戦では大阪に分があった。徐々に大阪の支配率が上がり、奈良はラインが下がりオフサイドを取れなくなる。しかしLB金田は粘り強い守備で安田の突破を押さえ、LH柳も丁寧に佐藤の上がりをケアし、左サイドを破らせない。右サイドも出口義隆がスピード豊かに突破を狙うがほぼタテばかりなのと、山口など周囲を活かせないために単調なものになっていく。そしてこのサイドは奈良のカウンターの狙い目にもなった。ロスタイムには畑中がカウンターからペナ近くまで侵入、2度の切り返しから右上を狙ったシュートがわずかに外れる。


ハーフタイムの間に再び球技場Bへ。京都が2−0と奈良をリード。技術に優る京都ペースは変わらず。奈良は芳本をスイーパーとする3バックに変更、ストッパーは中山と交代出場の乾(白鳳)となり中村(INAC)がボランチに上がり潰し屋として活躍。6分、笠井(白鳳)のスルーパスを高田が決めて1点差に詰め寄る。再び陸上競技場へ


後半になると大阪は松岡が右に出て安田がトップ下へ。相変わらず入れ替わることも多いが、基本的には松岡が本来の右に入った。松岡に技巧的なドリブルで金田を突破できれば、という意図かもしれないが、素晴しく腰の低く建て直しの利く守備で金田は松岡をも抑える。松岡はやむを得ず中へのドリブルからスルーパスを狙うがチャンスにはならない。6分、奈良・右CKで柳の左足のボールを中原フリーでヘッド、届き切らず外れる。決定機。後半は奈良にカウンターの形が多くチャンスの数では奈良が上回る。大阪は左サイドが機能せず。13分、奈良中盤での致命的なパスミスから出口司がカバーのいない岡林と正面での1対1、しかし岡林は冷静に対応し、カット。15分、奈良・小池→小川(育英)。16分、奈良のカウンターでドリブルを松岡倒し警告。ここまで畑中と柳の運動量が落ちていない。17分、ドリンクタイム後に奈良・奥田→西本(育英)。大阪・渡部→平井。出口義隆の突破を封じるには奥田の粘りと守備技術よりも西本のスピードのほうが効果的という判断か?消耗もしていた。渡部の交代は消耗によるものだと思う。平井はすぐスルーパスを受けるなどいい動き。この時間帯には大阪もチャンスを作っていた。一方奈良はFWと中盤との距離が空いてしまい、いいカウンターにならない。33分、大阪・佐藤→樽井(関大一)。ロスタイム、大阪が中盤でボールを奪いカウンターに行こうと不用意に右に出したところを狙っていた金田がカット、左クロスを小川?が決めて奈良が均衡を破る。大阪もロスタイムに樽井の右クロスに平井が奥野の前に力で体を入れてボレーも当てるのに精一杯。さらに伊藤→久野(関大一)を入れて高さに賭けるがチャンスなくタイムアップ。

まあ、大阪も昨年よりチームは機能していたが、サイドを破れず最後は自陣でのパスミスに泣いた。やはり家長の穴は大きかったか。長束にせよ出口義隆にせよ頑張ってはいたのだが……。奈良は前田監督にとって思い通りのゲーム運びができたのではないか?個人的にMVPを挙げるならRH畑中(富雄)、次点はLB金田(五條)。畑中の運動量は驚異的だった。暑い中ついに70分間落ちることもなく、またカウンター時にもFWをよくフォロー。サイドを抑える立役者となった。


帰宅時に女子の出場選手をチェック。来年4月に開催されるAFC U−17女子選手権の出場資格は88年以降生まれだが、今大会の出場は無さそう。代表チームの活動は全日本女子ユース(U−15)が終わってからだろう。世界に繋がる大会ではないが、いい選手が出てきてくれればいいなあ。

ちなみにチーム関係者でもないのにこの日の太陽が丘にはるばる埼玉から来られた人が独立に2人いたのだった。1人は成年女子、もう一人は少年男子が目当て。う〜む、凄い。


 < 過去  INDEX  未来 >


T.K. [MAIL]