サッカー観戦日記

2004年08月08日(日) 豊田国際ユース(第2試合のみ)

恒例の豊田国際ユース。40分ハーフで行なわれる。今年はU−16の大会として開催され、招待チームも単独クラブから代表チームとなった。まあ昨年もU−17と銘打っていながら実質U−16の大会だったが。ヨーロッパビッグクラブの下部組織には有力外国籍選手がゴロゴロいるので、ややスケールダウン感はある。特に昨年のバルサのような好チームを観てしまっては。バルサは大会直後に中心選手が次々に移籍してしまったので、まさに最後の華だったわけだ。今年の招待国はオランダ・アイルランド・メキシコ・韓国。メキシコは知らないが韓国は好チームと評判だ。オランダとアイルランドは03−04年UEFA U−17選手権で1次予選敗退に終わっている。つまりベスト28+開催国以下の存在であり、そのチームには88年生まれが各ひとりずつしかいない。ということでチームとしてはあまり期待できない。

昼食は毎年スタジアム内で販売されている弁当にしようと何も買わずに入るが、何と今年から弁当がない。ツイてない。チケットにはもれなくメニコンカップのチケットまでついてくるが、今年はアジアユース(U−17)準々決勝と重なるので観に行けないのだ。ツイてない。

(中略)
第2試合にはU−16日本代表が登場。8月の頭から行なわれた高校総体やクラブユース選手権(U−18)との兼ね合いで選手を大量26人選考し、所属チームが大会で敗退次第順次呼び寄せた。最終日時点ではサンフレッチェ広島ユースの平繁以外は合流している。対するアイルランドの注目選手はなんといってもアンソニー・ストークス(アーセナル)。88年生まれ組で唯一前回のU−17代表でレギュラーを張り、代表でもFAユースカップでもゴールを量産し、15歳にしてリザーブ・リーグでも得点を奪うなど世界的な選手への階段を駆け抜ける勢いである。ピッチにもプログラムにあるストークスの背番号10の姿があった。しかし残念ながらカイリーという別人。他の選手はプログラム通りだったのだが、率直なところ背番号10番だけプログラム通りのほうが良かった。



豊田国際ユース(U−16)3位決定戦 日本−アイルランド
8月8日(日)豊田スタジアム 12時30分 ピッチ並 晴 並風


日本                アイルランド
−−−伊藤−−佐藤−−− −−−−−十番−−−−−
−−−−−−−−−−−− −−−−−十一−−−−−
武田−鈴木−−中野−野田 十四−十三−−四番−七番
金子−植田−−青山−倉田 十五−五番−−六番−二番
−−−−−長谷川−−−− −−−−−一番−−−−−

1;Stephen Henderson (Aston Villa)
2;Simon Madden (Leeds United) 
6;Alan Power (Crumlin United)
5;Eddie Nolan (Blackburn Rovers) 
15;John Quigley (Stoke City) 
7;James Ryan (Liverpool)
4;Robert Bayly (Leeds United) 
13;Owen Garvan (Ipswich Town) 
14;Karl Moore (Manchester City) 
10;William-John Kiely (Cherry Orchard)
11;Keith Treacy (Blackburn Rovers)

日本は倉田をRB起用。控えとしてのテストだろう。青山はボランチではなくCBで出場。中盤は市船式のダイアモンド型ではなく、フラット。FWは長身伊藤がポストに入ることが多い。

アイルランドもゾーンの4バック、フラットな中盤と英国式で、前線は長身カイリーが1トップ。両SHは突破力があり、クロスをカイリーに合わせるパターン。シャドー・ストライカーのトレーシーも速い。

アイルランドは素早くサイドに振って突破を狙う。左のムーアは技巧的な突破からのクロスの流れが美しい。右のライアンはキレがあり、武田や金子を翻弄するシーンも。長身CFカイリーは強いが、技術的にはそれほどでもなく、かといって高さも圧倒的というほどでもなく、代表レベルでは苦しい感じで、しかもクロスに合わせる動きもぎこちなかった。また左利きのトレーシーとのコンビも合わない。中盤はパワフルだが、技術的にはイマイチで、日本の忠実な守備の前にミスが増えていく。8分、日本がペナ右70度22mでFKを得る。右足で野田、左足で金子が構え、金子のキックが見事ゴールに吸い込まれ先制。アイルランドも右クロスに合わせたノーランのヘッドがバーを叩くシーンもあったが総じて日本が押し気味。鈴木が攻守でインサイドを制し、野田の技術も生きる。前線では伊藤がアイルランドの線の太い選手に負けず空中戦で互角に渡り合い、前を向けば積極的に仕掛け形を作った。アイルランドは選手間の距離が長く、選手の突破力頼みとなってしまった。しかし39分、FKをGK長谷川がパンチング、やや当たり損ねた上にコースが甘く、正面で待ち構えるライアンへのパスとなり、ミドル、こぼれをベイリーが押し込み1−1の同点となる。

ハーフタイムでアイルランドはムーア→グリースン、ベイリー→ジャッジと交代。ジャッジがFWに入り、トレーシーが左のハーフに下がる。グリースンは右のセントラルMF。
8;Stephen Gleeson (Wolverhampton Wanderers)
9;Alan Judge (St Joseph痴 Boys)

対する日本は金子が左のハーフに上がり、武田がLBに下がるマイナーチェンジ。4分、アイルランドはカイリーが落としたボールをライアンが素晴しい右クロスがファーへ、大外から入ってきたトレーシーが全くのフリーだったが外す。完全に崩した形。出来れば野田に戻ってほしかった。しかし日本も7分、野田の右クロスをニアで佐藤がそらし伊藤が決めて2−1。前半の致命的ミスで動揺したか長谷川が不安定で、キックも乱れ、DFライン裏へのボールをクリアしようとしてキックミス、相手に渡してしまい無人のゴールに蹴りこまれそうなシーンまであったが、辛うじてDFが戻ってクリア。21分、日本・中野→大島。中野はやや不調で止むを得ない交代だと思う。大島がRB、倉田が右ボランチへ。26分、日本・佐藤→堂柿。はっきり伊藤1トップの下に入る。アイルランド・ガーバン→コネレン。右ボランチ。グリースンが左ボランチへ。31分、日本・長谷川→川原、金子→遠藤。遠藤がそのまま左MF。アイルランド・カイリー→パーセル。36分、右FKでポーンと上げた高いボールにファーのゴールエリア内でノーランが大島に完璧に競り勝ちゴール!2−2。単純に高いボールでは大島がノーランに勝てるわけがないのだし、ゴールエリア内なのでGK川原が防ぐべきだった。日本は終了間際に伊藤→登の交代を行うがチャンスらしいチャンスもなく終了。PK戦では川原の読みが完璧に当たって4−2で日本が勝利。3位となった。

12;John Connellan (St Francis Athlone)
18;Timmy Purcell (Belvedere)

ゲーム後、日本の長渕剛監督とアイルランドのドラえもん監督(体型もそうだがジャージまでドラえもんみたいなのだ)が握手。アイルランドはショックで立てない選手もいた。


さて日本の選手を何人か簡単にメモしておこう。

この日のスタメン長谷川はライバル権田の様にスーパーセーブ連発だとか、爆発的なキックといった派手なタイプではなく、堅実で安定感十分な、好対照なタイプだ。しかし一端ミスすれば建て直しが拙いという印象を受けてしまった。アジアユース正GKの座には権田が一歩近づいたか?川原のPK戦は完璧だったのだが、その前のプレーはちょっと……。とはいえ第3GKに入る可能性は高い。

SBは当初攻撃的な選手が選ばれていた。「カウンターをなるべく受けないこと」を第1とした市船とは方向性が異なっていたのだ。しかしアジアユースの組み分けで中国・北朝鮮・タイと同じ組に入り、2位で通過した場合ベトナム・ラオス・オマーンという比較的楽な組に入り1位通過の可能性が高い韓国と準々決勝で当たる。中国・韓国とも現時点では日本よりも強そうなのでSBには高い守備意識が求められるようになり、結局市船同様にバランスをとれるSBが必要になったわけだ。今回左SBは人材豊富だが、右は手薄だ。そこでバランスの取れる倉田がバックアップ要因としてテストされたのだろう。問題なくこなしていた。セントラルMFとしては相手を個人の力では潰せないし厳しい部分もあるが、RBの他にRHもこなせる倉田の存在はバックアップ要因としてより重要になったのではないだろうか?

FWは全員の状態がベストで布監督が自由に選考できるのであれば、アジアユースは森本、小澤、喜山、伊藤になると思う。ただ森本はツーロンのプレーでU−19代表にも欠かせない存在となり、またアジアユース(U−17)と(U−20)は一部日程が重なるのでどうなるか。小澤も負傷中だし。布監督の好みというか、このチームでFWに求められる仕事は、よく動いて味方からボールを引き出し、前を向いて積極的に自分から仕掛け、シュートに持っていくことだ。この日グランパス・愛知県・豊田市高校選抜でプレーした久保が外れているのは、身体能力を生かしたポストやロングはあっても、突破力に布監督が満足していない為だろう。他の監督ならU−16代表としてアジアユースに出場するかもしれないが。この日は布監督の中ではおそらく5,6番手に位置する、したがって森本・小澤がダメな場合極めて重要な存在である佐藤がスタメンで出場したわけだが、相手に仕掛けるところまでは良かった。しかしシュート意識が薄く、最後はパスだろうとアイルランドDF陣も途中から決めてかかっていた印象があった。小池(奈良育英エースストライカー)はいないのだ。いや、仮にいても、あるいは相棒が森本であっても「自分こそエースストライカー」という意識を布監督は求めているのではないだろうか?結局MFとしてアジアユース出場濃厚な堂柿に交代してしまった。突破力では佐藤に譲る登がストライカー感覚を武器に生き残るか、野性的な平繁か。佐藤が逃げ切るか。


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T.K. [MAIL]