2003年09月20日(土) |
関西学生リーグ 第2節 阪南大−関学大 桃山大−甲南大 |
台風が接近する中この日も長居に足を運ぶ。土曜なのに公園内の売店は閉まっている。2強の阪南大・桃山大が揃って登場の好カード。
第1試合は阪南大−関学大。春は関学大の勝利。3位に終わった春リーグは4勝4分1敗。得点力不足に悩まされたものの、先に点を与えることもなかった。そして関西学生選手権優勝、続く総理大臣杯も決勝で引き分け、PK負けの準優勝。順調そのものの阪南大にとってこのカードは今期唯一喫した敗戦である。関学も先天的な才能に恵まれた選手は揃っているがチーム力には開きがあり阪南大優位であるのは確か。ゲームレビューにはインカレではなく天皇杯での日本一を目指す、などと大きいことを書いている。
関西学生リーグ 第2節 阪南大−関学大 9月20日(土)長居第2陸 12時 ピッチ並 雨 並風
阪南大 関学大 −−−尾花−−安部−−− −−−原崎−−岡野−−− −−−−−−−−−−−− −−−−−古家−−−−− −梁−加納−−竹村−永末 −岡村−−鈴木−−佐伯− 旗手−−南−−寄居−大杉 守生−春川−−山本−山口 −−−−−梅村−−−−− −−−−−秋山−−−−−
阪南大は中盤・最終ラインともフラットで、組織的且つ激しいプレスを前線から仕掛ける。梅村(4年・清水Y)は技術が高く堅実なGK。南(4年・京都)は左足からのロングフィードで後方から組み立てる。深谷(3年・三好、JFA特別指定選手)は負傷でベンチスタート。加納(4年・長崎海星が)左足、梁(4年・大阪朝鮮)が右足FK担当。安部(3年・日章学園)がポストに入ることが多い。
関学はCB春川(3年・国見)が復帰し山口(3年・松商)が右に回る。中盤はダイアモンド型でポジションをきっちり守りバランスをとる。本来ボランチの古家(3年・G大阪Y)がトップ下に入る。FWは身体能力・技術を兼ね備えた岡野(3年・愛媛FCY)がポスト役。鈴木(4年・横浜FMY)が右足、岡村(3年・藤枝東)が左足、原崎(4年・藤枝東)が強いFK担当。
関学は雨の中控え選手が鳴り物入りの応援で盛り上げる。ゲームの入りも良い。序盤は双方互角でチャンスも数度ずつ。阪南は中盤インサイドの守備が春よりも強く、SHの突破力ばかり目立っていた春と異なり、SBがどんどん上がり分厚いサイド攻撃を狙う。関学も中盤の集中力が高くきっちりつなぎ、岡野に当てて戻し原崎が裏を狙うサッカーができている。イージーミスもなく、速いカウンターも受けない。クロスに弱い関学の弱点を阪南大は狙わずクロスを簡単に上げないこともあり、決定機はほとんどない。が20分辺りから地力の差が出始め、阪南大の中盤が関学のパスを寸断、タテパスはオフサイドか闇雲に蹴ったもの、という状況となる。29分阪南大・尾花(4年・串本)と梁の絡みからLB旗手(2年・浦和Y)へ、上手い動きでペナコーナー近くに入った梁にパスが通り、素早くループ、バーを叩く。34分関学・鈴木がハーフを少し過ぎたところから前のスペースへ浮き球パス、南もきっちりポジションをとっていたが、岡野が物凄いスピードで突っ込み真後ろからのボールをペナ少し外でピンポイントに合わせるダイレクトボレーがゴールに突き刺さった。岡野の身体能力と技術、そして鈴木の正確なパスと阿吽の呼吸あってのもので、プロでもどうしようもないスーパーゴール。すぐ阪南大はサイド攻撃からチャンスを量産し、39分引いてポストに入った安部から右の尾花へ、ペナ内でタテ突破と見せて左へパスし、フリーで突っ込んだ梁が決めて同点に追いつく。さらに阪南大の攻勢が続き前半終了。
阪南大はスコア以外はまあ満足できる前半だろうか。決定機は少なかったが前半よく頑張った関学の後半のペースダウンは確実だ。FWがスペースを突く動きや、インサイドの攻撃意欲は物足りないが作戦かもしれない。
関学は中盤の守備の甘さを運動量で補った印象だが、20分過ぎから振り回され体力を消耗した。引き分け狙いで引いて守るのも一つの手だが、採らないのが関学。
後半関学GK秋山(4年・藤枝東)→水田(3年・V神戸Y)。クロスの際にちょっとした接触があったがその際のケガだと思う。大したものではなく、ケガが長引くことはないはずだ。開始1分阪南大深い位置まで入ったRH永末(3年・都久留米)がRB大杉(3年・山陽)に戻しクロス、安部フリーでオーバーヘッドにいくが空振り。阪南大が良い入りで、LH梁に集めて多彩な攻撃をみせる。6分阪南大・永末の右クロスがファーでフリーの梁へ、しかし痛恨のトラップミスでシュートならず。13分には阪南大・梁の左足クロスが尾花へ、シュートは当たり損ねて枠外。15分関学右サイドへのロングパスにLB旗手がカットを狙うが目測を誤り失敗、南が迫る前に放った原崎のシュートはGK梅村正面。17分永末が中に入り関学LB守生(2年・広島Y)を引きつけRB大杉へ、フリーで上げたクロスがゴール正面にフリーで走りこむ梁の頭に合い2−1となった。18分関学・佐伯(4年・宝塚)がペナ付近で右に流れるドリブルから反転即パス、原崎が正面に突っ込むがトラップミスでシュートならず。20分過ぎから阪南大・梁が完全にゲームをコントロール。左サイドで受けて中にドリブルという基本の形からスルーパス、FWとのワンツー、オーバーラップしたLB旗手へのパス、左に関学を寄せてからサイドチェンジと多彩な攻めの中心となる。しかし関学は佐伯にマークさせる、といった対策は採らず。26分関学の35mFKを原崎が強シュート、壁に当たったボールをゴール前に上げるが南がしっかりポジションをとる。これに鈴木がのしかかりファウル。警告は何故かなし。これで南が負傷し、深谷(3年・三好)を右CBに入れ寄居(1年・広島Y)は左CBに回る。さらに31分阪南大・竹村(4年・大津)→松岡(1年・C大阪)。33分阪南大・梁が左サイドラインぎりぎりで柔らかいタテパス、尾花が山口を振り切り左30度シュートもGK水田が弾く。34分今度は梁自らスピードに乗ったドリブルで中に切れ込みシュート、上に外れる。35分関学もセットプレーの流れから佐伯シュート、梅村好セーブ。38分阪南大・尾花の突破を山本がペナ手前で倒し警告。梁のFKはミスで壁の腹に当たる。42分関学・古家、佐伯→橋本(3年・清風)、小松(2年・高知追手前)に交代。ドリブラー橋本、長身CF小松の投入は明らかに遅い。阪南大も43分尾花→大西(3年・東福岡)。ロスタイムに関学はロングボールのこぼれを小松が狙うが梅村が好判断で前に出てセーブ。さらに原崎の強シュートも梅村が抑え2−1で阪南大が逃げ切った。
阪南大の順当勝ちで、特に後半は完全にペースを握った。高いレベルを追求しているのは分かるが、きっちり崩すことにこだわらず、シンプルにクロスや放り込みを織り交ぜればもっとチャンスを作れたはず。
関学は酷かった。試合後関学関係者の女性が「最低」と泣いていたくらいだ。序盤はよく頑張ったが、DF、MFの連携が物足りない。次節の桃山大にはちょっと勝てそうになく、第4節の甲南大に負けるようだと2部落ちか、少なくとも入れ替え戦行きは濃厚となる。
公式記録
関西学生リーグ 第2節 桃山大−甲南大 9月20日(土)長居第2陸 14時15分 ピッチ並 雨 並風
桃山大 甲南大 −−−−森−−川井−−− −−−中條−−河合−−− −−−−−南茂−−−−− −−−−−陳−−−−−− −−姜−−井上−−柳田− −金井−−早野−−松岡− 福西−江添−−木村−重光 小林茂−井上−松下−山本 −−−−−廣瀬−−−−− −−−−−谷−−−−−−
桃山大は南茂(4年・清風)が上がり目のボランチで守備時は中盤もフラット気味になることが多い。CBは高い。SHはスピードある突破を繰り返す。負傷明けの川井(4年・愛媛FCY)がポスト役。森(3年・草津東)がトップ脇。ともに得点王を狙う関西最高の2トップが桃山大の切り札だ。南茂がFK担当。
1部昇格の甲南大のCBは170台半ばの身長ながら空中戦に強く、厳しい守備。桂豊監督が海外研修で不在のためCBで主将の松下(4年・浜松湖東)がプレーイングマネージャーを務める。SBは攻撃的。ダイアモンド型の中盤。昨年はJに所属し、今年から大学サッカーに籍を移した陳(2年・V神戸)がトップ下。2トップはともに長身。陳が右足、小林茂(4年・小野)が左足FK担当。
立ち上がりは双方とも慎重にスタート、開始15分までともにシュートなし。徐々に地力に優る桃山大がペースを掴みサイド攻撃を繰り出す。甲南大は守備の甘いSBが裏を簡単に取られるシーンも散見された。ただ桃山大・川井が不調で空中戦で勝てず、当たりも怖がっているように思えた。しかも甲南大CB陣は川井が負傷した札大CB陣と似たタイプだ。少しずつサイドに流れ森につながらない。甲南大はラインで守るチームではないが、裏をつく選手に対し最後までついていかないので、裏をとられてしまう。20分右から桃山大・柳田(3年・北陽)のシュートをGK谷(3年・滝二)がはじくが、こぼれをペナ少し中から南茂のシュートがDFの間を抜けて右スミに決まり先制。さらに「裏とっとけ」という南茂の指示の下桃山大の攻勢が続く。序盤は早野(3年・V神戸Y)が南茂を徹底マークしていたが、下がらざるを得なくなり、引いた位置で南茂がゲームをコントロール。甲南大はカウンターにいこうにも、左の金井(4年・湘南Y)は判断が遅くボールを受けてから次のプレーを考えているフシがあり、右の松岡(3年・芦屋)は技術的なミスを連発。陳も球離れが悪く、囲まれては奪われてしまう。中條(3年・刀根山)は速くしなやかで身体能力が高い選手でいいターンから歩幅の大きなドリブルで仕掛けるがボールタッチは荒く、現時点では未知数の素材。興味深い選手。34分、甲南大やや距離のあるFKで小林茂の正確な左足キックがバーを叩く。43分には甲南大・中條が速いドリブルからシュートもゴールは脅かせず。前半は1−0で終了。
甲南大は一芸選手が多く面白いチームだが、このゲームでは選手の個性が噛み合っていない。ただCBコンビが強く中では良く跳ね返し最小限のピンチに迎えている。上背のある2トップは桃山大の江添(3年・玉野光南、ユニバー優勝メンバー)・木村(1年・広島皆実)の前に完敗。パワー不足で体の使い方も拙い。
後半もペース変わらず。川井が本調子なら早い内に追加点を奪えたかもしれないが、1点差のまま進み、甲南大もあきらめない。桃山大は圧倒的な攻勢の割りにシュートは少なく、森へのラストパスだけは封じられ、川井はウイングプレーヤーと化してしまった。20分桃山大・姜(1年・大阪朝鮮)→崔(3年・北陽)。姜はクロスの精度が良くなかった。崔南銀は「ナム」と呼ばれており、ボールを持つと周囲から「なむなむ」と念仏じみた?声がかかる。24分甲南大・河合→前田(3年・須磨友ケ丘)。消えており、予想通りの交代。26分またも左に流れボールを受けた川井が左足クロスを森巧みなトラップからシュート、わずかに外れる。28分、森、浮き球でDFをかわしラストパス、南茂のシュートはGK谷好セーブ。30分桃山大、中で細かく繋ぎサイドのLB福西(4年・南宇和)へ、クロスをファーでフリーになっていた森が決めて2−0。33分には攻めていた甲南大・陳から福西が奪い一気に森へ、ドリブルで突っ込み得意の左45度ループが決まり3点目。これでゲームは決まった。すぐに南茂→奥田(1年・奈良育英)、さらに37分井上→南(3年・近大附)と主力を下げる。36分甲南大も松岡→高須(1年・清風)と代えており両ベンチ(甲南大は松下)とも勝負アリと判断したのだろう。しかし44分の甲南大右CKで小林茂のボールがファーに流れ、これを拾った陳の左足クロスが当たりそこね、なんと逆サイドネットに突き刺さり甲南大が一矢報いる。さらにロスタイムに放り込みのこぼれを陳が再び決め、3−2と明日につながるゲームとなった。
桃山大は終了直前までは何の問題も無いゲーム運びで、不調の川井もゲームをこなしているうちに良くなるだろう。ただ陳の1点目はアンラッキーだったが、2点目はいただけない者だった。放り込んでくるのは分かっていたはず。CBも競り勝ちこぼれ球だけを注意する状況で狙っていた陳をフリーにするようではいけない。
甲南大は第1節で立命大にシュート17本浴びながら耐え切った粘りの一端は感じられた。残留できるかどうかは守備組織の整備にかかっていると思う。
公式記録
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