2003年09月17日(水) |
雑文・高校女子選手権について |
週末の女子W杯開幕前に女子ユース年代関係の雑文を置いておきます。
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高校女子選手権について
例年神戸で開催される全日本高校女子サッカー選手権大会。(*1)ほとんど一般のファンの観戦もなく、仲間内でひっそりと行われている大会という雰囲気すらある。しかし競技レベルとしてはなかなかのもので、上位チームの技術・戦術レベルは男子の全国レベルと比べても引けをとらない。
私は第一回大会からほぼ毎年観戦しているが、この大会の競技レベル向上の速さには毎年驚かされる。第一回大会は率直なところあまり競技志向でない、遊び半分のチームが多かった。そもそも選手の多くは明らかにサッカー経験がなく、ピッチで何をすればいいのか、自分なりの考えを持たない者ばかりで、秩序らしきものが存在するチームはごく一部に過ぎなかった。それに当時は中学生のためのオフィシャルな全国大会もなかった。
しかし第二回大会で優勝した本庄第一は「勝つこと」を強く意識した競技志向型のチームであり、厳しく鍛えられていた。個々の能力はそれほど高いとは言えないが、70分間走り抜くスタミナ(*2)、しつこいマンマーク、一度トップに当ててサイドを使う攻撃パターンなど練習でみっちり鍛えられている事が良く分かるチームだった。そしてこの大会以後埼玉勢が全体を引っ張る存在となった。
96年にはJFAがついにU−15の全国大会を創った。(*3)ほとんどが県選抜、なかには九州選抜なんてものもあった。九州大会を勝つなんて当然!予選すら行われなかったかもしれない。残念ながらこの大会を観戦した事はないが、選抜チームゆえか勝利至上主義的なチームなどなく、むしろ個々の選手育成を強く意識したチームが大半を占めているそうだ。またこの大会の副産物としてトレセンの整備も挙げられる。全国大会が存在する以上その予選に参加するチームもまた47都道府県に存在することを自ずと求められる。しっかりしたチームが全都道府県には存在しない以上県協会サイドが強化に乗り出さざるを得ない。実際には全ての都道府県のチームが予選に参加するわけではないし、また県選抜のなかには明らかにやる気に欠ける指導者もいるが、とにかくトレセン形式を整える要因とはなったといえる。
以後明らかに高校女子サッカーの流れは変わった。ナショナルトレセンで指導されているような体の向きを意識した動き、動き出し、グループ戦術などが格段に向上し、チーム全体での鮮やかなパス回しも見られるようになったのだ。98年度大会を制した聖和学園には各選手の視野の確保にまだぎこちなさが残っていた。この大会を観た静岡の知人は00年度大会を前に「優勝は藤枝西で決まり」と断言した。理由は98年度大会のどのチームよりも個人戦術的な部分で優っている、というものだ。確かにその通りだったが00年度にはすでにトップチームから動きのぎこちなさは消えており、わずか2年で知人が唖然とするレベルに達していた。
01年度大会で準優勝した湘南学院は技術・戦術・闘志・身体能力を高いレベルで兼ね備えて、もはや現在の環境で高校チームが到達しうる限界点に達したと思われるほどの実力を持っている。優勝した聖和学園も身体能力以外は湘南に引けをとらない。
この大会の初期こそ興味本位で観戦したものだが、今や高みを追及するするサッカーを楽しめる、いい大会になったものだと思う。
*1 02年度より各地持ち回り開催 *2 この大会の試合時間は70分 *3 全日本女子ユース(U-15)サッカー選手権大会
上の文章は01年度大会直後に書いたものに後日手を加えた
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