サッカー観戦日記

2003年07月07日(月) 総理大臣杯1回戦 札幌大−桃山大  新潟大−流通経済大

年に一度全国の大学の強豪が関西に集まって行われる総理大臣杯。この貴重な機会を逃したくないので、休みを取った。この大会は地方のチーム優先で観ることにしており、ここ数年は高知大・仙台大・道都大あたりを主に観ている。今年は久しぶりの観戦となる札幌大、それに初出場の新潟大目当てで高槻総合スポーツセンターへ。

名門札幌大は外国人留学生を呼んだり、冬場の練習でのフットサルの導入など、革新的な手法を取り入れ、サッカー界のみならず日本のスポーツ界に大きな影響を与えたチームである。読売クラブと並んで日本にブラジル流のスタイルを導入したチームといっても過言ではないだろう。道内にライバルがいなかったこともあり、大臣杯やインカレではベスト4どまりだが、近年のコンサドーレの誕生や道都大の台頭など道内のレベルが格段に向上し、新たな黄金期を築けるか?



総理大臣杯 一回戦 桃山大−札幌大
7月7日(月)高槻SC 11時30分 ピッチ並 曇 並風


桃山大                札幌大
−−−川井−−森−−−− −多賀−−岡戸−−長谷−
−−−−−南茂−−−−− −−−−−斉藤−−−−−
−−大西−井上−柳田−− −−−伊藤−−圓明−−−
竹内−江添−−木村−重光 浅田−長谷川−河端−倉谷
−−−−−田中−−−−− −−−−−松本−−−−−

関西春季リーグ優勝・関西学生選手権準優勝の桃山大はベストメンバー。4バックを押し上げ、中盤から激しいプレスをかけてボールを奪い、サイド攻撃へ。江添(3年・玉野光南)と木村(1年・広島皆実)のCBは身体能力が高い。南茂(4年・清風)が組み立て、FKも蹴る。大西(3年・東福岡)は俊足。2トップは身体能力の高い長身CF川井とスピード・技術とも十分な関西得点王の森。

札幌大は3トップの攻撃的なスタイル。SBも高いポジションを取り、CBは数的不利に陥ることもあるが、高い能力でカバー。長谷川(2年・北海)177cm、河端(4年・青森山田)173cmと高さはないが、厳しい寄せ・激しいプレーでカバーする。ただ技術はイマイチでボールを持ったとき危なっかしいシーンも。LB浅田は正確な左足クロス・FKがある。10番・斉藤(3年・室蘭大谷)、圓明(4年・室蘭大谷)伊藤(3年・札幌Y)のインサイドは細かい技術があり、桃山大を中に寄せておいてウイングに出すのがひとつの形。3トップはスピードはそれほどでもないが、ドリブルシュートの形を持っている。

ゲームの入りは札大がいい。桃山大陣内に押し込みFK・CKが4本続き圓明の決定的なヘッドもあったがGK田中(2年・大津)が鋭い反応でセーブ。高湿度のむわっとするようなコンディション下で札大は前線から激しいチェックを仕掛けてペースを掴む。廣瀬主審がボディコンタクトだけでなく、アフタータックルにも甘いことを見抜いたか、札大はファウルぎりぎりのディフェンスを仕掛けるが、警告もファウルの判定も少なく、桃山大はやや冷静さをうしなった。15分くらいまで桃山大は苦し紛れのタテパスのみの攻撃。15分、札大・河端のミスを桃山大・森が奪い左からシュート、GK松本(2年・帯広北)がなんとかセーブ。16分、桃山大・柳田が中央から左に流れるドリブル、しかし札大・河端が冷静な対処で潰す。この辺りから桃山大もシンプルにつないでサイド攻撃という自分達のプレーを見せ始める。双方CFへのクサビは入らない。岡戸(4年・北海・北海道東北選抜)は江添に吹っ飛ばされるなど、パワー不足でポストになれない。21分、札大の25mFK、斉藤が鋭く曲がるFKもCKに逃げる。浅田の右CKはニアへの低いボール、DFクリアで再CK、浅田再びニアへの低いボールもDFクリア。1本目はミスキックかと思ったがどうやらサインプレーだったようだ。24分、札大ゴールキックの落ちるポジションに入った川井の後方から長谷川が勢いよくのしかかりヘッド、ファウル。倒れた川井の側に寄った選手からすぐにプレー続行不能のサインが出る。どうやら倒れた際に肩を脱臼したようで、すぐにピッチから出され救急車で病院に運ばれる。ちなみに警告は無し。すぐに下垣(3年・V神戸Y)が入る。27分、桃山大ボールを奪った札大・河端がドリブルで持ち出し一気にカウンター、しかしドリブルが大きく相手へのパスとなり、逆カウンターも長谷川CKに逃げる。そのCK、南茂のボールが入ったばかりの下垣のヘッドに合うが松本好セーブ。40分前後で札大の運動量が落ち、桃山大の時間帯となる。43分、右からの南茂のFKをファーで折り返し森のシュートがポスト直撃、跳ね返りを柳田スライディングシュート、田中スーパーセーブ、これをダイレクトボレー、またも田中セーブ。凄まじい連続攻撃もゴールは奪えず。直後の札大カウンター、長谷が右からペナにドリブルで侵入するがいかにもわざとらしいダイビング、当然警告。前半終了。

前半から飛ばした札大は大阪の暑さの中スタミナが最後まで持つかどうかがポイント。特にインサイドの3人の負担は大きい。またボールを受ける姿勢が良くないのも気になった。古いタイプのテクニシャンといおうか。道内では道都大以外に中盤で組織力・運動量・激しさを兼ね備えたプレスを仕掛けるチームがない影響かもしれない。もっとも関西にもそんなチームは桃山大・阪南大だけだとは思うが。

桃山大はまず落ち着くこと、相手が来る前にシンプルにはたいてサイドを使うことがポイント。廣瀬主審はラフプレーに甘いながらも判定基準は一貫しているのだから、逆に激しいプレスを仕掛けてペースを掴むことが肝要である。

後半開始直後の札大ファウルで桃山大すぐリスタート、DFのウラに走る森へ、河端のタックルも及ばないがシュートは上に外れる。2分、札大カウンター、伊藤を倒した大西に警告。後半も札大は序盤プレスを仕掛けペースを掴むゲーム運びは名門ならでは。今や関西トップの桃山大も総理大臣杯はまだ出場2回目だ。5分、下がってボールを受けた南茂が出しどころを探している間に後方から忍び寄った長谷が奪いペナ内から決定的シュート、田中がガッチリキャッチ。7分、桃山大右クロスをDFクリアミス、しかし南茂の決定的シュートは横に外れる。10分、札大右からのFK、浅田のボールはわずかに長谷川に合わず。14分、桃山大は中央の大西のスルーパスに森が抜け出し、右からループシュートが左サイドネットに決まり劣勢の桃山大が先制した。勢いに乗る桃山大はタテパスを南茂がダイレクトヒールで落とし下垣が撃つが松本セーブ。17分札大・長谷→長内(3年・登別大谷)。20分、長谷川のミスをカットして森へ、浅田が落ち着いて対処。1点リードの桃山大は相手中盤をフリーにさせない。そうなると札大CBはパスが不正確なので高い位置で奪えるシーンも出てくる。24分、札大・斉藤→野崎(4年・東海大翔洋)。小柄なドリブラー。札大はタフで運動量も大きくは落ちない。しかしバランスを保つ桃山大のプレスの前にインサイドで回せずチャンスを作れない。33分には動きの落ちた伊藤→高井(3年・旭川実)を投入。圓明をリベロ、野崎をトップ下に置く3−4−3に変更。34分、桃山大・森→南(3年・近大附)をいれて守備を固める。しかし36分、札大・野崎のCKを長谷川がニアでそらすヘディングシュートを決め、同点に追いつく。桃山大は意識を切り替えて攻撃に出るが決定機はつかめず延長戦突入となった。

延長戦も札大は3−4−3のまま。しかしバランスが悪く桃山大ペース。10分、CKで南茂がショートを仕掛け重光のクロスを江添ドンピシャのヘッドが決まりVゴールで桃山大が2回戦進出を決めた。


桃山大は相手より洗練されたプレーが光った。中盤でシンプルなパスが回せる分カウンターを受ける回数が少なく、スタミナの消耗を抑えることが出来た。江添の守備はパーフェクト。空中戦は全勝、裏を取られることもなく、相手CFに仕事をさせず。MOMは彼しかいない。しかし川井の負傷はあまりに大きい。関西最強2トップはあっさり崩壊してしまった。

札大もCBの守備能力は見事で、特に河端の激しい寄せが良かった。GKの松本の身体能力・反応の鋭さはプロレベル。キックやキャッチングは危ういが、今後面白いかもしれない。

廣瀬主審はもう少しアフタータックルを見ておかないと負傷者続出のゲームになりかねない。笛を吹く基準自体は割りと一貫していたが、ラフプレーに甘かった。川井のケガは不幸な事故だが、観ていてヒヤヒヤするシーンが何度かあった。


第二試合の目当ては新潟大だ。北信越地区はもともと大学サッカーのレベルが低く全国大会ではほとんど初戦敗退を続けていた。地域最強が地域最大の大学である金沢大だったという時点でしっかりした強化を行っている大学が存在しなかった何よりの証である。芝のグラウンドがあるとはいえ、金沢大は決して全国レベルのチームとはいえない。しかし近年福井工業大や金沢星稜大など全国で勝負できるチームも出てきた。新潟大はくじ運に恵まれ北信越決勝で福工大を5−4で下し初出場を決めた。予選3試合全てで失点している。


総理大臣杯 一回戦 新潟大−流通経済大
7月7日(月)高槻SC 13時45分 ピッチ並 曇 並風


新潟大                流経大
−−−村上−−佐山−−− −−−箕輪−−難波−−−
−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−
武藤−小澤−−神田−田嶋 池田−中島−−栗澤−船山
池田−中村−−笹井−高地 小沼−中村−−木下−西森
−−−−−大嶋−−−−− −−−−−塩田−−−−−

新潟大は最終ラインからパスをつないで崩すスタイル。4バックはラインをこまめに上げ下げする。小寺(4年・京都西、170cm)と笹井(3年・東山、175cm)のCBは高さに欠ける部分を頭脳でカバー。技術は低いが自分を良く知っていて無難でミスのないCBコンビ。SHも中に入り組み立てに積極的に加わる。全国経験のある小澤(2年・松商学園)はCBの前で丹念に相手を潰す。武藤(4年・新潟江南)はレフティーでFK担当。CF佐山(1年・前橋育英)は確実なポスト・キープからのパス・シュートが光るエース。高校では2年時からサブとして全国経験もある。

2部ながら関東2位で出場の流経大は中盤・最終ラインともフラットで大きく押し上げる。中野監督はJ2水戸を指揮したキャリアを持つ。GK塩田(4年・水短・JFA特別指定選手)は身体能力が高く、声の良く出る選手。CB中村(4年・境、172cm)、木下(4年・熊本国府、175cm)は小柄な頭脳派。栗澤(3年・習志野・関東選抜)は技術が高く攻撃の軸。FK担当。左右両足でミドルパスが出せる。LH池田(4年・花咲徳栄)は左利きで足元で受けてからのプレーが持ち味。RH船山(1年・流経大柏)も両足が使える。FWはともに小柄。元Jリーグ神戸の難波(1年・栃木SC)は小柄ながら爆発的なスピードがある。

ゲームは最終ラインから丁寧にショートパスでつなぐ新潟大に流経大が運動量豊かにプレスを仕掛ける展開となった。新潟大はパスに練習の多くを割いているようで、ボールを受ける動きが巧みで全員のインサイドキックも正確なので簡単にボールをカットされない。また流経大のプレスもイマイチ連動していない。4分、流経大の右CK、栗澤からファー池田のヘッドはポスト直撃。10分、ロングボールを難波がヘッドで落とし箕輪ボレー。16分、流経大、正面20mFKも池田のキックはカベに当たる。21m流経大CKのこぼれを池田シュートもGK大嶋キャッチ。新潟大GK大嶋(4年・伊那北)のキックは不正確でゴールキックも怪しく、しばしばピンチにつながる。新潟大はボールキープ時間は五分以上だが崩す形がなく、決定機を作れない。佐山は人には強くない流経大CBから確実にキープしてパスを出せるが孤立気味。佐山のポストから村上が裏へ抜けるか、武藤のクロスから佐山のヘッドというのが新潟大の形だろう。流経大は俊足2トップがサイドに流れてスペースを作り生じたスペースをMFが使う形が多いが、新潟大のバランスは崩れず個人での打開が多い。28分、新潟大の巧みなパス回しから左の武藤へ、左クロスに村上が競り、こぼれを佐山シュートもDFブロック。直後のCKが神田(1年・新潟南)の前にこぼれるがバウンドのタイミングでシュートを躊躇し、膝の高さにボールが落ちたところで撃つが、DFのブロックが間に合う。42分、新潟大RB高地(3年・新潟江南)のパスミスが池田へ、高地を十分ひきつけてLB小沼(2年・湘南Y)へ、逆サイドに振り船山のよくコントロールされた左足ミドルが決まり、流経大が先制した。ロスタイムには流経大・箕輪(4年・作新学院)がGKと1対1となるがシュートをポストに当てる。結局0−1で前半終了。

後半は開始から流経大の猛攻となる。精神的に後手に回った新潟大はスローインを3度直接カットされ、動揺が誰の目にも明らかで、経験不足によるゲームズマンシップ不足を露呈する。完全に押し込んだ流経大は13分難波に代えて鯉渕(3年・水短、185cm)を入れ、空中戦でも圧倒的優位に立つ。意外と速さもある。なんとか耐えていた新潟大だが19分、船山が一人かわし中へ、栗澤が落ち着いて中央左につなぎ池田が30mロングシュート、DFの間をすり抜けるように決まり2点目。これで勝負あり。さらに攻め続ける流経大がとどめの3点目を決め、順当に勝利した。

新潟大は北信越王者として恥ずかしくないポゼッションサッカーを見せたが、後半相手にペースを握られたまま押し返せなかった。ゲーム運びが拙い。後半がっくりと落ちたスタミナも足りないが、精神的な部分が大きいのかもしれない。よく鍛えられた好チーム。ただ練習では上手いが、実戦に弱い印象を受けた。

流経大はおそらくもう少し組織的なサッカーを目指しているのだろうが、個々の能力、特にスピードに頼ったサッカーになってしまった。選手の個性は良く出ていたと思う。


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T.K. [MAIL]