2003年06月15日(日) |
総体京都決勝 山城−向陽 JFL第13節 佐川印刷−国士館大 |
先週約束をドタキャンしたためこの日の予定は鉄板である。淡路島・アスパ五色でのクラセン準々決勝も面白そうだが……。全国行きを決める重要な一戦。今年は波乱続きで、昨年の覇者・平安が初戦で消えるし、選手権に出場した伏見工も北の雄・福知山成美も早い段階で消え、実質的には新興の桂(昔は全国にも出場している)がついにベスト4入りという、激動の時代の到来を思わせる展開である。会場にはG大阪・上野山さんの姿もあった。お目当ての選手は誰なのだろうか?先週全国行きを決めた長尾・川井先生の姿もある。いかにも切れ者らしい容姿をされた方である。昨年練習試合では向陽に負けたらしい。スタンドには千人前後入っている。キックオフ時間が午前なのは午後から行われるJFLの前座試合に当たるため。
総体京都決勝 山城−向陽 6月15日(日)西京極 10時45分 ピッチ良 曇 無風
山城 向陽 −−−木爪−−本田−−− −−−−森−−西岡−−− −−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−− 樋口−宮本−−中田−若林 谷島−唐沢−−北川−坂口 田代−岡本−−田中−奥村 塩田−長谷川−前野−阪部 −−−−−須藤−−−−− −−−−−小原−−−−−
学校がすぐ近くということで、中学・高校時代に最も観戦した高校チームが山城だ。確実に母校のサッカー部よりも観ている。石塚や川勝がいて選手権準優勝を果たして以来低迷し、最近では京都でも早い段階で敗れることも多いが、今年はどの程度やれるか?
一方の向陽は向日市のチーム。歴代代表校は府の人口の大半が集中している京都市内勢と久御山が独占している現状を打破できるか?パスをつなぐチームということしか知らない。スタメンの背番号は綺麗に1番から11番まで並んでいる。
試合の入りは山城のほうが良い。スタンドの応援も山城のほうが場慣れしていて上手い。伝統の差か。フィジカルが強く、パワーの差が歴然としており中盤の競り合いで優位に立つ。特に中田は強い。これでは向陽はスタミナの消耗も早そうだ。しかも山城はスタミナのあるチームなので、終盤勝負になればなおのこと。中盤で奪い主将・宮本の左足のパスで崩しにかかる。8分、田代のクロスがミスキック、これがマウスの上を襲うがGK小原フィスティング。CKからヘッド、これも小原キャッチ。10分過ぎから向陽もショートパスからリズムを掴み始める。LH谷島はスピード豊かなドリブラー。13分、山城・本田が裏を取る動きでボールを受けるが向陽・長谷川がCKに逃げる。17分、向陽陣内での若林のスローインを奥村クロス、中央の木詰が囮に裏に樋口がフリーで受けシュート、外す。18分、山城・樋口のクロスに中田のシュート、上に外れる。向陽はつまらないパスミスが多く、リズムを掴みきれない。また、展開力のある北川以外は隣へのショートパスかタテパスの2択という印象だ。21分、向陽左の攻めから北川のミドル、これが初シュートだがGK須藤ガッチリキャッチ。22分、ここまで沈黙だった山城ブラスバンドが突然ルパン3世。流れが変わりつつある時間帯で実にタイミングのいい演奏だ(笑)。ワザとやっているなら素晴しい応援センスだ。この当たりから、パスを回しボール支配時間で上回る向陽と、一旦引いてDFの忠実なマークで中に入れさせず、奪えばサイドに流れるのが上手い木詰にロングパス、彼のキープの間に一気に押し上げる山城という展開が続く。このまま前半終了。シュート数11対4。ボール支配で上回った向陽だが決定機は作れず、山城ペースといっていいだろう。
後半いきなり向陽・谷島の左クロスにニアへ森が飛び込むがクリア。2分、山城・若林→島。ケガではなく通常の交代。上半身が強く、強いキックもある選手。いきなりクロスをあげ、すんなりゲームになじむ。塩田のクロスや唐沢のスルーパス、阪部の速くて力強い突破と向陽がペースを掴む。7分、山城・樋口→田中ケンジが中央に入る。宮本がLHへ。切り返しが得意なテクニシャンで、彼の投入で中央からの突破も可能となる。向陽も森→福田が入る。11分、向陽のシュートがDFに当たりCK谷島の左足のボールをファーの西岡が折り返し長谷川が高いヘッド、これはGK須藤好セーブ。後半立ち上がりは向陽ペースでパスミスが減り、ボールを有効に回し、チャンスを作り始める。16分、向陽・北川→都留。FKも蹴る北川は中心選手だと思ったが、都留も小技が上手く、中から崩せる選手だ。17分、後半沈黙していた山城ブラスバンドが突然ルパン3世演奏。ビックリというか効果的な応援というべきか。17分、カウンターに入る向陽・谷島を引っ掛けた山城・中田に警告。この時間帯向陽は乗っていた。しかし攻撃時の守備の備えは拙く、SBやボランチのポジションが甘く、山城の攻撃陣と守備陣が同数で、裏を取られたらヤバイ、ということが多かった。しかし山城も裏へのパスは出せず。守勢の山城も田中のカバーリング、岡本の高さ、中田の献身的な動きなどでよく耐える。福田のポスト直撃弾など惜しいチャンスを決めきれない。30分、スピードある突破を繰り返した向陽・谷島が足を攣る。中心選手だけに交代はなかったが、この後向陽は足を攣る選手が続出し、止むを得ない交代が続く。坂口→平井、唐沢→森近。残り5分は山城がペースを取り戻す。終了間際の山城・宮本の左クロスをニアの木詰シュートは長谷川が凄いダッシュでブロック、しかし長谷川もこのプレーで足が攣り、井倉に交代。ロスタイムには山城が正面20mでFKを得るが、宮本のシュートは上へ外れる。このまま延長へ。後半のシュート数は2対6と向陽ペースだった。しかし向陽は交代枠5人を使い切った上、足が攣りそうな選手が何人もおり、常識的には99%勝ち目が無く、残り1%もPK戦かな、という過酷な状況となってしまった。
案の定山城の猛攻開始。延長開始1分、宮本のクロスを木詰ヘッド。3分、木詰の左クロスがファーへ、見事LB塩田の前をとったRH島だが決定機を外す。ドフリーで決定的なクロスを上げるチャンスにミスキックなど山城も明らかに疲れている。シュート3本で前半終了。後半開始すぐ向陽・CB前野が足を攣りピッチ外へ。なんとか復帰する。直後向陽が無謀とも思える攻勢に出る。5分、向陽・田中ケンジのドリブルから都留がDFの裏にパス、足が何度も攣っている谷島が決めるが完全にオフサイド。この時向陽は3人同時にオフサイドポジションにいた。もう周りを見る余裕はまったくなさそうだ。9分、カウンター左で受けた田中ケンジからのパスを前半から出場の西岡が右足20mミドル、これが決まり向陽が何と先制!残り時間の山城の攻勢を凌ぎ、全国行き決定だ。もうこれは奇跡的勝利としか言いようが無い。
高校サッカーを見ているとごく稀に信じられないゲームに出会うが、この日のゲームはまさにそんな内容だった。向陽はスタメン中7人までが足を攣るという体力面に難を抱えるチームで、延長時には2人が足を攣ったままプレー。他にも動きの落ちた選手がいた。精神的にも余裕が無く、したたかに勝利を狙っているとは言い難かった。相手のミエミエのオフサイドトラップに引っかかったり、テレフォン・パス(バレバレのパス)をカットされたり・・・・・・。延長後半の人数をかけた攻勢も無謀だった。PK戦狙いが最良の選択のはずだ。カウンターを浴びても戻りきれない。が、向陽は勝ってしまった。選手たちは勝算云々の理性ではなくシンプルな闘志しか頭に無かったのではないか?こういう極限状態を経験したことは今後の人生に大きな財産として残るだろう。純サッカー的に見ると向陽は問題山積である。しかし今の率直な気持ちはただひとつ。
向陽高校サッカー部、感動をありがとう!
JFL第13節 佐川印刷−国士舘大 6月15日(日)西京極 14時 ピッチ良 曇 無風
佐川印刷 国士舘大 −−−妹尾−−中森−−− −−鈴木弘−−小林−−− −−−−−津山−−−−− −−−−−鈴木−−−−− 村尾−阿岸−−森住−石田 −久保田−藤田−舟木−− −−木村−伊藤−法専−− 永田−杉森−−佐藤−橋本 −−−−−斉藤−−−−− −−−−−山下−−−−−
高校サッカーの「後座試合」JFL。アナウンスによると観客数は351人。今期からJFLで戦う佐川印刷だが前節まで13位と苦戦を強いられている。関西リーグでは圧倒的なパス回しを見せ、JFLでも上位を狙えると予想していただけに意外な順位である。前年昇格した佐川急便大阪は最終的に9位に食い込んでおり、実力的に一枚上の佐川印刷なら上半分を狙えると見ていたが、初のトップリーグで攻撃的なサッカーが裏目に出たのかもしれない。選手層は薄いが特にケガ人はなし。3バックはラインの意識が強い。ボランチの森住(桐光学園・選手権準優勝メンバー)は下がり目、FC京都から移籍した阿岸(元U−18代表候補)は上がり目。全員パススピードが早く、グラウンダーでのパス回しから、後方の選手が次々と飛び出す攻撃的で娯楽性の強いサッカーを見せる。長身中森(元山形)がポスト役、スピードのある妹尾(3年連続関西リーグ得点王)が裏を狙う。関西リーグ時代から一人で太鼓を叩き高い声を上げていたサポーターの姿も見える。
この日は総理大臣杯の関東第五代表決定戦と重なり、完全にBチームの国士舘大。昨年から関東でも春季リーグが導入されたため、JFLには実質Bチームが出場することが多い。といってもさすがは関東随一の分厚い選手層を誇る国士舘大、昨年は低迷どころか過去最高の順位を記録した。相手ボールになればいったん引いて確実に守る。FKも蹴る舟木(右足担当)、久保田(左足担当)からのロングボールをトップに当て、こぼれ球を拾い二次攻撃につなげる。小林がCFで俊足鈴木弘があらゆるところに動く。
ゲームはパスを回し中盤を支配する佐川印刷とタテに長いボールを入れる国士大という構図が続く。国士大が前からプレスを掛けても森住が下がり、巧みにパスを捌き危なげなくプレスをかわす。国士大のCBは中森に空中戦で劣勢を強いられるものの高さがあり、グラウンダーのパスにも良く反応し、ラストパスを入れさせない。国士大のポスト役小林は全く起点になれず、佐川印刷にすぐ奪い返される。10分、村尾・阿岸がポンポンとワンツーを決めてサイド突破してクロス、中森を囮に妹尾が決定的シュート、枠外す。22分、ダイレクトパスが何本も決まり、妹尾右クロス、こぼれを阿岸シュートもDFブロック。34分、敵陣で奪ってのカウンター、石田から妹尾へ、シュートはGK山下がブロック。何度も佐川印刷のパス回しが鮮やかに決まるのだが、どうも鮮やか過ぎるというか、国士大のプレスが運動量頼りで、相手の二手三手先を読んでいない動きが目立つ。目指すサッカーのレベルが違うといっても過言ではないだろう。これは国士大に限らず大学サッカーの大半に言えることなのだが・・・・・・。前半のシュート数は9対5。
後半8分、国士大の左からの攻めを止めた法専がクリアミス、左に流れ受けた木村が自陣ペナでドリブル、これを国士大がカットし、木村のエリアにいてマークが浮いた舟木がパスを受けて決める。劣勢の国士大が先制。DFが自陣ペナでミスを繰り返せばゴールも決まるというもの。17分、佐川印刷もパス回しから妹尾が左に流れてクロス、中森ドンピシャヘッドで同点に追いつく。国士大・トップ下鈴木→深澤。クロスを辛うじてクリアするなど、国士大はギリギリの守備が続く。21分、佐川印刷・村尾→吉見。スピードと技術はあるが、あまり周囲が見えていない選手で、突破力を買われたのだろう。前半からパスまわしに翻弄された国士大の運動量もガックリ落ちている。24分、国士大・久保田→新田。27分、佐川印刷・吉見カウンターからドリブルで中に持ち込み、右に一人余っているのを無視して強引にシュート、決まらない。パスを出せば超決定機だっただけに痛恨の判断ミスだった。35分、佐川印刷のダイレクトパスから津山の左クロスを森住がヘッドで決め逆転。ところがここまであまりいいところの無かった国士大が逆転後は押し上げが早くなり、ロングボールのこぼれを拾えるようになる。39分、クロスのこぼれから鈴木弘シュートはGK斉藤が足で防ぐ。44分、国士大・永田が強引に持ち込みゴールライン際から振り向きざまのクロス、これになだれ込んだ国士大の一人・鈴木弘に合い、ヘッドで押し込み同点、結局引き分けに終わった。
佐川印刷は勝たなければいけないゲームを落としてしまった。2失点は自らの甘さが招いたもの。1点目は完全なミスからだし、同点ゴールはクロスを防げたはずだ。ただDFも能力は高い。この日は決定力を欠いてしまったが、FW陣も中森の空中戦の強さ、妹尾のスピードと得点センスはJFLトップクラスだし、今は接戦を落としているがいずれ上位に上がってくるだろう。得点はいずれも中央のパス回しからサイドを完全に崩した、絵に描いたように鮮やかなものだった。それにしてもこんな魅力的なチームを見に来る客が何故300人程度しかいないのだろう?
国士大は体育会系らしい粘り強さをみせた。後半のシュート数は逆転ゴールまでは7対3と完全に佐川印刷に押し込まれていたが、残り10分でシュート6本。執念・迫力といった精神的な強さや体力だけでは厳しいはずだが、国士大のそれは別格だからなあ。G大阪・上野山さんの姿はこの試合は見当たらなかったし、特にタレントがいるわけではなかった。強いて挙げるならFW鈴木弘大か。
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