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私が居間のパソコンでメールチェックをしている時、 父と母は後ろでテレビを見ていた。
テレビのニュースで、幼児虐待死の事件の話が始まった。 父はそのニュースを見ながら楽しそうに、 「俺も子供に思い知らせないとな。包丁で」と言った。 母は「何を言ってるの」とひきつりながら フォローに困っている様子だったが、 父はとても楽しそうに何度も同じ言葉を繰り返した。
私は思わず席を立ち、自分の部屋にこもった。
自分の部屋にはいって座ると、 こらえていた笑いがふとあふれだしてきた。 あの人、あんなことで私が怖がると思ってるのだろうか。 かわいそうな人。
昔、父は私の目の前で母に包丁を突きつけ、 母が怯えて泣き叫ぶのをみて笑っていたことがある。 私は恐怖のあまりただたちすくんでいた。 父にしてみればただの冗談だったらしいが、 あまりにも悪趣味な冗談に母が怒り出し、 「そんなに殺したいなら殺せば」と怒鳴りだした。 父は自分の「冗談」を理解しない母に逆ギレし、 二人は大喧嘩をはじめた。
母はそんな父でも離婚しなかった。 母は離婚しても行く場所がないからと言って我慢していた。 最近になり、父は今でも母が同じ理由で 離婚する気すらないのを確認してニタニタ笑っていた。 他のことについては尊敬できないけど、 離婚しない理由を子供のせいにしなかった点では母はえらいと思う。 まあ、子供のためにうんぬん、なんて もともと考えない人だからね。
私はこの一年ほとんど父と口を利いていない。 彼と関わるとどんな些細なことでも いやな目にあわされるから、関わりたくないのだ。 ずっといやいやながら口を利いてたので、 その義務がなくなっただけでもすっきりしている。
しかし父は、私が自分をバカにしているから 口をきかないのだと思い込んでいるようだった。 その思い込みはエスカレートし、私が近くにいるときでも 私がいやな顔をしそうなことを時々言うようになった。 父が母といるとき、私が一番傷つきそうな言葉で 私のことを呼んでいるのも知っているが、 しょーもないなと思って右から左に流していた。 それがますます気に食わないようだった。 彼は、自分の言葉で私を傷つけて泣き顔を見ることで 私が下だということを確認したくてたまらないのだ。 しかし、私は母とは違って人の言葉で傷ついたくらいでは 涙は出ないので、父の願いをかなえてあげるのは難しそうだ。
父は、仕事も減り、長年の付き合いだった会社からは見捨てられ、 弱い立場となった父に好き勝手言うようになった母にとまどっている。 もう年をとり、自分の愛しい母親と 同じ病気になってしまって体の自由もきかなくなってきた。 もう若くないし力ももうないということを受け入れられないから、 何も口答えしない娘にあたるしか術がないのだろう。 母も、父と意見が合うのは自分の子供が理解できないという ことだけなので、嬉々として一緒に悪口を言っている。
お金を稼ぎつつ、目先の小さな幸せをちょっとずつ 手にいれながらぼんやりと今日を生きている私。 自分の行く先に光があるのかなんて考える気にもなれない。 好きな服とコロンを身につけさせてくれるのなら、 私は逆らわないから包丁でも何でも好きなようにしてください。 ご希望なら遺書も書きますし、日にちを指定してくれたら 身辺整理もしておきます。 何なら、私が死んだ後指差して笑ってくれてかまいませんよ。 あなた、そういう「冗談」大好きでしょ。
この生活に「終わり」をくれるなら、 どんな方法でも喜んで受け入れましょう。
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