雑感
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2007年12月13日(木) タニノ・クリスティの靴

タニノクリスティというブランドをご存知だろうか。
イタリアの靴の老舗でフィレンツェとローマ、東京や大阪にも
直営店がある。
バブル華やかな時代に雑誌でローファーを見て、大阪のショップで
実物を見た時、こんな靴が自分のものになればいいなあとため息を
ついたことがあった。

当時でも6万円を超えていたので、靴に対して自分の思う
値ごろ感がとんでもないよと警鐘を鳴らしているような値段だった。
でも、光沢のある茶色の皮や、1メートル離れた距離から見る
気品は迫力があり、いつかこんな靴を買ってみせるぞと思ったもの
だった。

その機会は意外と早く訪れ、確かルーマニアの独裁者シャウシェスク
政権が崩壊したときだったか、フィレンツェに旅行したとき
たまたまタニノ・クリスティの看板を見つけてショップに飛び込んだ。
老舗で買い物をするには、わりとカジュアルな身なりで履いている
靴もくたびれたモカシンで厳かな黒いワンピース姿の店員さんが
恭しく試し履きに付き合ってくれるときはバツの悪い思いがした。

大阪のショップで見たローファーの箱が今自分の腕の中にある
という喜びは文字通りティラミス(私を天へ引っ張って)という
心地だったことを覚えている。

この靴は残念ながら数回しか履かなかった。
年とともに足幅が成長したのだろうか、それとも試着時に私の足
までも萎縮したのかな。歩くと苦行をしているようで今現在も
靴箱の中が永遠の居場所と化してしまった。

たまに取り出して見つめては、この靴以上に大枚をはたいて
新しい靴を買うことはないだろうなと反省をしながらも
よく買ったなあとあの当時の自分の思い切りを密かに自慢したり
するのである。


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