雑感
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2007年08月23日(木) |
考える人より―無伴奏チェロ組曲 |
季刊誌「考える人」が届いた。 表紙にはアンナ―・ビルスマが自室で5弦のチェロで演奏している。
200ページほどでさして厚くもない雑誌だが、夏号の特番扱い でビルスマの私邸のカラー写真がふんだんに掲載されている。 私邸は主席チェロ奏者を務めたコンセルトヘボウのホールの 近くだという。 よけいな飾りのない簡素な室内と庭にはあふれんばかりの花壇の花は さすがに質実剛健なタイプのオランダ人だなと思わせる。
ロングインタビューのテーマはバッハの無伴奏組曲で、作曲家の楽譜と 向き合うビルスマの真摯な姿勢が語られている。 「・・・でもやはり私は一人の作曲家に集中して、その作曲家の作品に いちばんいいと思われる方法を探り当て、その音楽にきちんと向き合って 演奏をしなければいけないのではないかと思うのです。」
「『無伴奏チェロ組曲』では、普通だったら起こらないようなことが 起こっているのです。・・・ひとつのチェロの音を私たちが聴く時、 そこには和音も不協和音も聞こえてこない。ところが『無伴奏チェロ組曲』 を聴いていると、その一音のなかに不協和音が発生するんです。しかし、 実際に物理的に鳴っているのではありません。・・・それは聴いている ひとの心から聞こえてくるのです。」
不協和音についての見解では、ビルスマの言わんとしている ことは私にはわからないけれど、味わい深いインタビューなので、 折に触れてページを開いていきたい。
編集者後記で、これからチェロを習う若い人にアドバイスを求められた ビルスマ氏の言葉がよかった。 「なるべくゆっくり上手になったほうがいいですね。・・・丁寧に 敬意を払って扱うこと。そう、チェロを馬だと思ったほうがいいですね。 馬に『こっちのほうへ歩いてください。』とお願いするように、チェロ にも『鳴っていただけますか』とたずねる気持ちがたいせつです。」
須賀敦子の特集もあったし、ビルスマのインタビューだけでも この雑誌を取り寄せた甲斐があったなあと思う。
無伴奏組曲はずいぶん買い足して、カザルス、デュ・プレ、フルニエ、 シュタルケル、ビルスマ、ヨーヨーマ、テル・リンデン、アルノンクール と揃った。 あとはロストロ、マイスキー、鈴木秀美が揃えばいいか。 ビルスマの79年盤も見つかるといい。
世界的なチェロの名手だし、どれが決定盤かというのは、どの顔が好きか選べというのと似ていて難しい。リンデンやアルノンクールのように古楽器の奏者もいる。 古楽器のは、ぎしぎし感があるはずなのに、リンデンの音色は優しくて心地よいのでよく聴いている。
最近のCDの買い方は絨毯爆撃みたいで、財布がいっそう軽くなる。
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