出がけに姉とこんな会話を交わした。
姉:「今日焼肉するよ。早く帰ってくるの?」 「あー、たぶん遅いと思う。」 姉:「ふーん。じゃあ先に食べとくよ。」 「じゃあ行って来ます。」
それからずっと、自分の頭の中は「今日は焼肉なんだ」という 気持ちが軽く残っていた。
楽団の練習に行くと忘年会の出席をとられた。忘年会は焼肉 らしい。あ、でもその日は行けないや。残念・・・。 でも今日焼肉だし、まあいっか。
楽団の練習が終わって、学校に行って勉強しようと思って いたが、焼肉だし帰ろうかな、と軽く頭に浮かんだので 帰ることにした。
家に帰り、玄関を開けると・・・
ん、この匂いは、まさか・・・
「あ、おかえり。今日は鍋物になったよ。」
そのときはじめてわかった自分の焼肉への思い。 そういえば朝、焼肉にするけど鍋でもいいねーとか いう話も聞いたような気がする。 別にどっちでもよかったので何も言わなかったのだが、 いざ鍋物になってみると自分でもびっくりするくらい 気持ちが暗くなった。 しかし子供じゃあるまいし、「えー焼肉じゃないとやだー」なんて 言うことができるはずもない。
結局その日は寝るまでずっと暗かった。 なんでそんなにショックなのか、本当に自分がそこまで焼肉が 食べたかったのかは謎のままだ。 |