凪の日々
■引きこもり専業主婦の子育て愚痴日記■
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アユムを出産した時の医療費控除を申告していなかったので、遅ればせながら確定申告をしに行った。 会場はビジネス街。 夫の会社のすぐ近く。
結婚して、初めて夫の会社を見た時、ビジネス街にひときわ大きくそそり立つその立派な自社ビルに、「こんな凄い会社でちゃんと一員として仕事してるんだなぁ」と夫を尊敬したものだった。 夫自身も当時「この会社に出社する瞬間は誇らしく思える」と言っていたし、近くを通るたび「ここがお父さんが働いている会社だよ」と誇らしげにアイに言い聞かせていたものだ。 「ここがお父さんのかいしゃ?」と見上げるアイの目も輝いていたようだった。
どんなに夫が頼りなくて腹立たしくて結婚した事を後悔しても、遠くを通っても見えるその立派なビルを見るたびに「いやいや、あの会社の中ではちゃんと会社の一員としてやっていってるわけだから、私が夫の良い所を探せないでいるだけなんだ。」と夫に対する尊敬の念を奮い立たせてきた。
久しぶりに見る夫が在籍する会社。 私にとってこの立派なビルが仕事する夫の象徴だった。 でももうこのビルも、夫が退職すれば無関係になるわけだ。 あの「夫って凄いんだ」と感動した気分を呼び戻す場所は無くなってしまう。
時間は折りしも昼食時。 ビルから吐き出され昼食を求め歩く人々の群れに、逆らうように俯きながら歩く。 雪が、舞っている。 ベビーカーの中のアユムは黙って前を見ている。
来年の今頃、このビルを見て「夫はここに勤めていたんだよなぁ」と懐かしく思うか、情けなく思うか。 後者でないことを切に願うばかり。
暁
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