シリーズ「木ノ葉 春夏秋冬」最後の章「種を継ぐ」完成しました。 ぴくしぶの方に上げてあるので、読みたい方はどーぞ。 今を去ること2014年の夏に、こちらに「夏の色」をUPし、翌年春にこちらにも掲載した「春の香は碧」を書いた時にシリーズ化を決めたんですが、まるまる3年かかったんですなー。プライベートでも色々あって、「種を継ぐ」の構想自体は出来てたのに、書ける状態じゃなかったもので。 何とか仕上がって、感慨深いです。 あいにくですが、あまりに長い作品なので、こちらには掲載予定はありません。ご了承ください。 m(__)m
去年の話なので、何ともはやなんですが、ここに書いた「夏の色」の続編と言うか、シリーズものの【秋】バージョンを、既にぴくしぶへ投稿済みです。 今はあまりに時間がないので、こちらには投稿しません。別所でお楽しみくださいませ。 で、そろそろ【冬】バージョンも仕上げないと。何とか元ネタが再放送されたみたいで、良かったよ・・・。
風影宛て手紙悲喜こもごも ※いい加減、こちらの更新もしなくちゃ、ということで、本気でショートショート集です。しかもセリフだらけなので読みにくいとは思いますが、頑張って読んでくださったら嬉しいなっとv 例によって例のごとく、誰のセリフかなんて明記はしてませんので、ご覚悟を。 この話は、ちゃんちゃん☆ が同HNでぴぐしぶへ投稿した、「前略、風影・我愛羅殿へ」が前提の、後日談です。 別にぴぐしぶへ投稿しても構わなかったのかもしれませんが、雰囲気が若干違うのと、さっき書いたように、こちらの更新もしておきたかったので、こちらへのみの投稿となりました。 ・・・まあ、こちらに直接たどり着く人は皆無でしょうが、よしんばそういう方は出来ましたら予備知識として、ぴぐしぶの方も読んでいただけたら幸いです。(CM CMv) しかし、砂の三姉弟書くの初めてなんで(正確にはテマリだけはちょびっと書いたことあるケド)、やっぱり書きづらかったよな・・・★ ------------------------------------ ■ある日の砂隠れ・風影執務室にて■ 「・・・ってところで、火影からの言伝はここまでです。風影様」 「ああ。ご苦労だったな、奈良シカマル」 「それと・・・これは別件、っていうか、個人的なものなんですが・・・」 「ん? 何だ?」 「その・・・ウチんとこの上忍 マイト・ガイから、手紙を預かってまして」 「・・・マイト・ガイから?」 「ええ。先日のお気遣いに感謝して、とのことです」 ・ ・ ・ 「おいシカマル。マイト・ガイが一体、何書いて寄越したじゃん?」 「イヤ、俺は預かっただけで、中身については何も」 「失礼なことを書いてないだろうな? 我愛羅は仮にも風影相手なんだぞ?」 「それはないと思うンすけど。いちおー火影の添削、入ってますから」 「ちょっと待て! 火影の添削だって!? あいつは、我愛羅の20歳の誕生祝いにかこつけて、いかがわしい小説本寄越したような奴だぞ! 信用できるもんか!」 「はあっ!? ひょ、、ひょっとして、イチャパラ寄越したんスか、あの人!?」 「・・・何でお前が、イチャパラとやらの内容知ってるんだ? シカマル」 「・・・テマリ、そこで扇子を取り出すなよ・・・。怖えから。 以前、ホントーに不本意ながら、あの人が音読させられた場面に、居合わせただけだって」 「音読!? 一体どういう理由で!?」 「その件に関しては、そのうち追々に。お前が木ノ葉の忍になってから、な?」 「まあまあテマリ。男同士のことだし、そのぐらいのことで目くじら立てるのも、どうかと思うじゃん。そっち方面に全然関心ないって方が、逆に変な勘ぐり持たれるだけだって」 「うっ・・・そ、それはそうかもしれないが・・・」 「しかし、随分じっくり読んでるな。そんなに長い手紙じゃないはずなんだが」 「どうでもいいけど、どうしてあたしら、こんな離れたところで控えてなきゃならないんだ?」 「仕方ないじゃん。ちょっとだけ席を外せ、って言われたんじゃ」 「・・・っと、読み終わったらしいっスね」 「「「あ」」」 その場にいた3人は、見逃さなかった。 手紙を読み終えた我愛羅の口元にわずかに浮かんだ、柔らかな微笑を。 「が、我愛羅。さっきの手紙に一体、何が書いてあったんだい?」 「ノーコメントだ」 「って、何大切そうに懐へしまいこんでるじゃん。にーちゃんにも読ませろ」 「別に大したことは書いていなかった。心配するな」 「大したことは書いてない、ってんなら、あたしたちも読んだっていいじゃないさ」 「・・・風影とは言え、ぷらいばしーがあってもいいはずだろう」 「「我愛羅〜」」 「・・・・・・・っ・・・・・・!」 「シカマル! あんた本当に、手紙の中身、知らないんだろうね? 何笑い堪(こら)えてるんだよ!」 「あー、その表情は、『大体想像はつくけど、具体的には知らない』ってトコじゃん」 「さ、察しが良くて、助かるぜ、カンクロウ。・・・っ、くくくっ!」 「出来たらその調子で、守秘義務も守ってもらえるとありがたいのだが。義兄上」 「「が・・・我愛羅が、照れてる・・・」」 「で? いつからシカマル君は、砂隠れとの往復郵便屋サンになったのかな〜?」 「茶化さないでください。大体、こう言う事態になったのも、半分はカカシさんのせいなんですから。むろん、残り半分はガイ先生ですが」 「・・・で、こっちは、カンクロウくんとテマリさんから、俺への手紙、と。どれどれ」 「どうせ、ガイ先生が何書いたか教えろ、って言ってるんでしょ? カカシさんが添削したこと、俺、彼らにバラしてますから」 「ご明察。ねえ、どう対処したらいい?」 「ご自分で考えて下さい。俺は一旦、止めたんですから」 「冷たいなあ、シカマル。ま、これは個人的な話だしねえ。どうせだから、ガイが里外から戻って来たら、相談してみようか」 「その方がいいでしょう。どっちみち、風影からの手紙も渡して欲しいし」 「ふふ。我愛羅くんからまたもや手紙が来た、って知ったら、さぞや喜ぶだろうねえ。ガイの奴」 ※本編では書けなかったけど、ガイからの暑苦しくも情熱的な? 手紙を受け取ったら、我愛羅はきっと表には出さないまでも、それなりに喜ぶんじゃないか? と思ったので。あと、誰しもが突っ込んだ、「風影、イチャパラ所持事件」に、何となく触れたくて。 ■拝啓 火影 はたけカカシ様■ 「にしても、ガイ。お前にしては気が利いてるよね。我愛羅くんに手紙でお礼を、だなんて。どうやら思い切り好感度アップ! じゃない」 「イヤイヤ。俺は単に真似ただけだ」 「真似た?」 「うむ。いつの時代になろうが、どんな歳になろうが、さぞや嬉しいんだろうな、と、傍から見ても分かるからだ」 「へ???」 「それなりに好意的な相手から、手紙を貰うと言うのは。・・・なあ? カカシ」 「・・・っ! ゲホゴホゲホ★」 「おや火影様。いかがなされましたか。顔が赤いですぞ?」 「ガイ、お前・・・結構言うようになったよね」 ※本編小説執筆中は、本気で「カカシ秘伝」のことは忘れてたんですが。思い出したら、ついこう言うツッコミしたくなったんです。きっと季節ごとの書簡ぐらい、交換してるだろうし。 ■知られざるもう一つの物語■ 「風影様。私をわざわざ、お呼びと伺いましたが・・・」 「来たか、シジマ」 「・・・じゃ、俺たちはこれで帰るじゃん」 「ごゆっくり。しばらくここは、誰も通さないからな」 「余計なお世話だ、テマリ」 「・・・? 熱でもおありになるんですか? 風影さま。お顔が赤いですよ?」 「イヤ、何でもない。それよりもシジマ、お前への用件なんだが・・・これだ」 「は? 『風影殿へ』? この手紙は一体・・・随分豪快な筆跡ですね」 「スマン。そっちじゃない。お前宛てはこちらだ」 「これ・・・は・・・っ!」 「テマリの婚約者に、最近新たな部下が2名ばかり増えたと言う話だ。姉が木ノ葉に嫁ぐ際、親身になれる者をということで、そのうちのくノ一の方が、正式に配属先が決まった。医療忍者だしな。うってつけだろう」 「あ・・・・・」 「どうせだからこの際、きちんと所帯を持った方が良いという、火影からの提案でな。ささやかながら結婚式を挙げたらしい。 ・・・お前を呼べなくてすまなかった、と俺にも手紙を寄越してきた」 「いえ・・・いえっ・・・! 幸せなら良いんです。生きていれば、また必ず会うことも叶いましょうから」 「そうだな・・・出来れば、平和で穏やかな場面で会えればいいな。シジマ」 ※ちゃんちゃん☆ は密かに、我愛羅×シジマ派です。 実際のところ我愛羅が、結婚してないことに関して大名の攻撃の材料になってる、との件を読んで、なるほどなあ、と納得したんです。なのに、あのラストで結局結婚しませんでした! では、微妙に問題解決になってないでしょ? だったら、シジマと結ばれた方が双方のため、のような気がしまして・・・。まあ、そんな安直には決められないんでしょうけどね。仄かでも良いから、そう言う雰囲気を漂わせたくなりました。 当然、テマリとカンクロウ、ついでにシカマルも何となく、ウチの我愛羅がシジマに惹かれてるってちゃんと、気づいてたり。 ちなみに作中で、我愛羅がうっかりシジマに渡したのは勿論、ガイからの手紙ですv
あれからいくつもの季節が過ぎて、カカシにもガイにも、いろいろなことがあった。ガイも上忍へ昇格し、お互い担当上忍となり、部下を持ち、自らの技を彼らに伝授して・・・。 ガイの春の風物詩の方も、作ったり、作り損ねたりした。 去年はフキノトウを口にした覚えがない、とシカマルは言ったが、カカシもそうだった。ガイはその頃、懸命なリバビリに取り組んでいて、季節を感じるどころではなかったから。 ・・・それだけの心の余裕が、なかったから。 幸い、木ノ葉の里は戦禍を逃れていたから、カカシは忙しい日々の合間にあの居酒屋を訪れ、店主に直接、ガイの負傷と無事を、知らせることが出来た。 店長は手放しで喜んでいた。情報が錯綜していて、一時はガイが戦死した、と言う誤報すら流れていたため、心配していたのだと言う。 ただ、彼が毎年フキノトウを収穫していたと言う秘密の場所とやらは、戦争のせいでかなり荒れたらしい。その年は何だかんだで、いいものは収穫できなかった、と嘆いていた。 『アタシもフキノトウも待ってるから、また作ってって伝えてくれない? ガイちゃんに』 知り合いが大勢亡くなって辛いから、病院には行きたくないのだ、と、店長は苦く笑った。 ------------------------------------ そして今年。 火影となったカカシは忙しい毎日の中、たまたま外に出る機会があった。その際、徐々に暖かくなりつつある風の中に、懐かしい春の香りを嗅ぎ分けたのだ 不意に、あのほろ苦い味噌の味を口にしたくなって。 けれど自分は火影邸に詰めている身だし、ガイはガイで車椅子ながらも上忍として任務をこなしている毎日。とてもあの居酒屋に、揃って出かけられる状況ではない。 半分諦めかけていた矢先、本日のガイ班任務のドタキャンがもたらされたのである。 ───このチャンスを逃したら、来年まで巡ってこないかも。 そう思うといてもたってもいられず、急いで居酒屋の店主に連絡を取った。今年のフキノトウの出来はどうなんだ、と。・・・わざわざ手紙をしたためて暗部に託したため、何かの極秘暗号と勘違いされそうになったのは、余談である。 すると、去年の分を取り戻すぐらいに豊作だ、と返事が来たのだ。 「ってわけで、話をつけた。ガイ班は店長と一緒に、フキノトウの収穫とその後のもろもろの処理をお願いねー。調理にはココの台所、貸すから。後片付けもお願いv」 「「「はあっ!?」」」 一見、下忍が割り当てられそうなこの唐突な任務に、ガイ班は皆、豆鉄砲を食らった鳩、みたいな表情になる。 「カカシよ・・・何もそんな任務、俺たちに頼まずとも・・・」 「他の班には無理だからね、この任務。 まずは、火影邸に出入りできるぐらい信用の置ける立場じゃないと、ダメだし」 「信用・・・あたしたちはそれだけ信用されてる、ってことなんですねv」 「当然だよー。それに、フキノトウの取れる場所って一応、店長の秘密の場所らしいから、そっちとも馴染みがないと教えてもらえないだろうし。あ、もちろん、他言無用だからね」 「も、もちろんです! 男に二言はありません」 口八丁に持ち上げれば、若手二人はあっさり陥落。 「それにあいにく、他の班は別の任務で全員、出払っちゃってるの。今日戻ってこられるかどうかも、怪しいし。おまけに、春の天気って変わりやすいでしょ? 今日は晴天に恵まれてるけど、明日から崩れてくるって話だし」 「むむ・・・仕方ないか」 まるであつらえたような状況に、さしものガイもそれ以上口を挟まない。 一方、まだまだ少年の域を脱していない2人の部下は、何やら楽しそうな素振りだ。 「それにしても、フキノトウかあ・・・ネジが結構、気に入ってたよね」 「そうでしたねえ。一度お弁当に焼き味噌を、手ずから作ってきたこともありましたし」 「「え?」」 思いもよらない言葉に、カカシとガイは目をしばたかせる。 「そんなことあったの? ガイ」 「いや、俺も初耳だ。・・・本当なのか? テンテン」 「え、あれ? ガイ先生は知らなかったっけ? お弁当、ってことは、里内にいた時よね?」 「でも、確かにあの年の春は、ガイ先生は特別任務だからって、僕たちとは別に里外に出られてたことが、何度かありましたから」 「ああ・・・あの頃のことか・・・」 心当たりがあったらしい。ガイは亡き弟子の隠れたエピソードに、少ししんみりとした表情となった。 「まさか覚えていたとはな・・・実は一度だけ、こいつらを連れてあの居酒屋で、夕飯を食ったことがあったんだよ。で、例のごとく頼まれて、焼き味噌を作ってやってたら、あいつだけが興味を持ったんだ」 「ネジ君だけ? リー君たちは?」 「あたしたちは一応は食べては見たけど、あんまり好きにはなれなかったんですよ。苦かったから」 「僕も。効き目が滋養強壮ぐらいだし、無理に食べなくてもいいんだぞ、って先生が言われたので、つい」 ただ、その中でネジだけが、少しずつだけではあるものの、箸をつけていたのだという。あれだけダメ出しの傾向があったのに、今になって思えば確かにあまり文句が出ていなかったな、と、ガイは感慨深げだ。 「だが、特にネジに作り方は教えなかったんだがなあ・・・」 「じっと見てましたよ、あの時、先生の手元を。僕、覚えてます」 「ただし、何を食べさせれるのか心配だ、って雰囲気でしたけどねー」 「ガイ・・・教え子たちに日頃、一体何食べさせてたわけ?」 「失敬な。食えるものしか食わせとらんぞ、俺は」 「ええ、もちろんですとも!」 「主にカレーとか、カレーとか、カレーですけどね」 「・・・・・」 「言うね、テンテンちゃん」 そして、リーたちの話によれば、翌年の春。里内で修行の日、ネジが件の焼き味噌をおにぎりと共に、持参したのだそうだ。そして、どうやらその様子から察するに、ガイに味見をしてもらいたかったらしい。 もう少し自分好みにしたいから、コツを知りたい、と。 だがその直前、肝心のガイは急遽特別任務とやらで、里を離れてしまっていたのだ。それも、長期にわたって。 だから結局、ネジの手作りの焼き味噌が、ガイの口に入ることはなかった。リーたちも、何となく遠慮して、食べようとはしなかった。 『ガイがどんな気持ちで、これを作っていたのか。 ほんの少しだけではあるが、俺にも分かる気がしたよ・・・』 ネジが焼き味噌を持ってきたのは、それっきり。 だが、おにぎりと一緒にじっくりと味わいながら、彼はそう呟いていた───。 「その時僕、どういう意味ですか? って聞いたけど、ネジは教えてくれなかったんですよね。ガイ班にいれば、そのうちに分かるさ、って」 「そうそう。けど、あたしにも未だに分からないんですよ。ガイ先生、どういう意味なんですか?」 「・・・・・・」 首をかしげるリーとテンテン。彼らの様子に、カカシはガイと顔を見合わせ、あいまいに笑うしかない。 きっとネジも、若くして上忍にまで昇りつめた彼も、気づいたのだろう。 天気の良い、春に、フキノトウを、収穫し、調理する───たったそれだけの一連の作業が、どれほどかけがえのない平和の象徴なのか、と言うことに。 だから、こればかりは、言葉で説明しても意味はない。 「だからだ。それを今から、確認しに行くんだ。さあ、出かけるぞ。リー。テンテン」 「いってらっしゃい。お昼は店長が、お弁当用意してくれるってさ」 「ええー、つまり、午前中いっぱいは収穫に時間をかける、って意味ですかあ?」 「修行ですよ、テンテン! そう思えば、苦にはなりませんよ、きっと」 「リーの言う通りだ! 天気もいいし、たまにはこういうのも楽しいぞ!」 門の前で待つ『依頼人・その弐』の元へ、部下を引き連れ赴こうとしたガイだったが、不意に振り向いたかと思うと、ぽつり、カカシに告げた。 依頼人・その壱、の六代目火影に。 「カカシ。・・・スマンな。ありがとう」 「俺も食べたかったんだよ。気をつけて行っといで」 木ノ葉随一の機動力は伊達ではなく、言うが早いか3人は姿を消す。 彼らを見送り、火影邸へ引き上げようとしたカカシは、ふと、僚友の残した言葉に、苦笑するのだった。 「スマン、ってのはともかく、ありがとう、って・・・木ノ葉の平和をありがとう、って意味もあるのかね、ガイ?」 ───それは、お互い様デショ・・・? そうして。 春の香が立ち込める中、騒がしく執務室へとやってくる一同の気配。 「おーい! 今年はなかなか、いい出来のが出来たぞ、カカシ!」 「あれ、シカマルくんもいらっしゃったんですか」 「お邪魔するわよお。あらあら、本当に火影様やってるのねえ? 元・写輪眼サマは」 「平和な泥だらけ、って言うのも、たまにはいいもんですねー。あとで銭湯に直行だけど」 「ご苦労様、みんな。おっ、気がきくねえ、ガイ。ちゃんと白米も炊いてくれてたんだ」 「さすがに昼間から酒、というわけにはいかんからなあ」 炊き立ての白米をおにぎりに、焼き味噌をつけていただく。 これに勝る平和が、そうそうあるだろうか? 「・・・うん、随分久しぶりだけど、美味しいねv」 「ホントだ・・・アタシの味覚、変わったのかしら? あんなに苦いと思ってたのに」 「大人の味ですねえ。意外にいけます」 「お店ではお茶漬けにもするのよ? シメにサイコー! ってねv」 「それも美味しそうだなあ」 「・・・カカシさん、今は執務中ですから。ンな恨めしそうな顔、しないでくださいよ」 「そうだぞカカシ。何のために白米を炊いたと思ってるんだ」 「分かってるよー二人とも。言ってみただけだってば」 ───あの日、危機的状況の中、うちはマダラの前で。 『木ノ葉の碧き猛獣は終わり 紅き猛獣となる時が来た』 そう、ガイは覚悟を決めていたけれど。 「ガイー」 「何だ? カカシ」 「やっぱりお前には、紅き春より、碧き日々の方が似合うンじゃない?」 カカシがこめた言葉の意味を正しく知るのは、カカシ自身とガイ、そうしてあの場に居合わせたリー、の3人だけ。 でも。 「・・・そうだな。願わくばこの碧き春が、出来うる限り長く続くよう、励むだけだな」 ガイがそう答えるのに、だがこの場にいる皆が、同意するのだった。 フキノトウの花言葉は、待望、愛嬌、真実は一つ。 そして───仲間。 ■終わり■ --------------- 実は別所には、フキノトウの別の花言葉について、短く解説してあります。できたらあっちも、読んでくださいねーv CMでしたvv
「ガイちゃんなら来てないわよお?」 任務完了の報告を滞りなく済ませ、開放されたカカシはとりもとりあえず、ガイの行きつけのあの居酒屋を訪れた。 ちょうど夕刻に差し掛かる頃で、営業開始の暖簾を用意している店主と、実に1年ぶりに顔を合わせたところ、開口一番、そう言われてしまった。 とりあえずお入りなさいな、と促され、店内に足を踏み入れたところ。 「・・・・・この香りって・・・!」 「断っておくけど、ガイちゃんには今年まだ、作ってもらえてないのよねえ。でも、お客さんからの注文があるし、今回のは仕方なくアタシのお手製、ってワケ」 嗅ぎ覚えのあるフキノトウの香りに、思わずその場に立ち竦む。が、店主の告白にどこか力が抜けて、そのままカウンター席に陣取った。 簡単な料理を注文したものの、何から聞けばいいのか躊躇しているカカシをどう思ったのか、店主はどこか痛ましい表情で話しかけて来た。 「ここのところあなた、ガイちゃんとずっとすれ違いばっかりだったんですって? 体が鈍る、とか言って、退屈そうだったわよん」 「・・・来てたの、あいつ」 「一応常連だしねえ。けど、それも1週間も前の話。詳しくは教えてくれなかったけど、特別任務を命じられたとかで、しばらくは戻れない、って言ってたわ。 折角の花見の時期なのに、帰って来る頃までには散ってるだろう、って残念がってたわねえ」 「・・・・・」 カカシが里を出た頃は、桜はまだ蕾のままだった。そして戻って来た今は、ほろほろとほころび始めていた。満開はこれからだ。 その桜が散るまでにガイが戻らない、と言うことは、相当長い期間任務に縛られることを意味する。 「・・・けど、野生のフキノトウは出始めているよね? ガイに例の焼き味噌、頼まなかったの?」 つい咎めるような口調のカカシに、店長は難癖には慣れているのだろう、軽く肩をすくめて見せた。 「あなた、よほど木ノ葉から離れていたのね。道理で見かけなかったはずだわ。 あのね、里はここのところずっと雨が降ってて、収穫なんか出来なかったの。ガイちゃんも何かと、忙しかったし」 「・・・つまり、店長があいつに焼き味噌をせがむのは、天気が良くてフキノトウが取れて、ガイの体と時間が空いてる時期に限られてた、ってワケ?」 「チッチッチッ。甘いわね。写輪眼ともあろう男が、肝心な条件を忘れてるわ」 もったいぶりながら言葉を切り、出来上がった料理をカカシに手渡してから、厳かに告げられる店主の言葉。 「最大不可欠な条件、それは、ガイちゃんが無事で、心身ともに健康であること」 ───ああ、やっぱり。 ここの店にとって、フキノトウの焼き味噌はつまり、ガイが無事であることの証、みたいなものだったのだ。 忍をやめたと言う店長はともかくも、ガイがこれほど香りの高い食材を扱うとなると、さまざまな意味で慎重にならざるを得ない。 調理を行なう手が無事なのは言うに及ばず、ガイに血生臭い任務が割り振られていないことが、最低条件。任務直前でも、任務直後でもダメだ。 直前なら、不自然に強すぎる残り香が体につき、隠密を必要とする任務に支障をきたすかもしれない。あれほどカレーの好きなガイが、重要任務の前後には決してカレーを作らないし口にしないのと、同じ道理だ。 そして直後だと、体にまとわりついた血の香りが、折角のフキノトウのいい香りを、台無しにしかねないから・・・。 あの草むらで、フキノトウを摘むのをやめた時、カカシはそのことに気づいたのである。 ガイのお手製のあの焼き味噌は、彼が束の間ながら、当面の平和を勝ち得た年のみ、振舞われるものなのだ、と。 「・・・アタシがまだ忍やってた時・・・あ、結局下忍止まりだったんだけどね、色んな任務してて。ちょうどやっぱり下忍だったガイちゃんと、知り合ったのよ」 すすまないまでも料理に箸をつけたカカシの傍で、店主は昔語りをする。 「ひどい戦闘があってね。みんな全滅するかも、って覚悟したぐらいに、ひどいの。けど、ガイちゃんだけは前向きでねえ。 『絶対に生きて帰るんだ、だから皆も頑張れ!』 って叱咤激励されちゃった」 「はは、ガイらしいな・・・」 「でしょでしょ? おかげで全員、無事木ノ葉に帰り着くことが出来たんだけどね」 見れば店長は、自分で作ったというフキノトウの焼き味噌を、手近な器に盛り付けている。 「その時のアタシ、結構ヤバい怪我してて。もし意識を失っちゃったら、そのままこの世とはサヨウナラ〜、って状況だったの。だから、ガイちゃんってばアタシに肩を貸しながら、何かと色々話しかけてくれててね、意識を途切れさせないようにしてくれてた」 そうして、見栄えだけはガイの作ったものと遜色ないものを、カカシに差し出した。 「その時に話してくれたことの1つが、このフキノトウの焼き味噌の話。ガイちゃんのお父さんの好物だったんですって?」 「そう、聞いてるよ」 「任務で収穫の手伝いに行った時、そこの農家の人から作り方を教わったんですって。 あんたたちがこの辺を守ってくれてるから、今年もこの平和ないい香りと再会することが出来たんだ───って、そのお礼に」 「・・・それで?」 「何となく、察してるでしょ? その思い出話聞いてるうちに、これ以上ないってご馳走に思えてさ。食べてみたいな、ってアタシがつい言ったら、『生きて帰ったらいくらでも作ってやる』って、ガイちゃんが約束してくれたってワケ」 「それを律儀に、今でも守ってるわけだ、あいつは。・・・マメだねえ」 ───自分以外の人間にも、相変わらず熱血で情熱的な態度をとってたんだ。 それが微笑ましくて、それでいて少し悔しい気持ちもして。 カカシは軽く両手を合わせてから、店長お手製とやらの焼き味噌を口にした。 似た香りで、似た味、似た苦さ。 それでもやはり、あの時食べたものとは何となく、違う味。 「これはこれで、結構美味しいんだけどなあ・・・」 「でしょ? でもどこか、味気ないのよねえ」 アタシの熱血と根性と青春が足りないのかしら? と本気で首をかしげる店長に、カカシは思わず吹き出す。 ───任務は無事遂行したものの。 ガイが両手に大火傷を負い、木ノ葉の病院に担ぎ込まれた、とカカシが聞いたのは、それから10日後のことだった。 ------------------------------------ 「あの・・・カカシさん?」 「何? シカマル? その書類にはちゃんと、サイン入れたデショ?」 「いえ、そのことじゃなくて・・・」 その日。 六代目火影として、執務室でさまざまな雑務を進めていたカカシは、彼の側近となった奈良シカマルに、それは怪訝な目を向けられた。 何かしくじりでもしただろうか? と首をかしげていると、「プライベートに口出ししたくはないんスけど」と前置きした上で、シカマルはぼそぼそ、と言葉をつなげる。 「その、さっきからこの辺一帯に漂いまくってる、青臭いっていうか、独特の匂いが気になって。・・・何なんスか?」 「え? ああ、これ? ゴメンゴメン、すっかり鼻が慣れちゃったから、意識してなかったよ。ひょっとしてシカマル、こう言う香りって苦手な方?」 「苦手、ってほどじゃねえけど。・・・漢方薬でも煎じてるとか?」 「漢方薬、ねえ。まあ、広い意味では、似たようなものかもしれないけど」 ───ナルトたちと比べて随分大人びていると思ったんだけど、意外にそうでもないってことね。いい香り、って思えるには、もう数年必要ってトコロ? 何だかんだ言って、シカマルもまだまだ青年の域なんだな、と、ちょっとだけ微笑ましくなるカカシである。 「どっちかと言うと、ご飯のお供というか、酒の肴、の類だよ。ガイに頼んで、厨房で作ってもらってるんだ」 「・・・ちょっと待ってください。ガイ班って、今日から短期の里外任務のはずじゃ」 「あーそれね。今日になってドタキャンされちゃって。いい迷惑だったよ」 もちろんキャンセル料はたんまりせしめたけど、とカカシが浮かべた黒い笑顔に、シカマルもそれ以上は突っ込まない。 「・・・で、折角ガイの体が空いたから、どうせなら、って俺が依頼したんだよ。材料調達から後片付けまで一式、全部やってくれ、って。ガイ班総動員で」 「仮にも上忍に、腐っても火影が、何て気楽に依頼してるンすか」 「腐っても、って・・・何かトゲを感じない? その言い方。 けどその分だとシカマルの家じゃ、今の季節食卓に出さないってコト? ヨシノさんなら手ずから、作ってくれそうだけどなあ」 「は? 俺んちの食卓に、っスか? 何を?」 「ヒントは、この香り。それと、今の季節限定の食材。・・・さすがの木ノ葉一の頭脳派も、分からないかな?」 「変なことで挑発しないでください」 半分からかわれているのを察したのだろう。目をつぶって春の香りを確かめながら、頭のデーターブックを総動員した後、おもむろにシカマルの口を突いて出た、言葉。 「フキノトウ・・・か?」 「ごうかーくv やっぱり君の知識の泉は広いねえ」 「それ、単にオッサンくさい、って言われてる気、するンすけど。 ちなみにうちでは、おふくろが天ぷらにします。揚げたてならそこそこいけるンすけど、冷めると結構苦いから、俺はあんまり食わねえな」 もっとも、と、切ない思い出にかられたらしく、少しだけシカマルの顔がうつむき加減になる。 「親父は、好きだったみたいですね。そう言えばこの季節、親父が家で夕食をとる日は決まって、食卓に並んでいた気がします」 「・・・そっか」 「去年やおととしは・・・どうだったかな。あの頃は色々といっぱいいっぱいで、食欲とかあんまりなかったから、出てなかったかも」 精をつける、と言う意味でも、息子が苦手なものを食卓に並べるような母親では、なかったろう。きっと、少しでも箸がすすむよう、好きなものばかり作ってやっていたに違いない。 今になってその配慮に気づいたと見えて、一瞬惜しむような表情を浮かべて両眼を閉じ。 再び開いた時には、シカマルにはいつものけだるそうな目が戻っていた。 「・・・それで、カカシさんのトコはどうだったんスか? 何か、味噌の匂いまでしてるけど、そう言う調理方法だったとか?」 「違ーうよ。俺の懐かしの味じゃなくて、あいつの親父さんの好物」 「は? ガイ先生の親父さんの味を、リクエストしたんスか? 何で?」 「んー。平和になったなあ、って思ってねえ」 「?????」 さすがのシカマルにも、その辺の事情は推理できないだろう。情報が足りなさ過ぎて。 ───あの年の晩春。 何とか時間を見つけてカカシが見舞いに訪れると、ガイは病室で食事の真っ最中だった。 指に巻かれた包帯と痛みに悪戦苦闘しながらも、戸口の友人の姿を見つけた途端、いつもの開けっ広げな笑顔を向ける。 『火遁使いがいたんだって?』 『おうよ。結構ヤバかったな。何せ火に邪魔されて、なかなか近寄れなかったんだ』 『・・・どうせお前のことだ。無理やり火の中に突っ込んで、突破口を開いたんだろう?』 『さすがだな、そこまで見抜いているとは。それでこそ、マイ・ライヴァルだ!』 つい恒例のナイスガイ・ポーズをしかけて、指の痛みがぶり返したらしい。「痛くないぞおおおおっ!」と、無駄な気合を入れるのを、カカシはどこか安堵した気持ちで眺めていた。 ───おそらくは、火遁使いが一番の難物だったのだろう。 むろん敵が単独で行動するわけもないから、他の仲間たちは別の忍たちからの攻撃をしのぐのが、精一杯で。何とか迅速に動けるガイが、やや強引な方法で火遁使いを倒した、といったところか。 両手指の大火傷は、その代償だ。 分かっている。それしか方法がなかったのだ、ということは。 けれど、もう少しやり方を考えろ、と思わずにはいられない。 そうでなくても、もともと体術使いは直接的な攻撃な分、ダメージもまともに食らってしまうのだから。 『・・・今年はもう、例のものは作ってやれないなあ・・・』 味気ない病院食に、記憶が刺激されたのか。ボソリ、と呟くガイ。 『命あってのものだね、だろ? 店長も分かってくれるんじゃないの』 『そうは言っても、この機会を逃したら、次は1年後だ。それも、作ってやれるかどうか、約束できるものでもないし』 悔しそうに呻くガイの横顔を見ながら、カカシは改めて確信する。 やはりガイにとっても、フキノトウの焼き味噌は、平和な春の訪れの証だったのだ、と言うことを。 あれだけ渋々、と言う体を装いながら。 まるで、分かる者には分かる、合言葉のように。 だからこそ、店を訪れた多くの客が、店長の作ったものより、ガイのものを好んだのではないか。 『・・・あのさ。妙にこだわるよね。親父さんの好物だ、って言ってたけど、ダイさんはひょっとして毎年作ってたわけ?』 『言われて見れば・・・そうだったな。下忍止まりだったから、よほどのことがない限りめったな任務は回ってこなかったらしい。ほぼ毎年、食ってたっけ・・・』 その思い出故に、毎年の春の風物詩として、ガイは覚えているのかもしれない。子供の頃の出来事は、1年1年が全て大切な宝物なのだから。 『・・・現状を嘆いても仕方がない。もっと俺が、強くなれば良いだけの話だなっ』 退院したら早速修行せねば、と。 ガイが出した結論は結局、呆れるくらいいつも通りのポジティブなものだった。 ■続く■ ※スミマセン・・・後編まであります・・・
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