夕暮塔...夕暮

 

 

南から - 2005年05月04日(水)

もう五月が来てしまった。薫風自南来という美しい禅語の通りに、きらきらと香りたつような連休の光、ぬくもった南風を受けて昼間からお酒を飲むしあわせ。知人の乗ったバスを見送って、少し遠い自宅までほろ酔い加減で歩く。道なりの銀杏並木に緑のかげが宿って、また初夏が巡ることを思う。


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花の気配に - 2005年04月08日(金)

まちは淡い夢をみているほの白く花の気配にくるまれた夜




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大学時代の後輩と待ち合わせて、遅い時間からのお花見。私ひとりだけ仕事の上がりが早いので、一旦自宅に帰って仮眠してから出かけると、改札の前で待っているのは、最近うちの近所に引っ越してきた青年だけ。もう1人は仕事が終わらなくてさらに遅れるとのことなので、遅くまでやっているカフェでお茶を飲みながら待つ。小一時間後に現れた後輩は疲れ果てた気配をにじませて、溜め息つき気味に「今日は、飲みます」と宣言する。
言葉通りの豪快なピッチでお酒を進める彼につきあいながら、ライトアップされて深い緑色に輝く桜を見上げる。毎年この花が満開になる頃は世の中が少しのぼせたようになる、その気配に包まれて他愛もない話を肴に飲むお酒は楽しくて、わりと酔っ払って帰宅した。


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あたたかい波 - 2005年03月22日(火)

白いサイネリアの鉢にお水をあげすぎて、しおれてしまった。陽にあたれば土もちょうどよく乾いて、元通りぴんとしてくれるんじゃないかと思うのだけれど、天候が悪くて外に出してやれない。ごめんねもう少し辛抱してねと声をかけながら、上手に世話できるだろうかとさんざん逡巡してからようやく決心して買ってきたのに、やっぱりしおれさせている自分が情けなくて、なんだかもうサイネリアに対して申し訳なくなる。
細かい雨の降る中を知人の家へ向かい、昼食をご一緒する。歩き始めたばかりの赤ちゃんをだっこさせてもらって、あたたかい波が押し寄せるような多幸感。あっという間に飲み込まれて、芯まで潤う。


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やわらかに灯る - 2005年03月03日(木)

プロポーズされた。今から5年や10年後、この日のことをどんな気持ちで思い出すのだろうと思う。ふと見上げたカレンダーの日付は桃の節句、夕暮れの菜の花畑のパステル画が、やわらかに灯っている。


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わからない - 2005年02月27日(日)

客観的に見れば大変に面白い(というかとんでもない)事があって、以前別の人から言われた事を考えたらずばり重なるのではないかと思ったので、親しい友人に相談してみる。最初は「モテモテじゃん」と笑っていた友人の声から、だんだん明るさが消えていく。どういうことなんだと思う? と尋ねてすぐさま返ってきた言葉は、「母性だ」。絶対そうだよ、ともの凄い確信度で証拠をいくつか挙げた後、自分の実感としてもわかるなどと言い始めるので、少し話がずれながらも和んだムードになる。電話を切る時に「じゃあまた…気をつけてね」と重たい調子で言われて、やっぱり最後はそこに落ち着くのと笑ったら、「うん」と彼女も笑いつつ、その後には真剣な声でもう一度繰り返した。
よくわからない事だらけだけれど、どうなるにしても傷つけたのは私がよくなかった。そこは忘れないでいよう。


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忘れ雪 - 2005年02月24日(木)

忘れ雪降る夜にメール待っている お風呂上がりの湯気消えるまで



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時計の長い旅 - 2005年02月22日(火)

西はやわらかい早春の霞、薄紫を淡い桃色でくるんだような。音楽を聴きながら坂道を下る、道なりに香りを広げる沈丁花のつぼみが着々と増えていて、季節が移り変わろうとしていることを教えてくれる。春から知人がこの街で暮らすようになるかもしれないと考えたら、同じ道でも随分と楽しい。
高すぎるヒールを削ってもらうためにミュールを修理に預けて、掛け時計の修理をお願いしていた時計屋さんの方にも寄ってみたものの、「取り寄せた部品が合わなくて、また別のを取り寄せてるので、もうちょっと待ってね。また寄ってみてね」とのこと。直るならよかった、新しいのを買わずに待っていよう。でも確かあれって、半年以上前に預けたような…。時間の流れが、どこかどうにかなっている印象。桜が散る頃までに戻ってきてくれたら嬉しいけれど、どうかなあ。



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歌を風に溶かしつつ下るきさらぎの坂道をきみといつか歩こう


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発熱 - 2005年02月10日(木)

反省してた、と友人が言う。何のことをと尋ねると、「何だと思う?」と尋ね返される。…どれかな、いっぱいありすぎて。そんな風に笑っておいて、とりあえずは次の約束を。発熱して眠ればいつものごとく不思議な夢を見て、朝方目覚める。シーツの上、右手の指先が何か冷たくて硬い石みたいなものに触れている。握りしめて確認すると、昨日なくした筈のオーロラ加工のスワロフスキー、どこかで落としたとばかり思って沈んでいたのに。嘘みたい、良かった、もう絶対なくさない。サイドボードの上で静かに光を反射するのを確認してから、もう一度眠る。


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野茨で - 2005年01月29日(土)

これ以上遠くへと流されぬように野茨で星を戒めている




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煌然と浮かぶ金色がかった降り月、もう日付もとうに変わって、天の頂きを通り過ぎた場所にいる。先週も、昨日も今日も言えなかった。知らせたら悲しむだろうからとかあまりに不確定だからとか一方的に理由付けをしているけれど、そればかりではないという、自覚だけは、あるのに。


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優しげな - 2005年01月17日(月)

優しくてよどみない夢をみていたよ さようなら僕はその先へ行く



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世が震えてあなたがいなくなった朝を忘れないこわいまだ忘れない


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