「硝子の月」
DiaryINDEX|past|will
「今更そんなことで驚くなよ」 生意気な少年が無愛想に呟く。 「お前までそんなことを……」 一緒に驚き担当してきたじゃないかと、少々裏切られた気分になりながら恨めしげな視線を送る。 しかし考えてみればこの少年が連れているルリハヤブサだって相当珍しい生き物であるし(売り払えば三年は遊んで暮らせる額になる)、「運命を知る」という魔法使いの少女だのそのおまけだの蟲使いだの貴族だの王族だの『輝石の英雄』だの『影王』だの、とにかくここのところ驚くべきことばかり起こっている。それにそもそも「硝子の月」などという大陸最大の謎に迫ろうとしているのだから、少年の言うことにも確かに一理ある。これしきのことで驚いていてはいけないのかもしれない。
|