「硝子の月」
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誰なのだろう。あの五角形の肖像画の間にも、彼女の居場所はなかったし、若き王も彼女については何も言っていなかった。 (……いや) もしかしたら、と思う。 (まさかあれが「硝子の月」か……?) 王はそれに意志があるらしい口振りだった。ならば、人の姿をしていたとしてもおかしくはないのかもしれない。 しかしそう思っておきながら、 (違う) 一方ですぐにそれを否定する。根拠は無い。ただ何となく、確信に近い強さでそう思ったのだ。それは彼女が「硝子」と言うにはあまりにも月そのものに似ていたせいかもしれない。
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