「硝子の月」
DiaryINDEXpastwill


2004年10月22日(金) <災いの種> 瀬生曲

「あーあ、言っちゃったんだ」
 愛しい少女の発言に、青年はふんと鼻を鳴らした。
「ちょっと妬けるな」
 頭の後ろで組んだ自分の腕を枕に、足を組んで寝そべる姿におかしな所はない。ただし、その場所は何の支えもないはずの空中であったが。
 そしてそこから彼等が宿泊している屋敷までの距離はと言えば、到底会話を盗み聞き出来るものではない。
 しかし彼の耳は確かに少女の声を拾い、今は金色の瞳孔は少女の姿を映していた。
 拗ねたような顔をして、青年は俯せに寝返りを打つ。
「『災いの子』なんて、僕もだけどさ。災いだらけで大変だよね」
 誰にともなく呟く彼の口元には、言葉とは裏腹にいつの間にか笑みが浮かんでいた。


紗月 護 |MAILHomePage

My追加