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しもさんの「新聞・書籍掲載文」
しもさん
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1995年09月23日(土)
気分や心を写すへのへのもへじ(37歳)

静岡新聞 朝刊(読者のページ)

たった七文字の平仮名で表現された、誰もが知っている
「へのへのもへじ」。
何気なく書いてみたら、案外二枚目になって気分がよくなった。
もう一度書いてみたら、今度は怒って見えた。
調子に乗って何度も書いてみたが、
同じ表情の「へのへのもへじ」はやっぱり書けなかった。
気分によって違う彼の顔は、自分の心を見透かされているようで
なぜか怖かった。
しかしどの顔も口を「へ」の字にキュッと結び、ちょっと近寄りがたい。
どんなにまゆ毛や目、鼻を優しくかいても駄目である。
何とかして「笑顔」が書きたいと考え込んでいた私の横で、
小学校五年の娘が「口を『し』にすればいいよ」とぼそっと言った。
なるほど。今度は何度書いても、笑顔になる。
どんなにまゆ毛や目、鼻の「へのへのも」を怒っているように書いても、
笑顔になる。不思議なものだ。
田んぼのかかしは「へのへのもへじ」だけど、
人間の顔は「へのへのもしじ」でありたい。
そして、笑顔いっぱいに囲まれて生活ができたら、
どんなに幸せなんだろう、と思う。



1995年09月20日(水)
ギャル軍団を前に臆病だった(37歳)

毎日新聞 朝刊(みんなの広場)

友人が結婚をした。十六歳の年の差を乗り越えてのゴールインである。
披露宴が無事お開きになり、さて二次会は「カラオケでも・・」と
いうことになった。
メンバーはもちろん新郎友人三十七歳のおじさん軍団と、
新婦友人二十一歳のピチピチギャル軍団。
さて、どう対処しようかと考え込んだ公務員の私。
二匹目のドジョウを狙っている独身組、人と話すことが得意な営業マン。
せっかくのチャンス、一緒に楽しもうとマイクを握った人事担当者。
大学を卒業して十四年。
みんな違った職業に就き、それぞれの人生を過ごしてきた。
毎日の積み重ねが、こんな時の対応に表れる。
ついつい事務職に徹していると、人と話すことが苦手になってくる。
「行政は最大のサービス業」といった言葉が、私の脳裏を横切る。
本当は、住民の声を一番聞かなければならない立場の私が、
一番臆病になっていたことは反省に値する。
今からでも努力したい。



1995年09月03日(日)
自転車の窃盗 立派な犯罪だ(37歳)

産経新聞 朝刊(談話室)

いつも通勤に使っていた自転車が盗まれていた。
いくら駅前とはいえ、しっかりカギをかけ、
所定の場所に駐輪していての出来事である。
翌日、職場の仲間に大騒ぎで報告したら、ほとんどの人が、
自転車を盗まれた経験があって驚かされた。
「運が悪かったね」「そのうち見つかるよ」と励まされ、
日常茶飯に横行していることを知らされた。
私にしてみれば、せっかく健康のためと始めた自転車通勤ができなくなる。
自動車の便利さに甘えてしまうのがつらい。
それにしてもカギを壊してまで他人の自転車を盗むことに、
抵抗を感じなくなってしまったのか。
犯罪だということを忘れてしまったのか。
酔っ払っていたからとか、最終のバスに乗り遅れたから・・は
言い訳にならない。
銃犯罪に比べれば・・という問題ではない。
自転車を盗んでも何とも思わなくなった時代だからこそ、
大きな犯罪が起きる時代になった気がする。