※えーーー。約3ヶ月ぶりの、まともな更新になるかと。 今度更新する時は絶対小五郎ものだ! と思っていたのに、あくまでも予定は未定。同じサンデー連載ものでも、思いもよらないジャンルにハマってしまいました。 ・・・ええ。当初読んだのは単行本4巻の教習所時代の話で、ごくフツーに物語を楽しんでいたはずだったのに、全ては20巻から登場くれやがりました、あの男のせいです。おまけにアニメ声が松本保典なものだから(ガウリィ〜vv)、もうすっかりドツボ。声優さんのコメントを聞きたいがためだけに「V」のDVD第3節を買い、今またケーブルテレビで放映している「V」をセコセコ録画している真っ最中です。・・・ああ、もう既に連載は終わっていると言うのに・・・☆ ここのレンタル日記ではや○いなし、と決めているので、とりあえず蒲生さんと榎木さんの友情話を書いていきたいな、と思っております。でわ。 ************** 「こいつはやっぱり、水神祭だな」 今思い出そうにも、あの時一体誰が言い出したのかはっきりしないのだが。 チャンピオン杯優勝者のゆっくりとしたウィニングランを眺めていた時に、いつの間にかそんな話になったのは事実。 彼───蒲生さんは実に久しぶりのSG復帰にもかかわらず、そんなブランクなど露ほども感じさせない強さを発揮し。 今節のチャレンジ杯で見事、SG初優勝を遂げたのである。 ところで。 一般人にはおそらくなじみがないだろうが、我々競艇選手には「水神祭」なるものがある。G1初勝利、SG初勝利など、レース上でおめでたいことがあった時に、その対象たる選手を水の中に放り込む、いわば通過儀式だ。 むろん私も随分昔、G1初出場で初勝利を決めた時、先輩たちの手によって水神祭でびしょぬれになった記憶がある。 その時の、まるでいたずらっ子のようにはしゃいでいた先輩たちの中には、まだ髪を染めていない頃の蒲生さんの笑顔があった・・・。 『ひどいなあ、蒲生先輩。今の、率先して加わってたでしょう?』 『阿呆、こう言うめでたいことに加わらんでどないするんじゃ。ま、そのうちワシの水神祭に参加させたるから、そん時今回の恨み晴らしたれや、榎木よ』 『ええ、それはもう。期待して待ってますよ』 ・・・・・・。 「ちょ、ちょっと、蒲生さんに水神祭っスか? お気の毒ですよー。もう11月で水も冷たいし、それに、これから勝利者インタビューとかまだあるでしょ?」 さすがに、我々より年少者の波多野君は、遠慮がちながら反対論を口にする。 でも。 「何を言っとるんだ波多野。めでたいからこその水神祭だろが?」 「犬飼さん・・・何でそんなに嬉しそうなんですか・・・」 「あきらめろ波多野。我が身が可愛ければ逆らうな」 「お前が蒲生さんと一緒に飛び込む、ってんなら話は別だけどよ」 「和久井さんまでそんなこと・・・って、浜岡さん、何で負けた俺が水神祭なんスかあ?」 このチャレンジ杯はベテラン陣が揃い踏みなこともあり、そんな意見は少数派に過ぎない。・・・蒲生さんにとって極めて、お気の毒なことに。 そうこうするうちに、何にも知らずに戻って来た蒲生さんは、と言えば。 それは不自然なくらいなにこやかな笑みの諸先輩方々に、あっという間に囲まれてしまったのである。 「ってことで、蒲生、待ちくたびれたわ! SG初優勝の水神祭じゃーー!」 「どわあああああっ!? タ、タンマ、タンマーーーッ!!」 「逃げるな、大人しく捕まれ〜!」 「よくやりやがったなー、こんちくしょー!」 「可愛げがなさすぎるんじゃ、あの勝ち方はーー」 「か、勘弁して下さいよー! この後インタビューあるっちゅうて言われてるんにー! 年寄りに冷や水はキツいわ〜」 「何が年寄りだ〜。まだ三十代のくせによ〜」 大笑いする先輩たちと、引きつり笑いを浮かべるしかない波多野君たち。 さすがに彼らに助けを呼んでも埒が明かない、と踏んだのだろう。蒲生さんはとりあえず傍観者を決め込んでいた私に、声をかけてきたのである。 「おおい榎木、可愛い先輩の危機じゃあ、さっさと助けんかいーー」 一瞬波多野君が、すがるような目で私を見たような気がしたのだが。 それには構わずに遅ばせながら、先輩たちの手伝いに加わることにした私である。 「可愛い先輩だからこそ、めいっぱい祝福してあげたいじゃないですか」 「こらあ! 榎木、この薄情もん〜!!」 「大人しく祝福されてくださいよ、蒲生さん。・・・波多野君たちも、この人が何と文句を言っても耳、貸さなくて良いから」 「「「げっ・・・・・☆」」」 なるべく愛想良く告げたつもりが、その言葉で波多野君の顔がさらに引きつるのが見て取れた。・・・有無も言わせぬ、って気持ちがまともに口に出てしまったらしいな。ふむ。 そうして、情け容赦なく宙へと放り出された蒲生さんに、私は万感の気持ちを込めて叫んだのである。 「おめでとう、蒲生『先輩』!!」 「・・・・・・!!」 ゲラゲラ受けている先輩たちには、そして遠巻きにしてみているしかない波多野君たちには、聞こえなかったであろう私の、その言葉。 でも。 蒲生さんには確実に聞こえていたようで。 どっぽーーーーん☆ 大きく目を見開いたまま、彼は水面に沈んだ・・・。 ********************************* ───そうだ。 結局、G1初出場で初勝利を上げたあのすぐ後、私はレース中の事故で大怪我をして、A1級から落ちてしまい。 加えて蒲生さんがあの、悪夢のフライングでSGから姿を消して。 蒲生さんと私は、F明けの一般戦等で時々顔を合わせることもありはしたものの、まだ気安く挨拶できるような雰囲気にもなれず。 不運とタイミングの悪さが重なり続け、結果、私の蒲生さんへの「水神祭」返しは延々、9年も持ち越しになってしまっていたのだ。 蒲生さんもまさか私が9年間も、そのことにこだわっていようとは思ってもみなかっただろう。現に私も、実際に水神祭に立ち会うまで、実感できずにいたのだが。 けれど。 この「水神祭」返しは私にとって、蒲生さんのSG復帰を再確認させてくれる儀式、そのもの。 気が置けない良き先輩であり、また、手ごわいライバルでもある彼が、再び私と同じ舞台へと這い登ってきた証みたいな気がして、つい参加せずにはいられなかったのだ。 ・・・多少は蒲生さんに恨みは抱かれようが、そこは勝手に許してもらうことにしよう。 ********************************* 「かーーーっっ! 冷たさが目にしみりよるーー! ホンマ、後輩思いの律儀な先輩たちばっかじゃのお、SGはぁ!!」 全身ずぶ濡れで戻って来た蒲生さんは、口では悪態をつきながらも苦笑いしている。手荒な祝福の気持ちは、ちゃんと受け取っているのだろう。 私や観客だけではないのだから。「天才・蒲生」がGSに戻ってくるのを待っていたのは。 「先輩思いの後輩のことは、誉めてくれないんですか? 蒲生さん」 「なーにを抜けぬけと抜かしよるか☆ 見捨てたくせに」 それでも蒲生さんは、笑いながら答えてくれる。彼らしい、ざっくばらんな態度で。 そうして、大急ぎでインタビューへと向かおうと私の横をすれ違おうとした時。 彼は何とも言えない、困ったような笑みで、尋ねて来たのだ。 「で、榎木よ。待たせた恨み、晴らせたんか? 9年分の」 むろん、私は答えてあげる。 「ええ。それはもうすっきりと、9年分も」 《終》 ************** ※ラストのセリフですが、「水神祭を」9年待たせた、って意味ですからね? 深読みしちゃ、ダメですよお?(←言わなきゃ誰も気づかんだろ(^^;;;) どこぞのサイトさんだったか、「チャレンジ杯後、水神祭の蒲生さん」と言うイラストを目にしたことがありまして。そーいや蒲生さんはSG初優勝なんだから、それもありだろ! って話をここまで膨らませた次第です。 しかし、榎木さんも謎の多い人物ですよねえ。確か当時、デビューからSG優勝までの最短記録を持っていたと言う話ですが、9年前に怪我して半年以上休んでいたはずで。だから、怪我をしたのはデビューしたての頃だったのかなあ、と思いつつ、今回の話に盛り込んでみたつもりです。・・・今度ちゃんと年表書いてみよう・・・。 ************** 後日追加事項: 「紅龍館」の伊達炎さんに、この作品をお嫁入りさせましたv
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